統計処理に使うExcel活用法 相澤裕介

 マニュアル本を読むのは早ければ早いほど良い。この本はそれを痛感させてくれた。情けないことにオートフィル機能を初めて知ることになったのだ(オートフィルはセルの右下の四角をクリック・ドラッグすることで数字や関数をコピーできる機能)。直感的に扱えるように設計されているからといって我流に走るのもほどほどにということか。

 もちろん、本書はオートフィル機能を説明するための本ではなく、エクセルを使った統計処理を簡明に解説してくれる本だ。理論の説明は頭の痛くならない程度でやり方は確実にマスターできるようになっている。ちょっと統計を使いたいときに知っていれば役に立つだろう。

 しかし、何で信頼区間は95%なのだろう。90%では1割の誤差を認めることになりいい加減に思え、99%では厳密すぎて使いにくい――医療関係などでは99%が使われると説明されているが――のかもしれない。これはなかなか感情的な判断なので機械的な統計にも心理が混ざる部分があると思うとむずむずした。

統計処理に使うExcel活用法―データ分析に使えるExcel実践テクニック
統計処理に使うExcel活用法―データ分析に使えるExcel実践テクニック
相澤 裕介
カテゴリ:ハウツー | 18:00 | comments(0) | trackbacks(0)

インターネット時代の著作権 半田正夫

 タイトルに反して、まではいないのだがインターネットに関することに特化しているわけではない著作権の解説書。なぜインターネットの名前が挙がっているかというと、著作権新時代の契機として重視しているからのようだ。
 失望よりもむしろ戦前生まれの著者がインターネットの概念をちゃんと理解していることに驚嘆した。明治時代だって英語が得意な人と苦手な人がいたように、ネットのことも時代の差よりも人間の差のほうが大きいのかもしれない。とりあえず著者は格好いい。

 半分のページを実例をあげて解説することに割いているのも特徴。こういうのありそうだなーと冷や冷やする例から、これはねえよと思う例まで取り揃えていて、著作権法の大体の「間合い」が分かった気になるのではないか?

 著作権法は物凄いペースで改正が繰り返されているそうで、今後もインターネットに影響を受けながらも変化していくことだろう。誰もが満足できる時代がくるかは分からない。

インターネット時代の著作権―実例がわかるQ&A付
インターネット時代の著作権―実例がわかるQ&A付
半田 正夫
カテゴリ:雑学 | 19:16 | comments(0) | trackbacks(0)

アリストテレス入門 山口義久

 三段論法を考え出したのはアリストテレスらしい。三段論法にも種類があって例えば

 マリアは17歳である。
 すべての17歳はピチピチである。
 ゆえにマリアはピチピチである。

 というものを基本に否定形を交えて複数種類があるそうだ。
 そこまではまぁ、よかったのだが、全体的に難解で読み進めるのに苦労したのは、ギリシア独自の考え方に基づいていてその理解に躓いたのと――あとがきで知ったのだが――著者が結果ではなく思考過程を示そうとしたからのようだ。
 ひたすら結果を求める読み方をしてしまったが、それでもアリストテレスが思索においてデータを重視するアカデミックな哲学者であったことがわかった。

アリストテレス入門
アリストテレス入門
山口 義久
カテゴリ:科学全般 | 18:00 | comments(0) | trackbacks(0)

天文ガイド9月号

天文学コンサイス
 ドップラー効果とかは時間を掛けないと計算できないのがネックなわけだ。多時間露出の中だけとか、動画でとか、計算できるようにならないものか…よほどの技術革新がいりそうだな。

最新の超高感度ビデオカメラに迫る!
 比べてみると人間の目の凄さを思い知る。総合能力では人間の作った機材を圧倒しているのだから。それでもこのカメラは非肉眼的なオーロラまで撮れているというから、目が追い抜かれる日もくるかもしれない。

小惑星誕生の仕組みを解き明かした はやぶさ
 写真が小さすぎるのが不満。ルーペを使わないと参照できないよ。形成史を見るとイトカワのような小惑星が地球衝突コースに乗ってもピンポイントで爆破すれば分解できそうだな、空隙も多いみたいだし。

オーロラが起こした大停電
 これが常態の惑星だったら逆にオーロラを利用して発電してたりして。

惑星の近況6月
 木星のみ。中赤斑に文章を割いているが速報性がないためにかなり中途半端な印象がある。むしろ二つの赤斑がすれ違った後の分析に期待したい。

読者の天体写真月例コンテスト
 アメリカの国立公園で固定撮影した作品が鮮烈。星空が素晴らしいのか地形が素晴らしいのか、それが問題だが。
 赤い星雲写真のページも印象的だったが、ひとつひとつのインパクトは今ひとつ。銀河の写真が少なかったのが残念だが、シーイングに恵まれなかった撮影者が多かったのだろう。
 そんな中、月のモザイク合成写真には何ともいえない風格があった。

天文ガイド 2006年 09月号 [雑誌]
天文ガイド 2006年 09月号 [雑誌]
カテゴリ:天文 | 19:08 | comments(0) | trackbacks(0)

散歩写真のすすめ 樋口聡

 要するに散歩しながら写真を撮る、それだけの行為を詳解して一冊の本にまとめたもの。単純な料理である卵かけご飯が意外と奥深いように、散歩写真も奥が深い。というよりもカメラマンたちの撮影への意欲が執着レベルで凄いというべきか。ひたすら蛇口を撮り続けている人とか生霊が世界中の蛇口に出るんじゃないかな?…怖い想像をしてしまった。
 まぁ、今は1億総カメラマンの時代。お気楽ご気楽に自分のために写真を楽しみましょうというのが著者の言なのだが。

 まず、散歩写真の高尚?な精神を語って、機材から被写体の傾向まで簡潔でいて捻りのある文章で説明してくれる。文章はいいのだが、写真はあまり良いと思えなかった。わざと良すぎる写真を避けたのかもしれない。説明文が「ここをこうすればよかった」と反省している場合が多いせいもあるだろうか。

 やはり良い写真を撮ろうと思ったら散歩写真といえども考えることは必要なようだ。でも、私の散歩写真は流し撮りが基本で平気で歩きながら撮る、自転車に乗りながら撮る、構図も確認せずに撮る。
 それが私の楽しめるリズムなので。

散歩写真のすすめ
散歩写真のすすめ
樋口 聡
カテゴリ:雑学 | 19:20 | comments(0) | trackbacks(0)

恐竜!化石を求めて ナショナルジオグラフィックDVD

 モンゴル、ゴビ砂漠の奥地にある恐竜化石の巣。そこに向かう古生物学者たちを追いながら、恐竜についての最新の研究も説明していく豪華なドキュメンタリー。最新といっても当時であって10年前の製作だったりするのだが…それでも今定説となっていることの転換点の最前線がみれるというのはエキサイティングだ。
 ちなみにそれは恐竜が鳥の祖先であることと、オヴィラプトルが卵泥棒ではなく親だったこと。前者は驚嘆すべき発見、後者は科学の喜劇的な側面。学名は先入観を交えず冷静に付けた方がいい。緑柱石に黄色や赤色のものがあるような混乱する事実を増やさないためにも。

 このDVDが教えてくれたのは、交通が発達したように思える現代においても「冒険」に値する難所と、そこを目指すだけの理由が存在し続けていることだ。だから世界は素晴らしい。

恐竜!化石を求めて
恐竜!化石を求めて
カテゴリ:ナショナルジオグラフィックDVD | 18:26 | comments(0) | trackbacks(0)

グーグルGoogle 既存のビジネスを破壊する 佐々木俊尚

 グーグルという一企業にして一大社会現象について解説した新書。最近新書にはまりつつあるのは良いのか悪いのか。

 見出しが無闇にカッコよくて印象に残る。駐車場とメッキ工場の二つのビジネスモデルの説明が著者が述べているようにプロジェクトX的に楽しめた。正直、「グーグルって凄い」よりも「商売ってはまると面白い」のほうに感覚を奪われてしまったり。すでにネットビジネスも飽和してきているので彼らのような成功は難しいだろうけど、だからこそ彼らのようにしないと現状を維持することすらままならない状態に陥るかもしれない。怖い。

 後半ではグーグル論からネット論に発展していく。グーグルにくわえてヤフー、マイクロソフトの三つ巴の闘争やブログの話がでてくる。
 ブログに関していえばトラックバックの魔力は悲しいことに低下してきていると言わざるを得ない。スパムトラックバックが自由なトラックバックをできる風潮を破壊してしまった。
 今ではハードルの高いはずのコメントのほうがトラックバックよりも手頃な手段になってしまっているように感じる。

 それでもweb2.0という概念は検索エンジン(のキャッシュ?)という神の誕生を志向しているそうだ。
 人類は太陽神から民主主義まで神を創り続けてきたが、その列にグーグルが加わるってことか。グーグル神の特殊なところは不変性ではなく発展性を売りにしているところだろう。
 それでも人間に頼っている部分をなくすことはできず、神の列に加わると同時に失敗の列に加わることになるんだろうな。何だか、風の谷のナウシカ漫画版の巨神兵みたいな話になってきた。
 せめて中立性と非政治性を保つために国家に属さないか、ひとつの国家になってもらえないものだろうか――グーグルの活路は宇宙にあるのかもしれないね。

グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する  文春新書 (501)
グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する 文春新書 (501)
佐々木 俊尚
カテゴリ:雑学 | 18:02 | comments(0) | trackbacks(0)

星ナビ9月号

天上のCCD画法
 絵画みたいなアイリス星雲。オリオン星雲でこういう作風のものがよくあるが個人的には好みじゃないな。

STOP!光害Special
 一見便利だけど、使いこなせる人はどれだけいるだろう。2万円はけして安くないし……天文台などに設置して観望会の対象を決めるのに向いてるかな。

海王星の発見者は誰?
 性格が内気で押しが弱くて万年助手の人も世の中にはいるよね…。イギリスとフランスの意地の張り合いは何だかトムとジェリー仲良く喧嘩しな、の域に達してる。どっちかというとコミカルな案件だ。

系外惑星を探れ!20
 大気なんて良く分離できるものだ。地球型惑星になるとさらに大気が薄いから観測は困難を極めるだろうな。

帰ってきたやみくも天文同好会
 真ん中の4コマのオチが理解できない。深い意味はないのかもしれない…。

星ナビギャラリー
 パッとしねぇ。作品そのものの問題だけではなく写真と紙面のバランスが悪くて迫力が欠けてしまっているように感じる。悪平等に走らないで大作は大きく表示してあげるべきだろう。網状星雲がなかなか良かった。
 月齢の人は一日違いで天文ガイドにも投稿してる…はたしてどっちが力作だったのやら。

月刊 星ナビ 2006年 09月号 [雑誌]
月刊 星ナビ 2006年 09月号 [雑誌]
カテゴリ:天文 | 18:42 | comments(0) | trackbacks(0)

会戦事典 古代ギリシア人の戦争 市川定春

 事典と銘打たれたものを3回も通読した馬鹿がいる。私だ。あと、誤植を指摘して正誤表のファックスを発送させたのも私だ。重版して直されたかな、部数少なそうだから厳しいか。

 本書は古代ギリシアの軍隊同士の決戦である会戦を図説したもので、有名どころとしてはペルシア戦争やアレクサンドロスの戦争などにおける会戦が紹介されている。ただし著者がローマ人版を書く予定でいるため、ローマ人とギリシア人の戦争については省かれている。例えばマグネシアやキュノスケファライ(マケドニア戦争での)がない。痛恨なのはピュロス王によるローマとの戦争が載っていないことで、ハンニバルをして自分より上の戦術家といわしめたピュロスの戦いを見ることができなかったのが惜しまれる。

 私は遠征であるペルシア戦争やアレクサンドロスの東征よりも、何度も攻勢が発起されるペロポネソス戦争やディアドコイ戦争の方が好きだったりする。おそらく同じ文明同士で争っていることが大きいのだろう。いわいる実力伯仲の戦いだからか。
 文明違いといえばカルタゴが可哀相だ。会戦一覧によればかろうじて勝ったといえる会戦はひとつだけで、あとはギリシア勢にボコボコにされている。反面、これだけ負け続けているのに国威を維持し続けたカルタゴの底力が恐ろしくなる……ハンニバルにいたっては第二次世界大戦のイタリア海軍を率いてアメリカ海軍を一時的に消滅させたような大活躍と評してよいかもしれない。

 戦況図をみて楽しむのは地図を眺めて楽しむのに似たところがあって、分からない人には分からないんだろうが一旦はまりだすと加速度的に楽しくなっていく――本書はそんな病人にはたまらないマタタビの塊なのだ。

古代ギリシア人の戦争―会戦事典800BC‐200BC
古代ギリシア人の戦争―会戦事典800BC‐200BC
市川 定春
カテゴリ:歴史 | 12:19 | comments(0) | trackbacks(0)

進化の謎を秘めたネコ ナショナルジオグラフィックDVD

 ムッハァ〜ッ、眼福眼福。小は生後数日から大はリチャード1世の心を持つ獣までネコ科の映像盛りだくさん。
 眺めているだけで癒される〜と言いたいが、雄ネコが雄ライオンと同じように子猫を殺すことがあると知ったのは衝撃だった。人間がどんなに美化しても野生の衝動は消しがたいのだ。
 まぁ、臆病なやつはひたすら臆病で、せめて引掻くか噛み付くかしろ!と文句を言いたくなるほど縮こまって撫でられるやつもいる。心臓がノミサイズなんだろうか。
 一方で高層ビルで室内飼いされているネコはふっと空を飛びたくなってしまうと、このドキュメンタリーは説明している。落下時間の長い高度よりも中途半端な高度の方が怪我が酷いらしいが、人間にも適応できる事実なのかな。ネコ以上に精神の動きが複雑だから難しいか。

 狩りのシーンはなかなか獰猛で激しかったけど、やっぱりネコが好きと再確認してしまった一枚だった。

進化の謎を秘めたネコ
進化の謎を秘めたネコ
カテゴリ:ナショナルジオグラフィックDVD | 18:21 | comments(0) | trackbacks(0)
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