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白き嶺の男 谷甲州

白き嶺の男
 後輩に良いところをみせようと焦らざるをえない先輩は大変である。なまじ後輩が才能に溢れているとなおさら空回りの危険が高まる。ローインパクトの考え方はファッションみたいなもので、本当にどのていどの打撃を与えるのか厳密に考えたうえでやられることではないのだろう。焚き火のような跡が美観を損ねる行為はそれだけで問題になってしまう。まぁ、やっぱり繊細な高山の環境にはいろいろ拙いと思うのだけど、それを言いだすと人が入ってくること自体が問題だからなぁ…。
 なにはともあれ人命が最優先である。

沢の音
 もうひとりの主人公となる久住が登場する。隠された幻の滝を発見したかと思えばそうでもなかったという経験は気まずいものだ。まぁ、世の中は広くて狭いものらしい。それまでふたりが出会っていなかったのは久住が支沢にばかりアタックしていたからかなぁ。
 加藤が釣りと答えたのは環境保全的な行動が気恥ずかしかったからか。

ラッセル
 亡くなった人間の方法論を再現することで鎮魂する不思議な話。天候の話が重要な位置を占めていて世界と山のつながりを認識できる。チャンスをうかがってひたすら待ち続けるのも、ラッセルするのも登山のうちなのだ。そうまでして最後に爽快な勝利をえるからカタルシスがいっそう強烈になるのかもしれない。

アタック
 いきなり舞台はヒマラヤへ。7000メートル級の話になっていて度肝を抜かれる。加藤の仲間が口にした「俺は家族や仕事を切り捨ててここに居るんだ」というセリフが空恐ろしく熱い。それほどまでに山の磁力は凄まじいのか……そんな環境で仲間を慮れるようになった加藤の成長が眩しかった。

頂稜
 まったく無茶をする……極限状態における無茶と無理の微妙な判断が登山の醍醐味なのかもしれないが。スヴェイクの厳しい立場は可哀相になってくるけれど、やっぱり無茶の責任は本人が追うことになるのだよなぁ。
 加藤と久住がすっかり名コンビになっているのもよかった。

七ツ針――山岳ホラー――
 恐ろしい環境に離れられないことを強要されて、毒がどんどん強くなっていくのが怖い。死よりも人間のほうが怖い。でも、最後のほうをみているとトンでもないツンデレさんだった気もするのだ…。さすがにそれはないか。

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