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溟海の鋼鉄葬 伊吹秀明

 世界第5位の海軍力、ビキニ環礁で原爆実験の犠牲になるはずだった旧式艦揃いの大艦隊が忽然と姿を消し、次々と元連合軍を襲いはじめるホラーとパニックが混ざったような架空戦記――こういう独特の雰囲気をもった代物は伊吹秀明先生の十八番だなぁ。
 それにしても不気味、異様で激闘の末に沈めたはずの屑鉄艦隊が再び闘争を始めたときにはゾッとした。メインとなる騒動だけではなく戦後日本の実情を描いている点も興味深く、終戦になってもそう簡単に個人個人の太平洋戦争は終わらないことを意識させてくれた。
 普通の架空戦記小説ではこういう話はなかなか見れるものではない……負けることの無惨さが際立っていて良いと思うのだけど。まぁ、そのまま米ソが戦争をおっぱじめたりすると、まったく見れないわけでもないか。

 日本海軍との戦いを経て生まれ変わったアメリカ海軍の姿も良くて、ミッドウェー級空母を筆頭とする新鋭艦中の新鋭艦が本格的に経験したことのない海戦を交える姿は手に汗握った。日本だけではなく、アメリカにも「間に合わなかった新兵器」は多かったことに気付かされる。
 あと、スプレイグ提督が素晴らしく熱い。配役の妙を覚えた。

 ストーリーはアメリカ太平洋艦隊の動きと復員兵鷹埜の視点をサッチウェーブさせることによって進んでいく。それは上記のとおり悪くなかったのだけど、最終的なオチの付け方が弱く感じないでもなかった。
 鷹埜側にしっかり感情移入していれば満足できるのは分かる。しかし、かつてないほど米軍に感情移入できてしまったことが、亡霊艦隊の霧を微妙に残した。
 ええい、地獄まで追撃して決着を付けるのだ!!→返り討ち確実のコース。

溟海の鋼鉄葬 (歴史群像新書)
溟海の鋼鉄葬 (歴史群像新書)
伊吹 秀明
カテゴリ:架空戦記小説 | 23:49 | comments(0) | trackbacks(0)

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