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黎明の軌道邀撃機 谷甲州

 そろそろハスミコーポレーションはテロリストどものブラックリストに載るべきだと思う――時系列的に考えればこれは初期の事件なのだけど、飛んで火に入る夏の虫のようにバタバタとハスミ大佐に薙ぎ倒されていくのをみると憐憫の情すら湧いてくるのだった。モリスよりグリンガムのほうに腹が立つから不思議なものだ。
 それにしても100歳をすぎた財団の名誉会長が「ハスミ大佐だ」と自ら名乗るのはかなりシュールだと感じた。たしかに「大佐」の語には現場の人間がもつ押し出しの強さと強力な権力が同居していて彼には似つかわしいのだけど……。

 この作品最大の魅力はかくしゃくとしたハスミ大佐をのぞけば、地球軌道を離れて月に向かう軌道航宙機イントレピッド靴琉掬歸暴走エネルギー=質量×速度二乗が肌で感じられることだろうか。原子力ロケットに背中を蹴り飛ばされて虚空を驀進する航宙船という代物が強烈な存在感をもって感じられた。
 そこにラシッド機長の超絶技巧的な操縦描写がくわわるのだから堪らない。イントレピッド靴離ルーやイスマイル管制官のように新世代の活躍も冴えるが、それでも輝きを失わないかつて軌道傭兵で膝の赤い子供たちだったキャラクターの働きには感動させられた。
 多彩な人員をよくぞここまで緻密に動かしてのけるものだ!ほとんど描写に無駄がない状態で突入するラストの加速感は異常なほどだった。それこそ核融合ハスミ大佐エンジンが全力噴射って感じである。

 それだけにオチの脱力感もまた格別だったりする。

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黎明の軌道邀撃機
谷 甲州
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