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旭光の艦隊、ニューカレドニア戦記 林譲治

 とてつもなく、地味。仏印をめぐる列強各国の駆け引きから宣戦布告には至らないものの繰り返される小規模で陰険な武力衝突が描かれている。仮装巡洋艦同士の砲撃戦と小さな護衛船団を国籍不明の潜水艦が襲撃するのが戦闘の全てなのだからまったく大人しいものだ。
 しかし、一般民衆にとっては小さな出来事であっても当事者にとっては間違いなく命をかけた戦闘であり、また政治的な意味合いは決して小さくないという視点が良かった。

 タイトルではなぜかニューカレドニアが前面に押し出されているが、話の中では名前ができるだけで主な舞台は仏印に限られていた。本国がナチス・ドイツに敗北したことによって不安定になったこの植民地の立場は興味深く、やむ負えず安全保障をもとめて日本に接近することになっていく。
 林譲治氏が他の架空戦記で描いていたイタリアやソ連との取引もそうなのだが、ここでも日本の工業技術力を相対化して上回るものをもったフランスの技術力を買っているのがおもしろい。戦艦大和の大きさなどには紛らわされず、非常に客観的なところから考えが出発しているようなのだ。
 あるいは例え技術的に日本が上回ってさえいても、この姿勢でいるかぎりは謙虚に優れた機軸を受け容れていくだってできるだろう。こういう敵味方問わない柔軟性が枢軸国にはもっとも欠けていた気がする。そこはやはり負けるべくして負けたのかもしれない。

 まぁ、この世界の日本はわりとマシな状況にあるようで外交交渉も冷静に積み重ねているし、仏印からの援護もあって政局を俯瞰できているほうだ。あるいは日本が「まとも」なら普通にたどったであろうコースを歩んでいるのかもしれない。
 さて、開戦なくして完結することがありえるのだろうか。期待が膨らむ。

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旭光の艦隊、ニューカレドニア戦記 (ジョイ・ノベルス)
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林 譲治
カテゴリ:架空戦記小説 | 19:07 | comments(0) | trackbacks(0)

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