<< 死闘!ソロモン大海戦 林譲治 | main | 太平洋戦争シミュレーション 帝國海軍鬼道艦隊2 林譲治 >>

帝國海軍鬼道艦隊 林譲治

 戦前からの大型艦艇建造を手順を踏んで行い――林氏の改変は後出しも割と多い――正攻法の視点から描かれた太平洋戦争シミュレーション。なのにタイトルは鬼道である。指揮官の名前が鬼頭だから、というおバカな理由もあるが。
 空母雲龍の弾着観測艦として生まれ、けっきょく正規空母に立ち戻っていく様子は海軍の艦艇運用も論理だけでは進められず、非常に政治的な側面をもっていることを物語っているようだ。はじめから正規空母を3隻(最終的に4隻)増やせと捻じ込んでいたら上手く行かなかっただろう。
 弾着観測という戦艦派を説得しやすい面から空母を調達に行ったのは林氏らしいファインプレーで、艦隊の成り立ちこそまさに鬼道といってはばかりないものだ。だいたい当時の基準でみれば日本海軍の大型空母6隻(他にも補助的な戦力がかなり!)は途方もない戦力だったのだ。あれ以上のものを認めさせるには普通の手じゃ無理だ。
 ただ、みんな艦艇の建造費の事ばかり語っていて、恐ろしく財政を圧迫する空母航空隊の維持運用の視点を忘れているのが気になった。やはり航空畑の人以外は気付かなくて「できちゃったものはしかたない」から予算が付いたのだろう。軍隊のファジーさが時には素敵にみえる。たいていはマイナスに作用して経費を増大させているのだけど。

 アメリカ側から攻撃を仕掛けてきた理由はもっと深い計略があったと思っていただけに少し拍子抜けだった。まぁ、ニュートン少将というパッとしない人材に目立つ役を与えたポイントくらいはあったかと。
 開戦準備中に真珠湾奇襲攻撃が成功して、重油タンクまでもが徹底壊滅する情景は笑っちゃうくらいの壮絶さがあった。これは喜劇として描いているとしか思えない。空母の損害は皆無だが、さすがに補助艦艇と何よりも艦艇乗組員の消耗が凄まじすぎる。
 アメリカがとりえる作戦の幅は真珠湾の機能損失も加わって、徹底的に制限されている。艦隊決戦がやりたくても、ちょっと無理なのではないか。空母戦にしても「分散」と「応急」を覚えた帝國海軍の前には分が悪い。
 かなり面白い事ができる時間と戦力の余裕が与えられたことは間違いない。

林譲治作品感想記事一覧

帝国海軍鬼道艦隊
帝国海軍鬼道艦隊
林 譲治
カテゴリ:架空戦記小説 | 09:39 | comments(0) | trackbacks(0)

スポンサーサイト

カテゴリ:- | 09:39 | - | -
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://sanasen.jugem.jp/trackback/438
トラックバック