<< ブログ・SNS利用者の実像〜人々は何を求めているのか〜 | main | 激突上海市街戦 谷甲州 >>

覇者の戦塵 北満州油田占領 谷甲州

 満州事変に絡んで大慶油田の探鉱が行われる覇者の戦塵シリーズの端緒となるストーリー。技術者からみた架空戦史というテーマは分かるが酷く地味だ。
 戦車も戦闘機もでてこないうえに、最大の火器は迫撃砲なのだから無理もない。最初の挿絵は岩の上で座禅しているオッサンであることに至っては悪趣味な冗談みたいな気がする。まぁ、あのオッサンの喋っていることは9割がた悪趣味な冗談だが。
 タイトルの「覇者の戦塵」もやはり良く分からなかった。技術者からみた――と断っているのに何故に覇者?満州の大地は乾燥しているから戦塵のイメージには合うものの秋津中尉を含めても覇者の言葉にふさわしい人物はいない気がする。
 もしかして、各務大尉が「覇者」の予定だったのか?毎刊技術者からみた愚劣な日本軍の象徴として批判の矢面に立たされ、最後には後ろから撃たれるオチで病院送りになるギャグキャラだったとしたら、その生命力に免じて彼が覇者を名乗っても許されるかもしれない。
 思えば彼との腐れ縁もこの時から始まっていたのだ。他の主人公級キャラクターに比べても格段に戦死するチャンスが多かったのに……歴史とは因果なものだな。まぁ、彼が死んでも(秋津中尉と違って)代わりはいくらでもいるのだから、名前が「バカ」の記号として安定している各務中尉の使い道は大きいのだろう。
 こちらも心の準備ができるというものだ。「あーぁ、また各務か……」

 油田構造の話もなかなか興味深かった。背斜構造にトラップされるよく聞くタイプなんだな。油質によっては精製にかなりの化学技術力が必要とされるはずで、石原中佐に強引に話を進められて、技術者たちは相当の苦労をしたに違いない。日本の相良油田では原油で飛行機が飛ばせたという逸話もあるが、これは例外だろう。

 戦闘は地味ながらに塹壕を利用した銃撃戦と夜間浸透奇襲が組み合わせれていて趣きがあった。敵も味方もどこか未熟なのは、やっぱり第一次世界大戦でちょくせつ血を流していないということか。差の多くは事変のおかげですぐ縮まるはめになったけれど。

北満州油田―覇者の戦塵
北満州油田―覇者の戦塵
谷 甲州
カテゴリ:架空戦記小説 | 12:21 | comments(0) | trackbacks(0)

スポンサーサイト

カテゴリ:- | 12:21 | - | -
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://sanasen.jugem.jp/trackback/405
トラックバック