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サージャントグルカ 谷甲州

 インパールで、フォークランドで、世界各地でイギリスの尖兵として戦ったグルカ兵の悲哀を描く作品。ネパールへの大地への深い愛着や、当地に住む人と憧れてやってくる日本人との考えかたのギャップが丁寧に描かれており、とても心を動かされた。
 特にイギリス人にも日本人にも振り回されっぱなしのラジェンドラが憐れだ……待遇の点でいえばグルンの方が悪かったはずなのに、平時に喜劇的悲劇に遭ってしまっている問題から感想が逆転してしまっている。
 同じ僻地で特化した民族でも、島国の奇人と、高山の貴人では、ずいぶんと違った性質をえるようになってしまうらしい。そんな感想を抱かれるのも――特に後者が――不本意かもしれない。
 いろいろまとめれば、それぞれの世界はまったく違う、というありきたりな結論になってしまいそうだ。

 逆の視点からは、遠い海外にみずからの願望を投影し、現実に「裏切られる」日本人を皮肉な筆致で描いているのも印象的だった。
 裕美がいかにも純粋培養された現地人礼賛発言をはじめたときには、思わず苦笑の声が漏れてしまった――自分がどれほど彼女と違うかもわかったものじゃないと言うのに。この作品に描かれている人々はまだマシなほうで、実際に触れることなく、礼賛主義も冷笑して分かったつもりになっている人間がいちばんタチが悪い可能性もある。
 そして、自分がそこに含まれる可能性も……なんだか切なくなってくるなぁ。


 著者得意の極限状態描写も健在で、地獄のビルマ戦線で死兵と化した日本軍と血みどろの戦いを繰り広げるシーンには肌に粟がたった。インパール戦の結果が第二次世界大戦全体の趨勢に影響を――なんて説明は眉唾に聞こえたけれど、それだけ不確定要素的なインド国民軍を評価したことになるか。
 血なまぐさく怖い描写も多かったものの、読後感は良かった。

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サージャント・グルカ (C・NOVELS)
サージャント・グルカ (C・NOVELS)
カテゴリ:時代・歴史小説 | 12:19 | comments(0) | trackbacks(0)

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