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売れるマンガ、記憶に残るマンガ 米沢嘉博

 コミケットの代表者として知られる評論家の著者が書きためた2001年から2006年までのコラムを収録した本。性質上話題の集中度は低いが、満遍なく漫画界が見渡されているため大局的な変化をなんとなく追うことができる。
 特に多く取り上げられているのはコミケット、規制問題、海外漫画事情、漫画の今後への憂い、の辺りか。

 中でも気になったのは規制に対する強い不信感と、それとも無関係ではない漫画の今後の問題だ。
 規制では著作権とワイセツの問題があるのだが、著者はどちらも漫画の活力を奪うものとして危機感を表明している。これにはまったく同意なのだが、ここまで強くいい切れる態度には感服する。
 ただ、自由を守れても意味のある方向へ暴走できなければ活力はけっきょく衰退して行きそうだと著者の憂鬱な不安をみて思ったのも事実。

 指摘されれば確かに漫画の活力はあまりにも分散しすぎた嗜好によって減衰傾向にあるような気がする。同時にその状況こそが普通であり、今までの主流をもって突っ走ってこれた時代が異常であったような気も、また歴史は繰り返し心配しなくてもどこかから主流が生まれそうな気もする。
 まったくあやふやで予感レベルのものでしかないのだが、単なる懐古趣味ということはできなさそうだ。

 これだけ漫画の全体を見通してきた著者が53歳の若さでなくなった事は実に大きな損失に思われる。好きな漫画を一冊――という質問に対する著者の回答には全面的に同感だった。

売れるマンガ、記憶に残るマンガ
売れるマンガ、記憶に残るマンガ
米沢 嘉博

消えたマンガ雑誌感想
カテゴリ:雑学 | 11:46 | comments(0) | trackbacks(0)

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