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VALERIA FILE(ヴァレリア・ファイル)上 谷甲州

 到来する情報化社会の実像を見事に予測して描かれたハッカーSF。折り返しでの著者コメントも「本書で描かれた世界に、ようやく現実が追いつきはじめたのかもしれない」と実に鼻息が荒い。確かにハードSFとしてはひとつの理想的な展開だろう。
 まぁ、ようやく追いついたどころか現実の情報技術はSFの予想すら上回る速度で進展している気もする。他のハードウェアとコンピューターのバランスを考えると完璧に予想することがどれだけ難しいかも分かる。
 現実に即していないにしても谷甲州先生の構築するヴァレリアやハンティング・ファルコンの技術バランスは素晴らしく好みだった。とくにH・Fは襲撃艦ヴァルキリーと設計思想上似通った部分をもっており(むしろ発展しているくらいか?)二重の意味で興味深かった。
 しょせんゲームで調子に乗っている「子供」を、「大人」が現実で叩きのめすという構図でもある。

 そしてキャラクターもいい。
 なんといってもレティシア・ロドリゲス。彼女ほど女性的な思考回路を爆発させている男性が創ったキャラクターは稀なのではないか。MKと一緒になって首をすくめ、嵐が通り過ぎるのを待ちたい気分にさせられてしまう。それでいて滑稽な自己認識が彼女の可愛げを増しているのだから非常に強力な人物といえる。
 暗殺者のジョーズも当然のようにクレイジーであり(でも成算をもって行動するんだよなぁ)、信念が狂気に領域にあるヴァレリアを含めて強烈な個性をもったキャラクターが多かった。
 冒頭で若さゆえの無鉄砲さを疲労したMKが常識的な押さえ役にまわることが多いのだから筋金入りである。まったく付き合っていて疲れる連中だが、それだけに愉しい。
 彼らの混沌の中から生まれた奇妙な連帯感もヴァレリア・ファイルの魅力だ。

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ヴァレリア・ファイル〈上〉 (C・NOVELSファンタジア)
ヴァレリア・ファイル〈上〉 (C・NOVELSファンタジア)
谷 甲州
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