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ガリア戦記 ユリウス・カエサル

 髪薄カエサルくんによるガリア侵略記。この作品のたちが悪いのは読んでいるうちにカエサルの戦争がまるで正義であるかのように錯覚されてくるところだ。ヘルウェティイ族の移動からなし崩し的にはじまった借金返済・選挙対策のための犯罪行為に過ぎない戦争とすらいえるのに。カエサルほど古代においてプロパガンダを使いこなした才能はなかったかもしれない。
 反カエサル意見としては感情的な元老院や内部分裂著しいガリア人よりもアリオウィストゥスをはじめとするゲルマニア人の言い分の方が一貫して理があるように感じられるのも面白い。少なくともこいつらロックだぜ。

 ラビエヌスをはじめとする総督たちが自分を見くびらせるような策を使いこなすことに注目。蛮族には決してできない真似だし、日本の戦国時代でもこのような例は少ないのではないか。おそらくローマの将軍が官職のひとつでしかなく職業的な戦士としての誇りに固執しなくてもよかったことが根底にある。妙なプライドをふりかざして味方の被害を拡大する可能性を考えると、このローマのシステムにはかなりの長所があると思う。

 対するガリア人の見所は負ければ負けるほど権威を強めていくウェルキンゲトリクスだろうか。彼の作戦通りに動いて負けたわけではないというのもあるだろうが、死に瀕した病人が病状が悪化するほどに医師への依存を強めていくようなものを覚える。
 実際、彼の荒療治は成功直前にまでいったのだから、人間一般の心の動きもあなどれない。何よりもウェルキンゲトリクスの運命から運命の天秤がいかにたやすく思いがけず傾き、流転するかを思い知る。


 それにしても名詞の多いこと。私の脳の記憶容量ではパンクしてしまう……。ガリア戦記の透徹した文体に触れると文章が矯正される心地するのも何度も読み返す理由だろうか。ヒルティウスまで読むと豪勢なフルコースの最後に安物のチョコレートを食べさせられるが。

内乱記 感想

ガリア戦記
ガリア戦記
G.J. カエサル, Gaius Julius Caesar, 国原 吉之助
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