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激突上海市街戦 谷甲州

 混乱の続く満州に続いて、列強各国の租界がある上海でも動乱の兆しが高まっていく。そこにはやはり上村尽瞑の姿があって、北満州油田発見に続いて歴史に影響を及ぼそうとしている。
 兵器に派手なものを持ち出せないためと正規戦がはなかなか始まらないために登場人物による謀略劇の印象が濃く、太平洋戦争がはじまってからの話とはかなり趣きが異なる事が分かる。
 日下部光昭記者や小早川大尉のようなおなじみのキャラクターもいるかと思えば、南部武明社員や桑原毅学生のようにあとあとでフェードアウトしてしまう人物もいる。だれあろう上村尽瞑その人が最も世界からフェードアウトしてしまうわけだが。

 上海での謀略劇はもっとも勢力の小さな中国共産党が決定的な行動を起こすことで、武力衝突回避の流れを変えてしまう。たしかに彼らにとってみれば日中戦争が勃発している方が都合がよいだろうし、彼らの後援者ソ連は北満州油田のこともあるからもっとそれを歓迎することだろう。
 そもそも日本の謀略も狂っていたが、ああいうことで歴史を動かされると日下部記者でなくても無力感を覚えざるをえない。それでも歴史は復讐するというか、十九路軍の精強さを日本軍(陸軍だけではなく海軍陸戦隊が含まれることも大きい)が学んだ事によって更に大きな戦いには歯止めが掛かったのだから複雑だ。
 もしも上海でぶつからないままだったら中国軍は舐められたままで、もっと大きな騒乱が巻き起こっていたかもしれない。そう考えると上村尽瞑の工作は本当に停戦一辺倒に向いてたのかと疑ってしまう。除学民に入れ知恵したのは誰だったのか……。

 個人的にいちばん気になったのはトラクター関連の話だったりする。挿絵で案外小さいなと思った直後に陸軍の見学者が同じような態度を見せていたから苦笑してしまった。機械力の魅力を表現しにくいが、馬匹の体格やパワーを倍加していくのは入念な品種改良をもってしても限界があるのに、トラクターならスケールアップが比較的容易と説明できればよかったのになぁ。現代アメリカにあるモンスタートラクターは九十七式中戦車が負けそうな気がするくらいの化物だ。
 辻正信のスタンドプレーは中尉レベルでは可愛げのあるものといえなくもない。よくもまぁあのやり方で戦死しなかったものだと呆れてしまう。上村尽瞑の改変工作に反抗する歴史の復元力として無視できない力があることは認めざるをえない!

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北満州油田―覇者の戦塵
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カテゴリ:架空戦記小説 | 00:44 | comments(0) | trackbacks(0)

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