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記憶汚染 林譲治

 林譲治氏の架空戦記においてイタリア軍が何故あんなに強いのか?その理由の一端をみた。彼にとってはイタリア軍はつねに11人以下の組織として処理できる素地があったのだ。まぁ、多分に実験的なものはあったと思うけれど、興国の楯において日本海軍が惨敗する理由も通商さんが成果をあげる理由も同じ文脈で説明できる。とはいえ大規模な組織でなければアメリカ軍とがっぷり四つに組む事はできず、解決しなければいけない矛盾が「戦死」の形で噴出するわけだが。
 良くいうように軍隊は社会の縮図であり、その逆もまた真なのだ。人命を賭けているだけに軍隊は保守的になるし、同じ理由で革新的にもなる。そのパラダイムシフトをどちらの(どの?)陣営が次に起こすのかは定かではないけれど、方向があることは感じる。
 それにしてもガンダム小説で頑なに出さなかった「アレ」をこんなところで投入してくるとはねぇ……人間の頭脳か改造白癬菌のどちらかにはリャン的情報処理を可能とする素養があるんだよなぁ。不思議。

 リャンの仮説も組織もおもしろかったけれど、彼らの繁殖能力に興味を駆られないでもなかった。やり方しだいでは人口圧で「解決」する事もできたはず……それこそ動物的な考え方だ。
 多くの技術開発を彼らがなし遂げたとするのに説得力を感じたのは、科学がどんどん一人の知識では学習するだけでも厄介極まりないものに変化していくからだ。その上に新しいものを積み立てられるのは天才でなければ、ああいう存在ではないか。
 あと、少数者であり弾圧される側の存在が、それを理由に必死で権力に食い込みにいく流れは現実的な反応として非常によく理解できた。それすらも反感を買ってしまう可能性が高いけれど、承知の上で邁進しなければならないのだ。無言で抹殺されないためには。


 自分はなぜ自分なのかという記憶の連続性上の問題と、人類はなぜ人類なのかという歴史の連続性上の問題が、同一線上に乗って思索され同時的に扱われる点も興味深かった。


 ところでジョジョの荒木飛呂彦先生がリャンの一員にしか思えない……。三部のストーリーは彼らのルーツを逆に辿っているし、老化しないし、脳が再生する事による記憶の混乱もある→「大人はうそつきではないのです。まちがいをするだけなのです…」
 漫画を通じてリャンのような存在が世にいることを密かに浸透させようとしたのかも!

記憶汚染 (ハヤカワ文庫JA)
記憶汚染 (ハヤカワ文庫JA)

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