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マニラ・サンクション 谷甲州

 勢いで刑事をやめた中年絡みの男がアジア各国に飛び出していって泥臭い人間のしがらみに巻き込まれる。なんとも目の据わった一人称と肌に伝わる現地描写が魅力的なハードボイルド。
 サブタイトルの語呂がとても良く、それを挙げたいがためにバラして感想を書いてみる。

・マニラ・サンクション
 ずいぶん派手に戦場にしたせいもあって日本人が必ずしも好かれているとは言えない様子。その辺りの知識はルソン島 戦場の記録で何となく印象がついていた。同時に売春絡みの問題もあるが、ヤクザに対する現地人の認識がなんだか滑稽だった。
 いちばん恐ろしいのは頭の悪い女だと思う。

・ホンコン・コンフィデンシャル
 育ちの良い人間に限って歪みはじめると留まるところがない。元から薄汚れている人間は芯では素直さを保っていたりする。そういうことか。
 問題そのものよりも口八丁で状況をまとめあげた武田の手腕に感心した。

・エンジェルシティ・バンコック
 タクシーの運ちゃんが問題の人物かと思ったが流石にそれはなかった。元刑事がそんな簡単な見逃しをするわけもないか。日本人はそっちのけでバンコックの界隈に愛着が湧いてしまった話。
 家族がひたすらマイナス要因なんて悲しいね――それでも活力を失わないおっちゃんに惚れた。

・ジャカルタ・ジャッジメント
 ウスマン氏の日本人への親切心は望郷の念と重なった部分もあるのだろう。はじめからお嬢さんが同行してくれれば簡単に片付いたのだが……それじゃあ話にならない。
 武田が軍人相手にビビったり、妻子もちゆえの所帯じみた感覚で行動するところがいちいち良かった。それでもやることが刑事の仕事に関連してくると度胸も据わるのだから不思議な男だ。
 犯罪者の大量殺害は日本では決して真似できないが、発展途上国でやる分には有効性もあることを認めざるをえない。フィリピンで似たようなことをしている市長もいるらしい。

・ソウルフル・ソウル
 北との緊張関係からちょっと毛色の違ってくる話。緊張感に満ちた国際関係の問題も気宇壮大でよろしい。振り回されっぱなしで完全に道化を演じることになった武田がちょっと憐れだったが、なんのことはない。こいつも最後にはのろけてやがる。
 つまり、いちばんの道化は読者の私か……けっ。

マニラ・サンクション
谷 甲州
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