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光る石ガイドブック〜蛍光鉱物の不思議な世界〜 山川倫央

 こんな鉱物本を待っていた!

 いわいる鉱物図鑑系の本がどんどん二番煎じ三番煎じをくりかえし、ほとんど出涸らしの新奇なところは鉱物写真だけ状態に陥っていた状況――それでも手を出す私も私だ――には福音とさえいえる。

 本書はタイトル通りに紫外線などを照射された場合に蛍光や燐光を発する鉱物について話題を絞っている。
 それだけ内容を豊かにすることが難しくなるはずなのにも関わらず、著者の知識は無限かと錯覚されるほど豊穣で、語り口も軽快かつ頭に染みとおる知性に満ちている。読んでいて非常に気持ちが良い。

 掲載されている鉱物の写真も撮影が難しい蛍光状態を見事にとらえており、幻想的ではあるが意識を研ぎ澄ますのはかえって難しい暗室での観察とは異なった楽しさを提供してくれた。紫外線の波長によって蛍光の色が違ったり、同じ標本の中で多彩な蛍光をみせているのも興味深い。
 なによりも蛍光が著名な鉱物は標本が厳選されたグレードであり(可視光画像でみても溜息が漏れる)、蛍光をよく知られていない標本の写真はそれだけでもワンダーを与えてくれた。
 その両方をおさえているのが3章の「光る宝石」だろう。ルビーが光ることは承知していたが、エメラルドやトパーズまで光らせるとは反則級である……。

 まぁ、蛍石、方解石、灰重石――辺りの鉱物はともかく産出が稀だったり蛍光が特殊事例である鉱物については入手難度が相当高いと思われる。その現実に切歯扼腕しつつも、だからこそ「買い」の一冊だ。


 末尾には科学から歴史まで幅広い教養につつまれた光る石論が展開されており、電灯のない時代に人々が光る石に感じていた驚きが我が身によみがえってくる良い経験ができた。アクチベータとセンシタイザの用語がやけに生物学風なこともあり、硬く結晶しながらも生彩につつまれた雰囲気を帯びる「光る石」の良さが伝わってくる。
 普通は単調になりがちな鉱物リストまでアメリカの産地風景を紹介することで読み応えのあるものにしている、おかげで満足感に浸ったまま読了した。

著者のサイト
鉱物 たちの 庭  ★鉱物と鉱石と宝石と結晶と…★

光る石ガイドブック―蛍光鉱物の不思議な世界 (ROCK&GEMコレクション)
光る石ガイドブック―蛍光鉱物の不思議な世界 (ROCK&GEMコレクション)
山川 倫央
カテゴリ:地学 | 21:55 | comments(0) | trackbacks(0)

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