ナイルワニの最後の祝宴 ナショナルジオグラフィックDVD

 一個目の「の」はタイトルにない方が良かったかな。南アフリカのクルーガー国立公園といえば、もはやこの手のドキュメンタリーで耳慣れた場所だ。ここでは雨季と乾季が存在していて動物たちの生命線である川は干上がり、淵に残った水溜りが乾季の生命線になる――と同時にあの世への入り口になる様子が映し出されていく。

 水辺の活動的とはいえないのったりした空気の中にアドレナリンを噴出させる死の一瞬が待ち受けているのが空恐ろしい。
 でも、死の演出者であるナイルワニが草食動物であるカバの下位にあって場所を譲ったりしているのはコミカル。カバは怒らせると本当に怖いらしいからなぁ。象も危険だし、草食だから猛獣ではないというのは甘い認識なのかもしれない。

 命と同義である水がどんどん減っていき、水溜りが泥濘に過ぎなくなってしまっていくのは見ていて心細い気持ちになった。雨が降ったら喜びを感じ、動物たちも嬉しいんだろうなと押し付けがましい感情の投射までしてしまった。
 あれほどの猛威をふるっていたナイルワニまでもが、乾燥には抗するべくもなく骨となっていくのをみると生命の儚さを感じずにはいられなかった。

ナイルワニの最後の祝宴
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スーパーマンガデッサン 松本剛彦・森田和郎

 カンフー映画を見た直後など自分が強くなったと錯覚することはない?本書にも似たような効果があってイラストを描いた経験が皆無の自分でも何とか描けるのではないかと勘違いしてしまう。
 もちろん、漫画などの空想イラスト志向の人が参考に読めば相当得るものがあるだろう。参考の絵がうますぎるので、専門学校生レベルの絵を代わりに載せてくれていたら自信を喪失せずに勉強にもなってよさそうだが、眺めて楽しいことやイラストレーターにファンがいることが前提でないと出版は難しいか。

 イラストを描かない自分にも絵を描いている人がどれだけ頭を使っているか分かって得るべきものがあった。元医者の手塚治が偉大な漫画家というのも納得の人体の構造に関するレッスンの数々は、自分の身体でも頭を使わないと覚えられないことを私につきつけて愕然とさせた。

 160ページのチャイナなお姉さんに心奪われてしまったのだが如何したものだろう……。

 ちなみにちいさな創造でろっくさんが紹介されていて興味深く感じたのが本書を読むきっかけだ。

スーパーマンガデッサン―作画のための考えるデッサン
林 晃 松本 剛彦 森田 和明 グラフィック社 (2005/10)

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フラクタルな世界 ジョン・ブリッグズ

 フラクタル、同じ形のものがあらゆるスケールで現われてくる構造について出版当時最新の研究にもとづいて画像つきで紹介した本。出版当時というのが問題で、1992年の著作だから今では何らかの成果がえられた研究もたくさんあるはず。非常に気になる。

 マンデルブロ集合についてはアーサー・C・クラークのSFで紹介されていたので何となく覚えている。大の中に小が、小の中に大がある構造は世界の無限性を感じさせて気が遠くなる。手塚治の火の鳥に原子の中に宇宙がある描写があったが、あれなどはフラクタル表現の典型だろう。鋼の錬金術師の全は一、一は全という言葉も思い出す。アイシールド21とかで頻出のOne for all,All for one.はちと意味合いが違うか。

 芸術はフラクタルに影響されているが、フラクタルとは一線を隔した部分があって、『リファレクター』とやらを持っているとの記述には興味深いものがあった。リファレクターは秩序と混沌の境界に浮かび上がり、両立させるもの、矛盾でありながら存在できるもの、らしい。
 これがあるから芸術は創造的でみるものを飽きさせないならば、飽きるような芸術は芸術ではないのかな。

 ともあれ、何度読んでも面白い漫画や小説もリファレクターに違いない。これは有用な視点だ。

フラクタルな世界―科学と芸術にみる新しい美学
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デジカメ時代のスナップショット写真術

 とタイトルにあるがデジカメに関する記述は最後の一章のみで、全体的に「スナップショット」の理論に偏った内容になっている。気楽さの肯定というより、がんがらじめの作品性の放棄が、スナップショットの真髄だと主張しているようだ。
 まぁ、被写体によって撮影姿勢が変わるのが普通だろう。この本ではデジカメなどで手軽に「日常を留める」ことを勧めていて、私の写真の撮り方を自然偏重から人工物も見るように変化させた。

 そろそろ大容量メモリーの購入を検討しようかな――32メガバイトでは辛い。

デジカメ時代のスナップショット写真術
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地震のすべてがわかる本

 地震について図と写真をふんだんに用いて解説した本。オールカラーなので図が見やすく分かりやすくなっている。いろいろなことを浅く広く紹介しているので詳しさには劣るが、2005年10月10日刊行と新しいのが一番の利点で、新潟中越地震やスマトラ沖地震への言及もなされている。また、価格もやけに安い。

 章立てされた説明から地震の研究が考古学から測地学までの広い分野を使ってなされていることが想像できる。

地震のすべてがわかる本―発生のメカニズムから最先端の予測まで
カテゴリ:地学 | 08:55 | comments(0) | trackbacks(0)

天文ガイド4月号・星ナビ4月号

天文ガイド4月号

天文学コンサイス でっかい芯があるやつ
 巨大な天王星型惑星と解釈することはできないのだろうか?系外惑星の発見ペースは低下しているようだが、何かのブレイクスルーがあればまた増加することになるだろう。

リコー GR DIGITAL
 ハイスペックが悔しいが8万円もするなら納得かも。星景写真だけじゃなくて望遠鏡と接続した場合のレビューもほしかった。

森田正光のこれが言いたい!
 プロでもプロ意識のない人が増えたのか、それが見抜かれやすい時代になったのか。紹介されているブログ、チーム森田の“天気を斬る!”……なぜYahoo!ブログを選択したんだろ。

すばるからのメッセージ
 冥王星の観測がこれで満足ではなく、ここを足がかりに外宇宙へ、という世論につながると言いのだが。

惑星の近況・1月
 火星をしつこく追撃できるよい時代になったものだ。内惑星にも言及してくれないかな――変化がないから無理か。

読者の天体写真月例コンテスト
 銀塩は星野写真専門化が進んでいるかも。観測写真の金星の地表模様には白旗。凄すぎる。観測写真の部は見応えがあって美しさ以外の基準を持ち込んでいるので非常に良い。


星ナビ4月号

NewsClip
 陸域観測技術衛星「だいち」打ち上げ成功:2万5千分の1地形図の作成が可能とのことだが、植生の多い日本では頼りすぎると地形図の劣化を招きそうなので利用はほどほどにお願いしたい。
 スターダスト帰還:月以外からのサンプルリターンは計画通りなら「はやぶさ」が先んじるはずだったんだよな。

オリンパスE−330
 液晶画面でピントが合わせられるのが売りだが問題も多い様子。

8cm屈折望遠鏡で天文スタート宣言!
 ミードが好きだけど電池切れしたらそこまでだな。月中毒じゃないと一年で飽きるので、そこで止めるかグレードアップするかが分かれ道。

デジタルアストロノミー セカンドステップ
 私はいつもアンダーサンプリングでした。

星界一受けたい画像処理講座
 基本だな。やっぱりステライメージは便利そうだ。

星ナビギャラリー
 星野写真はふるわないな。フィリピンマニラからの火星写真が見事な造形。いっしゅん色付スケッチかと思った。
カテゴリ:天文 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0)

天文ガイド3月号

シュミット・カセグレンで春の渦巻銀河を撮る
 環境に左右される精巧な機材を使って数うちゃ当たるやり方。まあまあの写真が毎回撮るよりたまに会心の作ができたほうが良いというのは、ひとつの考えだ。

天文学コンサイス
 ガリレオが木星系から太陽系の姿を想像したように太陽系と銀河系はフラクタル関係にあるか、という問題。銀河の形成過程と恒星の回転方向の問題をあげているが、コンピューターシミュレーションに言及していないのに違和感。形成途中の銀河が観測されていないのは銀河の形成が短期間で済むことを示しているのだろうか?

イトカワに挑んだはやぶさの記録
 まとめ記事。毎回思うのだけど全段固体燃料のM-V5はロケットの進化史から外れた存在じゃないだろうか。中国などと比べて我が道を行く部分が多いのが日本の宇宙開発の強みで弱みだ。はやぶさの帰還は運任せだが、次の計画としてイオンエンジンとソーラーセイルの組み合わせで外惑星を狙っているらしい。「ロケットの性能の差が探査能力の決定的差ではないという事を教えてやる」計画だが到着に時間がかかる分だけ探査機器の陳腐化は否めず、その点でもサンプルリターンの成否は大きく響くことだろう。

宇宙探査の魂 No.25
 彗星の塵といえば谷甲州のパンドラを連想せずにはいられない。右下小見出しのニューホライズンが読んでいてワクワクした。

今日からロケッティア! Mission15
 これを読んで実際にロケットを作っている人は何人くらいいるのだろう。

惑星の近況・12月
 12月ともなればシーイングはかなり悲惨なはずだがよくやる――海外の画像と比べると泣ける。土星のスポークが気になるところ。

読者の天体写真コンテスト
 デジタル部門を中心に今月もハイレベル。M45とオリオン大星雲には参った。バーナードループといい、ありがちな主題だけに素晴らしいものは本当に素晴らしい。
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初め

 はいはいスタートスタート、これで私のブログは6つ目。何考えてるのか鏡に向かって小一時間問い詰めたい。
 とりあえず360度の方針転換であぶれた書評を投下処理するのが目的。更新は一週間に2,3回の予定は未定。

 どぞ、よろしく。
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