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夢の樹が接げたなら 森岡浩之

夢の樹が接げたなら
 言語学習が極めて容易になった世界。それだけでも夢のようだが更に上のステージを提示してくれる。わざわざ厄介事の種を作っているような気もするが、科学が進歩するならば無価値ではないだろう。こういう話を聞くとロシア人が数学を得意とするようにやはり言語と科学や技術の相性はあるような気がしてくる。
 言語の氾濫によって社会が変容している様子も密かに楽しかった。社内言語まではいかないが、社内ブログはある程度同じ方向を目指している。

普通の子供
 夢の樹もそうだったけれど、サイバーパンク風の話作りが意外なほど巧い。星界シリーズとは違う印象をもてそうだ。モチーフとしてはSFにありがちな子供と母親の歪んだ再会話だったが、BTの概念の使い回しには光るものを感じた。ソ連の快速戦車みたいな名前だ。BT。

スパイス
 ある意味、夢のような話ではあるな。悪夢のようなというべきか。ここまで極端な性癖でなければ、同類からのもう少しの羨望を受けられただろうに。いや、むしろ極端な性癖だからこそあそこまでの事ができたのかもしれない。
 インタビューを受けた狙いは薄々わかっていたのだが、オチのえげつなさには木端微塵にされた。もはや社会全体が一人の男の奇妙な欲望を許したがために精神的外傷を負うはめになったのだ。
 それにしても、この作品は発表する場をひとつ間違えれば狂人の謗りを浴びかねない。それは植野慎司を肯定するだけでも同類かもしれない。しかし、あえて言ってしまえば彼は男子の本懐を遂げたと思ってしまった。
 嫌悪も恐怖もしているけれど、魅力的な光源氏願望の実行者として嫉妬も感じてしまったと告白しておく。

無限のコイン
 ちょっと難解な部分は残っていたけれども、おおよそ理解した。それでもうずうず残るのはサイバーパンクらしい。理想の社会って何だろうな……。
 こういう事態を考えると農業やるのが一番に思えてくるけれども、ここまでシステム化された社会だと農業すら特定品種の傾斜生産で自給自足から離れてしまってそうだ。

個人的な理想郷
 現実には双方向性が促進される形になっているからまずは一安心。現実にあんな発言をする奴がいたら確実に炎上している。コメント欄がなくても間接的な方法で集中攻撃が掛かるだろう。実に黒い締めだったけれど、相対的に現実にも希望があるような気がしてきた。
 四国はやっぱり不利だな……。

代官
 数の少ない宇宙人の視点に立てば未発達な行政組織をどうやって制圧するかは大問題だ。この時代の日本が選択されたのは程よい人口と機構の分散があったからかな。誰にも落ち度はあったけれどもやはり農民たちの愚かしさはむず痒い。
 でも嫌疑をかけられた頼豪は2頭いたのだから、魔女裁判的手法だったとはいえ、1頭を生き延びさせる事はできたはずなのだがなぁ。どうも人々の限界を突き付けられる話だった。

ズーク
 倫理的な問題を無視するとタケルは研究対象としてかなり興味深いかもしれない。固有名詞だけで成り立つ小さな世界に安穏とすることは気持ち良さそうだが、あまりにも膨大なものをズークとしてしまう限界を露呈している。
 代名詞がどれだけ偉大な発明だったかを教えてくれる。

夜明けのテロリスト
 宇宙が光速で広がっていったとしても既存の宇宙に追いつかないのでは?それとも宇宙の中で、またいくつもの根源プスィコンの夢が花開いている様子こそが宇宙と呼ぶべき代物の形なのかもしれない。
 どちらにしても極端に魅力的な世界ではないな。貧相な世界でもないが。
 ファーストの詳しい来歴があれば、彼に移入できた可能性はある。ファウンデーションのR・ダニール・オリヴォーのように。

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