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軌道傭兵1〜衛星基地撃破 谷甲州

 1990年に書かれたこの作品が想定している年代は2005年から2010年であり、未来ではなく平行してありえたかもしれない現在を描くことになっているSF。そのせいか現実の出来事として認識できそうな展開が多く、冷静に透き通った文体もあいまって臨場感に溢れている。ハードウェアも国際宇宙ステーションやスペースシャトルなど恒星間宇宙船にくらべれば遥かに身近に感じられるものが多く、逆に現実のこれらハードウェアに親しみが持てる気もした。いちばん外しているのはSDI計画があまり進展していないのとソ連が崩壊してしまっている事だろうか。
 作中でアメリカの権威が失墜していると語られていたが、それでもSDI衛星を完成させ、国際宇宙ステーションも二代目に入っているこの世界のアメリカのほうがマシにみえてしまうのだった。まぁ、独自の有人宇宙ステーションを建設するどころではない現実の日本よりはマシか……。
 さすがにテロリズムはやりすぎだけど、はやぶさの成果に対するアメリカの反応をみていると何でも一番でなければ気が済まず、時には過激な行動にでるというのは納得できてしまう。中国やインドの動きも活発になっているし宇宙開発の歪みが是正される日は近いかもしれない。そのときにアメリカが機嫌を損ねないでくれるといいのだが。

 スペースシャトル「イントレピッド」の機長としてハスミ大佐が登場している。その話での大佐は技量こそ飛び抜けているものの、レベッカや秋山の行動に振り回されることもあるオジサンとして描かれており、まだ妖怪化には至っていない。
 すでに老兵と言われている彼がここから経験していく変化を思うと眩暈がしてきそうだ。いつまでも童心を残しているハスミ大佐はそれゆえに進化をやめることがないらしい。

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軌道傭兵(オービット・コマンド)〈1〉衛星基地撃破
谷 甲州
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