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覇者の戦塵1944〜翔竜雷撃隊 谷甲州

 かつての陣内大尉の活躍を彷彿とさせる国枝軍曹の足をふんだんに使った活躍はじょじょに戦いの規模を大きくしていき、ついには空母機動部隊と日本軍が誇らず、こそっと所有する強力な新兵器との激突を惹起する。
 人間性の限界をほとんど超えるところまで行った追跡行には手に汗握ったし、そこから展開されるホラー風味の検死には妙に背筋が寒くなった。さらには大規模な棺桶であるガトー級潜水艦の浮揚作業によって背筋が凍るとどめが待っていた……戦争の切なさよりもひたすら死体がもつおどろおどろしさに打ちのめされてしまった。
 あのような状況で冷静に頭を働かせる大津予備中尉も怖いが、本人としてはそうやって状況把握につとめることで恐怖を克服していたのかもしれない。それならば、なかなか真似できないやりかただが、本当の勇気を感じさせる。

 潜水艦と駆潜艇の緊張感漂う虚々実々の駆け引きがやけにおもしろかった。この世界ではいつものことともいえるけど、相手の意図と装備がきちんと見抜けていれば性能的に不利な状況でも勝利を収めることはできるわけだ。この流れをどこまで大規模に広げていけるかが、戦争全体の帰趨をわけるかもしれない。
 ともかく握るべきは情報――それを如実にしめす結果を披露してくれる話だった。


 遠距離攻撃用誘導弾「翔竜」は相当の有用性を秘めているようだ。こういう技術的奇襲兵器でアメリカ軍の急所を握って叩き続けることで戦争に勝とうと虫のいいことを考えるのは敗北主義か……今回みたいに逐次投入して立てられるいろいろな対応策を掻い潜りつつも正式兵器として通用する代物に育て上げていくほうが良いに違いない。
 ともかく、諜報活動と組み合わせて小規模な空母機動部隊によるヒット・エンド・ラン攻撃に掣肘を加えられるようになったのは非常に大きい。分析によって着実にガトー級潜水艦を封じ込め、瞬間的に制空権を奪われる危険も減るのなら、南方からの物資輸送はまだまだ順調に進められるのではないか。
 あとは核兵器を何とかしてアメリカをして長大な補給線を超えての攻撃に辟易させられれば妥協点を求められるかもしれない。しかし、この作品の場合は戦後のシミュレーションも読み続けたい気持ちにさせられてしまうから困る。

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翔竜雷撃隊―覇者の戦塵1944 (C・Novels 41-37)
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谷 甲州
カテゴリ:架空戦記小説 | 12:44 | comments(0) | trackbacks(0)

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