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「個性」を煽られる子どもたち〜親密圏の変容を考える 土井隆義

 いわいる最近の若者に起きているコミュニケーションの問題をあつかったブックレット。本当に暗澹とさせられる、暴力的なゲームとか漫画とかのちゃちなレベルではない、世の中の闇を味わった……自分がそこに足を突っ込んでいると感じられるからなおさらだ。
 著者の筆致はどこまでも冷厳で、恐るべき人間関係変化の闇を克明に暴きだしていく。自分の個性を求めることで、広義の社会性を失い、親密な人間関係に埋没していく子どもたちの心理が理解できただけに――真実かは不明な部分もあるが――対処の難しさを感じざるをえない。

 本当の自分、生まれもった自分を求めて成長をひたすら切り捨てていく姿勢は、けっきょく極めて刹那的で常に不安にさいなまれる生き方をもたらしてしまう。本当の自分なんていう決してスタンドアローンでは存在しえないものを追う破目になるのだから、最終的には周囲からの過剰な肯定を要求するしかなくなってしまうというのだ。
 そして、自分を失うまいともがき疲れ苦しむことになる。

 このトンネルに単純な光明はみえないが、全体主義への憧憬を示すネット上の右翼的言動が無意味で過剰なコミュニケーションに疲れきった若者の自暴自棄な反応であるような気がしてきた。ファシズムならば個性を煽られることは決してないのだから――まったく極端から極端へ走るものだ……。

「個性」を煽られる子どもたち―親密圏の変容を考える (岩波ブックレット)
「個性」を煽られる子どもたち―親密圏の変容を考える (岩波ブックレット)
土井 隆義
カテゴリ:雑学 | 18:11 | comments(0) | trackbacks(0)

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