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星界の断章機/慌浩之

・創世
 人間の定義の部分で「スパイス」の思考実験が影響を及ぼしている事に気付いた。愛情に優る毒はないというのか……第二期の移民計画はさらに残酷になって成功したらしいな。
 主機関子のスポールっぷりが印象的。こんなのを相談役にしていればドゥサーニュのような子孫もそれは生まれるわ。人間扱いされないことすらあるアーヴにもルーツがあることが感じられて嬉しかった。
 子弟教育において主航法子のスペアが作られる順番が遅かったのはどうしてだろう?確かに他の原アーヴでも代替できる機能だけれど、次世代においても主航法子は年長者であった方が都合が良さそうなものだ……モンゴル帝国のように末子継承もあるから一概には言えないか。

・饗宴
 アーヴによるコミケ……何が彼らを駆り立てるのやら、遺伝子レベルの問題である事は確かだ。そしてラフィールと言えどもコミケに喜んで参加する事に衝撃を覚えると同時に、彼女を題材にした本もどこかにあるだろうと想像して意地の悪い事を考える。
 はたして自分の本をみて激昂のアブリアルが平静を保っていられるかな。

・蒐集
 やっつめのユアノンがアーヴの手に渡る顛末。放浪時代の末期だな。
 どちらかというとアーヴの言う事の方が論理的で説得力を感じる。配慮に欠けるのは確かだが、絶対三度の真空を相手に生きて細かい事まで気にしていては面倒だろう。
 どうもエジプト系らしいター・ネフェルティのその後が気になるが、平面宇宙航法が広がる方が人口増加に苦しむよりも早いだろうから、精神的にはともかく物理的には何とかなるはずだ。まぁ、手元にユアノンがないから見つけてもらうのが遅れる問題はありそうだが、そこはアーヴ達の地図に載っている世界だから適当に閉じた門をもってきて開いてくれるのではないか。
 人口の増えやすい領民をもつことは初期のアーヴにとって明らかに利益でもあるし。

・哺啜
 裏山RPGとでも言いたくなる風情に満ちている。包丁と鍋って極初期の装備だけれど――この世界の調理道具は第一に武器で第二に調理器具の可能性もある。
 よく分からない「白菜」よりも野生の虎を倒した事の方が凄く思えるのは私だけ?

・君臨
 そういえば金星と火星にも人間が住める世界のとんでもファンタジー、パンドラ三国志なんてものが昔あったな。ひとつの星系に三つの有人惑星をもつレトパーニュ大公国をみていると思い出す。
 スポールは何歳でもスポールであり、それが当然であるという感覚が染み付いて嬉しいやら恐ろしいやら、私がちょくせつ対するわけではないから喜んでおこう。
 家宰がなかなかにいいキャラクターをしていた。

・秘蹟
 オタク文化もこうやって受け継ぐべき美風とみなされる時代がいつかくるのだろうか。なんとも途方もない想像に思われる。アーヴにとって視力と空識覚のバランスは重要だと思うのだが、委員長の一族は気にしないのかな。だから主計科なのかも。
 ジントが少し浮気をしているようにも見えた。

・夜想
 ギャラリーフェイクに原始人の壁画を元ネタにする画家の話があった。それに近いな。アーヴが惑星の上を旅する光景がなぜだか美しい。大気を通した陽光の下でも青い髪は映えると思うのに、地上世界を忌み嫌うアーヴが多いのは残念な事だ。嫌うというより生理的抵抗を感じているというべきかな。
 家出少年を拾うのは交易SFものの義務であるらしい。

・戦慄
 ワローシュ星人……ワロスね。見るにも聞くにもおぞましい連中だが、星一個丸々が2ちゃんねる化している世界に興味がないでもない。いろいろ破綻してそうなものだけれど、相対的に働く2割が現れて何だかんだで回転しているのかなぁ。
 まぁ、過程の話だ。「萌えー萌えー」言われまくって辟易するラフィールはみたくない。

・誕生
 かつて人類が生まれた太陽系はちょっと気の早い散華をしていたと……それでも人類社会は回っている事に感動するけれど、やはり寂しい。銀河英雄伝説の地球教のような連中が現れなかった事は幸いなるかな。
 どれだけの種が絶滅してしまい、取り戻せなくなったのか想像もつかない。その意味でもハイド伯国の資源は貴重だ。
 ラフィールの名前の語源はネビュラ賞ものだな。

・暴君
 確かにクファデス参謀長は弟キャラだ。両親がいないかわりにアーヴにきょうだいは珍しくなく、独特の人間関係を形づくっているように感じられる。スポールと彼の姉がどんな本で知り合ったのか、考えたくもない……。
 自分たちの本を集めている倒錯趣味の皇族は、自分の同人誌を集めている赤○先生のようなものか――それよりよっぽど変な気もするが。

・接触
 探査機イトカワのおかげで小惑星好きも理解できるような気がしてきた。予想外に個性的で、それが何千万となくあるのだから夢中になる氏族がいても良いだろう。彗星は?と思ったが、そっちはそっちで家風で好んでいる連中がいそうだ……。
 締めのひとことが全て。船長の予想を遥かに超えて、人類で人生を捻じ曲げられなかった人間は少数派くらいのデカい出来事だった、と。まぁ、地上世界への影響は戦線にされなかったところでは意外と乏しそうな気もするけど。

・原罪
 これが起きた原因は宿命遺伝子にもありそうだ。仲間を大事に思うからこそ、それ以外の存在に必要な限り残酷になれる。
 十二人の評議会は自分たちのために50万人を巻き添えにしたも同じ。下手にエイリアンでなかったのが不運だったが、突如「狂った」作業生体を相手にしているのだから慎重かつ果断になるべきだったな。
 こういうのをみると指導者を選ぶ事の大事さが身に沁みる。人口からみて母都市は直接選挙制だったのだろう。王制をしくアーヴと明暗を分けたのは何か象徴的だ。それとも宇宙時代の判断のタイムスケールこそ問題なのか。

星界の断章 <1> (早川文庫JA)
星界の断章 <1> (早川文庫JA)

森岡浩之作品感想記事一覧
カテゴリ:SF | 12:15 | comments(1) | trackbacks(0)

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コメント
 読んだのは半年ぐらい前なので、よく覚えていませんが、もともといじられやすいクファデスがいじられたり、もともといびる役のスポールがいじられたりしてなかなか楽しめる作品でした。スポールがいじられる一方かと思ったら本領を発揮したりしてという展開もさらに楽しめました。

 私は大阪のコミックトレジャーという大即売会で、星界シリーズの同人誌を購入したことがありますので、そういう意味でも同人ネタは楽しめました。

 私は、アニメ紋章→アニメ戦旗帰侠小説紋章→戦旗機銑窟断章帰アニメ戦旗靴悗箸垢垢澆泙靴拭アニメから入った人って多いでしょうねえ。現在海外ですが一時帰国したら断章兇鯑匹澆燭い隼廚い泙后
| 恐竜戦隊 | 2010/08/22 11:05 PM |
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