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惑星CB-8越冬隊 谷甲州

 あまりにも過酷な氷に閉ざされた惑星CB-8。その天王星のように横転した自転軸をもつ狂気の惑星は、常軌を逸した変形を示すことで汎銀河連合人の越冬隊を窮地に追い込んでいく。ひそかにCB-8植民の可能性を調査していた母星を失い流浪の民と化した地球人たちと協力し、測地班員のパルバティは災害により無人となった極点基地をめざす。

 とてつもなく厳しいCB-8の氷と風と薄く冷たい大気の世界が、現実離れした美しさを感じさせる描写でえがかれている。さらに特殊な軌道で世界の天候を支配する恒星と、超波長の赤い光を投げかける人工太陽HBのもたらす光学効果が、パルバティの見るものを幻想的にしている。
 しかし、幻想的にみえるからこそ現実として相対せねばならないとき自然はおそろしい牙を剥く。その胃も縮まるような慈悲のなさに震えながら、立ち向かう男たちの背中に尊敬の眼差しをむけずにはいられないのだった。

 登場人物たちもCB-8の自然に釣り合いをとるかのように魅力的だ。地球人の謎を一身にたたえているかのように強靭なラインハート隊長やギュンター、非常に特殊な哲学を持つ白き嶺の男カトウ、タフで人徳に満ちたツラギ班長、一人称のおかげで分かりにくくなっているが主人公のパルバティもかなりの変人である。
 まぁ、ひとつの惑星に50人からで乗り込んで越冬する調査に参加するのだから平凡な常識人がつとまるわけもないか――なのに汎銀河人のトップに限って悪い意味で平凡な常識人ぞろいであったことが悲劇を招いた多分に人災の面のある事件だった。

 惑星CB-8越冬隊はSFであると同時に冒険小説であり、その二つがアシモフのSFミステリと同じく絶妙のバランスをもって共存している。たとえば極点基地へ到達するために使用されたマシンの性能など実に地に足のついたものであり、だからこそ冒険の度合いを高める方向に見事作用しているのだ。

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惑星CB-8越冬隊 (1983年)
谷 甲州
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