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蝕・太平洋戦争2〜戦艦「ネルソン」VS戦艦「金剛」 林譲治

 作者はネルソンに恨みでもあるんだろうか?戦艦日向と撃ち合って後の缶切り轟沈も悲惨だったが、さらにランク下の金剛にワンサイドゲームを運ばれてしまうとは嘆かわしい。砲塔配置の弱点に航空攻撃による速力低下がくわわってにっちもさっちもいかなくなった感じである。まぁ、最大の差を与えた要素は弾着観測だろうけど…。
 戦略的にみればイギリスが派遣できる戦艦は一隻だけで、対する日本は複数種類の戦艦をもっているから相性のいい奴を投入すれば良かったわけだ。だからこそイギリスはバランスのよい戦艦を送るべきだったのだけど、政治的効果を優先した結果が敗北だった。
 決着として傾いた甲板を垂直弾で貫いて沈めるのは王道に思える。どこで根付いた印象なのだっけ?


 タイトルでは戦艦を正面に押し立てているが、メインとなるのはむしろ軽空母を用いた通商破壊戦だった。新しい要素といえば疲労を重視して描いたことが挙げられるだろう。肉体の状況は精神まで蝕んでいき、精神状況の悪化は肉体に致命的な打撃を与える。
 当り前のことではあるが、それを無視しなければ機能できない非人間的な部分が軍隊にはある。そして、軍隊的価値観がいまの日本では企業にまで蔓延しつつあるのではないか、そんな問題提起が感じられた。

 もう少しデビット少佐が活躍すると思ったのだけど、あのルチ大佐の焼き直しみたいな――そこまで酷くはないが――上官をえてしまっては、あれが限界だったのかもしれない。ナチスの混沌は酷いとはいえ、それに対抗するイギリスの社会的矛盾がゼロになるわけではないのだ…。
 それでも少しでも理想的に近い社会のほうが優位に立つとは思われる。まぁ、本当に理想的な社会であれば戦争に訴える必要さえないに違いない。


 川島教授がまだ出番をえていて、いろいろ考えこんでいる。終戦工作に関する発想が生まれそうなのは興味深い。ただ、戦争の全責任を電波に与えたがっているのは違うだろうと思った。

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蝕・太平洋戦争〈2〉戦艦「ネルソン」VS戦艦「金剛」 (コスモノベルス)
林 譲治
カテゴリ:架空戦記小説 | 19:03 | comments(0) | trackbacks(0)

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