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宮沢賢治はなぜ石が好きになったのか 堀秀道

 童話作家宮沢賢治が石っ子けんちゃんと呼ばれ北上川で叩き割った石はないといわれるほどの石狂いであったことは、一部の方面ではつとに知られている。楽しい鉱物図鑑を著し、鉱物趣味啓蒙家として知られる著者はわざわざ彼の出身地を訪れまでして、童話作家と石の関連性について調べ、センス・オブ・ワンダーの起源に思いをはせている。
 そんな内容で一冊になっているのかと思いこんでいたが、読み進めてみると宮沢賢治だけではなく、さまざまな石にかかわる歴史上の人物の話がでてくる。堀先生がさまざまな場所に寄稿した文章をまとめたものであり、時代的にもかなり昔のものが含まれていた。
 それはそれで面白いのだが、いきなり語尾が「です・ます」口調のものが混じっているのには少々苦戦した。あと、タイムスリップ話は飛びすぎ……。

 一般的でありながら新しい視点に富んでいる後半の内容も素晴らしかったけれど、もっとも興味深かったのは「東京国際ミネラルフェア」をはじめたころの逸話だった。今では完全に定着し、他にもいくつかのショーが開かれているミネラルフェアがどのような意図からはじまり、そしてズレていったのかを知ることができる――今でも必死に軌道修正されているけれど、お金が関わることだからどうしてもストレートにはいかないね。
 まぁ、ミネラルフェアの混沌具合はまだ良い方で、鉱物採集における産地荒らしの話の数々に触れてしまうと反吐がでそうになって気分が悪い。あんな連中と同根と思われるくらいなら趣味をやめたいと考えてしまう。欲望に歯止めのかからない病人が、そのまま消化できずに暴れまわっているのは社会そのものの病理かもしれない。

 日本の鉱物趣味の次元の低さを憂えて、欧米のレベルの高さを称揚する話が多くうんざりすることはあったものの――ブルガリアのは本当にいい話だと思うが――やはり文章の格調の高さ、読みやすさ、視点の巧みさにおいて堀先生の著作はすばらしい。
 心の中にどうしても強く訴えたいことがあって、一生懸命かんがえていれば、理系文系とわず文章力は自然と身についていくのだろうなぁ。

第15回東京国際ミネラルフェアパンフレット感想
第16回東京国際ミネラルフェアパンフレット感想
第19回東京国際ミネラルフェアパンフレット感想

宮沢賢治はなぜ石が好きになったのか
宮沢賢治はなぜ石が好きになったのか
堀 秀道
カテゴリ:地学 | 16:51 | comments(0) | trackbacks(0)

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