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焦熱の波濤9〜救国作戦!ホワイトハウス爆撃指令!! 林譲治

 ユーラシア大陸に君臨するもう一人の独裁者スターリンも倒れ、和平への下準備がついに全て整う。そして、日本軍の6発「戦略」爆撃機がアメリカ大陸本土攻撃に飛び立った。

 描かれているスターリンの死はまったく偶発的なものとしか思えなかったのだが、ドイツ参謀本部が計画していた暗殺はどこへ行ったのだろうか?あんがい罪を着せられた衛兵が本物のスパイだったりするのかもしれない。あるいは食事に興奮剤のたぐいを紛れ込ませて偶発的な事件を誘発した可能性もある。
 なんにしても実際に起こった展開はソ連が無闇に混乱せずまともな交渉相手を得られた点でドイツにとっても都合が良かったと言えるだろう。

 最後の最後でまた顔を出した山本五十六軍令部総長はずいぶん無能ものとして描かれる羽目になってしまった。栗田中将が例外的に有能で中間層へのつながりすら匂わせていたのに比して、ドイツ戦闘機に救われた山本大将が強く無能を糾弾される展開にはさすがに困った。
 彼が無能でなければ作品全体の辻褄があわないこともあるし、山本五十六でさえ無能を糾弾されることで読者の認識に風穴を開けようとの意図もあるのかもしれない。実際に大佐が少将になった途端に無能になるわけもあるまいし、将官=無能の図式は一般化がすぎると思えるのだが、あえて解釈すれば知性の有無よりも「世界観の違い」が能力の差異をもたらしていた気がした。
 認識する世界が間違ったかたちで固まってしまえばまともに能力を発揮できるわけもない。戦争の刺激によって佐官以下の将校にはそこから逃れられる人物もいたが、将官クラスになると大多数が手遅れだった――栗田提督は奇跡的な例外――と受け取っておこう。

 この世界の日本がアメリカと正式に和平を成立させたのは1970年ということで、停戦から26年間の緊張状態があったことを匂わせている。史実の日本からは掛け離れた存在になっていただろうし、アメリカ資本の流入による高度経済成長は期待できそうもない。ただ、本土を爆撃されずに済んだことや中国の内戦で遠慮せずに稼げること、イギリスからの技術導入には拍車が掛かっていたことなど、独立国としてやっていくには充分な発展を遂げていることも想像にかたくない。
 史実ほど極端な復興・発展は遂げていないが、歪になってもいない日本。そんなビジョンを感じさせるのであった。

焦熱の波濤〈9〉救国作戦!ホワイトハウス爆撃指令!!
カテゴリ:架空戦記小説 | 23:01 | comments(0) | trackbacks(0)

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