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戦略戦術兵器事典3〜ヨーロッパ近代編

 大砲がセンセーショナルな威力を発揮したイタリア戦争からナポレオン戦争までのヨーロッパ諸国でおこった軍事的な変化を様々な観点から紹介・解説していく事典。軍事が強烈に社会の変化と関連し、また軍事が社会を変化させてきたことも感じることができる。

 なんといっても重要なのが火器の変化で、特に小火器の充実から起こった陣形と操典の問題に各国の指導者がどうやって対処していったかが大きな軸になっている。
 アルクビューズというやや聞きなれない銃からフリントロックライフルまで詳細なイラスト付きで説明しており、技術の進化が伝わってくる。わりとシンプルな銃剣の発達も見逃せないと思う。
 火砲の進化は攻城・築城術にも多大な影響を与えており、ヴォーバンに代表される幾何的な近代要塞の成立も興味深い。三十年戦争で問題になった兵站能力の不足が解消されることで機動戦の時代にうつっていき、要塞も陳腐化を余儀なくされるわけだが……。

 大局的な歴史でいえば「オスマン帝国の外縁部」としてのヨーロッパが、しかし征服されきることなく巧みに刺激を利用して前進していく様子が興味深い。けっきょく、それは地中海によってヨーロッパが「縦深をもった半島」として東からの攻撃に抵抗できた地政学的な力が大きいのだろう。
 制海権さえ握られてしまえばローマがかつてしたようにオスマン・トルコが環地中海帝国になる目もあったわけで、ヴェネチアやスペインをはじめとする海上勢力の力も大きかったと思う。
 もうひとつ忘れてはならないのがハプスブルクとフランスの対立を軸にした政治環境で、なんだかんだいってフランスが豊かで多数の人口を擁する強国であることが理解できた。逆に人口僅少で大きなことをなしとげているスウェーデンの凄さも分かる。


 最大のお愉しみはやはり会戦解説だったが、カラーのイラストレーションで行われるものはともかく、オレンジ色のモノクロページで行われるものは解説文に不足を覚えた。必ずしも文明的に一様ではなく複雑怪奇な政治情勢が背後にあるのに1ページにまとめるのは難しかったのではないか。
 でも、ネーズビーの戦いにおけるルパート王子の行動がデメトリオスを気持ち悪いほど踏襲していることには愉しい気分になれたよ。騎兵をまかせる人材の選択というやつは恐ろしく難しいようだ。

戦略戦術兵器事典1〜古代中国編

戦略戦術兵器事典 (3) (歴史群像グラフィック戦史シリーズ)
戦略戦術兵器事典 (3) (歴史群像グラフィック戦史シリーズ)

 ちなみにこの本を読むと皇国の守護者が2倍楽しめる。
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