<< うみのいえ 大塚幸彦 | main | 最強戦艦魔龍の弾道1 林譲治 >>

かわらの小石図鑑 千葉とき子・斎藤靖二

 荒川・多摩川・相模川の三つの河川から集めた小石を地学的な視点から徹底的に分析し、紹介することで三つの河川の流域、ひいては日本列島の地質を紹介しようとする朴訥にみえて野心的な図鑑。
 転石をサンプルにしてはいけないと刷り込まれた精神からは大胆な行動にみえるが、自らが露頭に取りつくのではなく、川に石を運んでもらうことで子供で気軽に地球のことを学べる良さがあることに気付かされた。

 石を紹介するときの博物学的な記述が半端ではなく意識を闇に引き込まれそうになる――ぶっちゃけ側面に興味をもたずに正面から読むのは辛い。しかし、小さな石を使いながら層序や地質イベントを可能な限り紹介していく視点はおもしろかった。同じ種類の石でも状態の違いによってしつこく取り上げられており、博物学に必要な根気の強さがうかがえる。

 だが、何といっても目玉になっているのが小石たちの薄片写真だ。まさか転石相手にここまでするとは…と呆れながらも直交ポーラーの鮮やかさを楽しませてもらった。やはり薄片の情報量は素晴らしくて、石の履歴を端的に物語っていることには深く感心した。
 かなりの労力を要する方法だが薄片の作り方まで紹介されていて、いっけん子供向けに見えながら恐ろしく奥の深い本なのだった。挙げられている岩石名でもデイサイト、ホルンフェルス――菫青石は数少ない鉱物趣味的な見ものだ――はまだしもラピリストーンは聞き覚えがしょうじき怪しい。
 最後の日本地質の紹介ではメランジュ(とは言いはしないが)から付加体まで挙げており、著者の本気がうかがえる。

 いささか難しいきらいのある本だけど、夢中になれる少年少女が僅かでもいれば日本の地球科学界にとって大きな実りになるのではないか。



かわらの小石の図鑑―日本列島の生い立ちを考える
かわらの小石の図鑑―日本列島の生い立ちを考える
千葉 とき子,斎藤 靖二
カテゴリ:地学 | 22:08 | comments(0) | trackbacks(0)

スポンサーサイト

カテゴリ:- | 22:08 | - | -
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://sanasen.jugem.jp/trackback/860
トラックバック