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ストリンガーの沈黙 林譲治

 ウロボロスの波動に引き継ぐ林譲治のハードSF長編。架空戦記小説で名を馳せた林氏だが、彼のやりたいことはハードSFにあったらしい。たが、架空戦記小説の内容から彼の興味の傾向を想像することはできる。それは組織論や広範な意味でのコミュニケーションだ。
 焦熱の波濤の日本軍のように中堅士官が組織を牛耳っているモデルはAADDの社会に通じるものがあると思う。林氏の理想とするところは海綿の神経ネットワークのように中枢がないのに全体が調和して動く組織なのではないか。AADDにはまだ意志決定者がいるがそれはその役割を果たしている細胞にすぎず、「分化」しているわけではない。
 あるいは林氏は社会全体をひとつの知的生命体として考えているのかもしれない。それは最終的にはストリンガーと同じように非実存的知性体になりえる。人類とストリンガーは別の方向から同じ目標を志向しているのかもしれない。それともストリンガーは単なる先行者なのだろうか。

 谷甲州「航空宇宙軍史」と比較してしまいがちなAADDと地球との戦いは娯楽として楽しむとして、ファーストコンタクトがノロノロと進んでいく様子もおもしろい。
 登場人物たちは人類同士で理解し合えないのにエイリアンと交流できるのかと疑問に思っているが、ある意味「理解しあえるはずだ」という先入観の強すぎる人類同士より、純粋に「分かり合えるだけ分かり合おう」という意志の働く種族間交流の方がうまく行くのではないか、と思ってしまう。

 どこかでブレイクスルーがなされれば相互理解は急速に進むと思うので続編が待ち遠しい作品である。

ストリンガーの沈黙
ストリンガーの沈黙
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