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妖光の艦隊1巻〜災厄の開戦 林譲治

 太陽活動は農業生産に大きな影響を及ぼし、戦争の原因ときには文明滅亡の原因にさえなっていただろう。しかし、これほど直接的な農業生産の大打撃と無線の途絶が起こってしまうとは……けっこうギリギリの地域でも農業が行われている事を考えると穀物生産の影響は現実にありえるし、無線が積極的に使われるようになったのも1世紀と少しでしかないのだから、これから太陽が同様の電波障害を起こす可能性を完全に否定できないのが怖い。現代なら通信障害だけでも物資輸送に大打撃を生じて飢餓が蔓延するのではないか。大量輸送の今日では必要なものを必要なときに必要なだけ運ぶシステムが全球的に動かないとやっていけない状況になっている。そして貿易自由化の名の元に生存性を高めるシステムの整備が疎かになってはいないか?
 そういう事を考えさせられた。

 低緯度地域にはもっぱら赤いオーロラが出ているのも流石にリアリティがある。もともとSFを志している人だから宇宙的な要素は完璧に抑えている。赤道近くでは無線が使える地域もありそうだと思った――無線の使える海域のマップを整備して敵を誘い込み、その地域で戦うのも手かもしれない。
 まぁ、地表波無線に気付いた日本海軍が、この技術力が問われる分野でイニシアチブを握られるなら面白い。

 ただ、アメリカとの紛争拡大は明らかに無線による指示がなく、情報が混乱し切っていたせいなわけで、終戦への道筋をつけられるものなのか想像もつかない。大航海時代の戦争ならああいう偶発的戦闘も鷹揚な感覚で処理できたかもしれないが、ちょっと前まで光速で情報をやりとりしていた感覚を指導者達が引きずっているのだから始末が悪い。
 欧州大戦は電線があるおかげで多少マシだが、ヒトラーの糸によって完全に制御されてしまっている。彼の考えはドイツ国益一点にあり、平和活動など考えもしていないだろう。戦争を続けさせて貿易で儲けるのも、最適のタイミングで一方に肩入れして全てを掻っ攫うのも彼の思いのままだ。
 個人的にソ連のポーランド東側進駐への風当たりが弱く、バルバロッサ後はいけしゃあしゃあと連合国側で参戦していたのが気に入らなかったので、ソ連が世界を敵に回したこの展開は愉快だ。ムッソリーニが元気だな――それ以上にポーランドが元気だ。ポルモスカ騎兵旅団の大活躍にさすがの林ジョージズムを感じるぜ……。

妖光の艦隊2〜さらなる混沌 感想

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妖光の艦隊―災厄の開戦
林 譲治
カテゴリ:架空戦記小説 | 12:11 | comments(0) | trackbacks(0)

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