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蝕・太平洋戦争1〜突如流れた未来電波が歴史を変えた! 林譲治

 むしろ電波を飛ばしているのはタイトルだろうと……どうもコスミックノベルスはその手のSFと戦記を融合させた雰囲気の作品が多いらしい。しかし、林譲治氏が電波の跳梁跋扈を許すわけもなく、一発限りの未来電波を放った後は特異天体は沈黙し、おそろしく堅実な戦略状況が構築されつつある。
 おもしろいのは3ヶ月後の電波によって真珠湾奇襲などが不可能になったことではなく、それぞれの国家が国家体制の違いによって異なる反応を示している事だったりする。特にナチス・ドイツの反応はファシズム国家らしくて見事なものだ――ついつい日本をそっちのけで応援してやりたくなる不思議な気持ちを抱かされる国家ではあるのだが、本質において負けてくれないと非常に困る連中であることは間違いない。
 ティーガーよりヘッジホッグのほうが新兵器であるというのも、なるほど分かりやすい話でまさに少年の心をとらえて離さない存在であったドイツ軍から離れていく心理に自分の変化を感じる。もしかしたら架空戦記小説読者全体の傾向として成熟が進んでいるのか?――と時空とか次元とかがタイトルに乱舞するノベルスの作品で感じるのも皮肉である。

 しかし、焦熱の波濤で中間層主導の戦争を描いた作者が、今回は完全に中間層を内部の敵として苦労する上層部を描くというのは戦記小説も現実の政局の変化に大きく影響を受けて描かれることの表れなのだろうか。
 林氏の場合は作品ごとに活躍する人材が大きく違ったりするのでいつものやりかたの一環と考えられないこともない。どちらにしろ作品世界に仮託することで矛盾するような意見をひとつの人間が豊富に発せられることは悪いことではないと思う。
 シェイクスピアに名言が多いのも、そのせいだろうし。

林譲治作品感想記事一覧

蝕・太平洋戦争〈1〉突如流れた未来電波が歴史を変えた! (コスモノベルス)
蝕・太平洋戦争〈1〉突如流れた未来電波が歴史を変えた! (コスモノベルス)
林 譲治
カテゴリ:架空戦記小説 | 19:46 | comments(0) | trackbacks(0)

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