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覇者の戦塵 オホーツク海戦 谷甲州 中央公論新社

 C☆NOVELS版としてオホーツク海戦第二次オホーツク海戦をまとめて収録したものを通して読んだので改めて感想を書いてみる。少し違った視点からの発見ができることを期待して。

 とりあえず唯一の書き下ろし部分となった防空巡洋艦「荒島」誕生秘話をとっかかりにしてみたい。
 第四艦隊事件やウルップ沖海戦の失態、軍縮条約に絡んだ会話で浮かんできた、このフネのアウトラインの中に船体構造を後の翔鶴級と共通化させて生産性を向上させるという発想があった。建造途中で巡洋戦艦から空母に改造された赤城やレキシントンの例はあるにせよ、かなり大胆な着想といえる。これがまかり通るとすれば、防空巡洋艦「荒島」も砲戦能力は防御面でもかなり限定的なものになってしまうだろう。
 まぁ、とことんやれば空母に改装することもできるので、構造物を破壊されたら思い切って更地にしてしまうコースかなぁ。作中でへっぴり腰の遠距離砲戦に終始していた帝国海軍の大砲屋にお似合いの兵器ではある……。

 こういうマスプロダクションプッシュをみて思うのだが、特異な技術を習得するためにはいろいろな艦種を少数のクラスにわけて建造したほうが効果的な面もあるはず。たとえば荒島の成功は確実に戦艦独自の船体構造の進化を袋小路に追い込んでいく。
 それは史実によって問題ないことが明らかでも、作中で「今」を生きている人々にはその限りではない。けっきょく遠慮なくマスプロをやってしまえるのも、国力に優った側なのだった。マスプロの問題は作中でも指摘されていたように「どこからが戦時なのか?」という問題でもある。史実の日本はそこからして明確ではなかった。

 覇者の戦陣世界の日本にアドバンテージがあるとすれば北満州油田に端を発した紛争の数々で貴重な戦訓をいくつも得ながら技術を更新できている点だろう。その背後には石油利権のために自国民の血は極力流さず、日ソやアジア大陸の民に犠牲を強いているアメリカの影がある。
 「オホーツク海戦」はアメリカの狡猾さが日本の強化に跳ね返って、甚大な被害をかの国にあたえる因果応報をいやおうなく期待してしまう内容になっているのだった。

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オホーツク海戦―覇者の戦塵 (C・NOVELS)
オホーツク海戦―覇者の戦塵 (C・NOVELS)
カテゴリ:架空戦記小説 | 19:37 | comments(0) | trackbacks(0)

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