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大日本帝国航空隊戦記1〜重慶奇襲作戦 林譲治

 実に味も素っ気もないタイトルである。ここまで無味無臭の素材をつくれるセンスにはむしろ脱帽する。しかし、内容そのものは味わい深くて、日本が第一次世界大戦に本格参入することで歴史が変わるかなり王道をいく作品だ。ときおりこちらの方が正史で、自分が生きている歴史の方が偽史なのではと思ってしまうくらいだ。
 列強を味方にしてドイツやソ連と中国大陸で戦う筋はまったく無理がない。仮想敵国をソ連や中国とするのもつまらないほど賢明だ。アメリカの戦艦保有数10隻は強大な国力から考えると流石に少なすぎて、訓練の面で後々マイナスに働いてきかねない。おそろしく多くの人間が関わる戦艦勤務の経験値はおいそれと稼げるものではあるまい。

 この世界の日本にとって第一次世界大戦の衝撃は大きく、次世代をになう兵器にかんして陸海軍の協力の元で整備が行われている。多少問題に感じられるのは当然、全ての人間が欧州の土を踏んだわけではない事で、抵抗勢力はけして小さくはない。第一次世界大戦の現場となった欧州でさえ、機甲兵力の重視は継子あつかいされていたのだからやむをえないが。
 もっと短絡的に気になるのは日本の航空会社がすべて第日本航空機一社に統一されてしまっている事かな。たしかに効率をいえば、それがベストなのかもしれないけれど、ひとつの失敗がフォロー不可能の状態になる恐れがある。たとえば海軍だけでなく陸軍までもが烈風を心待ちにして隼で戦い続けたとしたら、さらに破滅的な状態になっただろう。
 納入にかんする競争が行われないから、海外の機体とはりあう意識以外は上昇志向が生まれにくいのも問題だ。第二次世界大戦までは良いとしても、戦後もずっとこの体制でやっていくのはデメリットが大きいと思う。
 強い危機感を頼りにしている体制だけに危機感がなくなってしまうと恐ろしく脆く、官僚制の波に飲み込まれてしまうだろう。

 日本がドイツとの関係で政治を誤らない理由の最大のものが第一次世界大戦からくる反独感情に置かれているのが現実的かつ悲しい判断だ。もちろん、海軍力の不安から英米に強く出られないのも大きいのだろうけど、結果だけをみれば感情が道を誤らせるとは言い切れない皮肉な例だと思う。

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重慶奇襲作戦―大日本帝国航空隊戦記〈1〉
林 譲治
カテゴリ:架空戦記小説 | 00:04 | comments(0) | trackbacks(0)

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