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謀略熱河戦線 谷甲州

 日本帝国政府の足を引っ張る関東軍の足を引っ張るために活動しなければならない主人公達。それはまさしく謀略の末期症状だった。
 もう、本当に関東軍の若手将校諸氏にはクラウゼヴィッツを100万回読んでほしくなる。ドイツ軍人の著書なのに当のドイツ人とそれをお手本にしている日本陸軍人にここまで蔑ろにされているのは一体全体何故なのか。憤懣やるかたない。
 まるで軍事も外交の一形態だから、全ては軍事で解決できるという悪夢的な主張を聞くかのようだ。それが成り立つなら逆に軍事を完全放棄しても全てが解決できると主張してしまうよ。現実にはそれが無理なように、軍事で全てを解決するのも無理なわけだ。

 そんな連中に関東軍が牛耳られた状況だが多少の光明を発見できたのは、この世界では長城の突破が行われずに戦闘が終結したからだ。
 渡河点発見の切っ掛けが趙にあることを考えると、この馬賊が歴史に及ぼした影響は無視できない。少なくとも追跡や偵察に関するセンスは驚嘆すべきものを持っている。まったく、大した奴である。
 同時に大きかったのはトラクタをもちいた支援部隊の働きで、機動戦力をかろうじて維持できたのも進路を啓開できたのも彼らの働きによるところが大きい。いくらなんでもまったくの無視はされないはずだから、軍からの奉天製作所へのトラクタ受注なども増えただろうし、ノモンハンでの戦車回収車の整備に繋がったはずだ。
 性能も大事だが、それを維持する能力も戦力なのだと如実に示してくれる一例だったと思う。

 最後についている解説には史実だけに非常に暗澹とした気分になった。フィクションの作中でも状況は明るいとは言えなかったのに、さらに暗いのだから救いようがない。それでも抗い続けた人物にいくらでもエールを送りたくなる絶望的状況である。

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謀略熱河戦線―覇者の戦塵
謀略熱河戦線―覇者の戦塵
谷 甲州
カテゴリ:架空戦記小説 | 12:49 | comments(0) | trackbacks(0)

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