地球連邦の興亡1巻〜オリオンに自由の旗を 佐藤大輔
2006.11.30 Thursday | by sanasen
スペースオペラの体裁をもつ社会システム思考実験SF。もっとも優れた政治体制ではなく、もっとも「有効な」政治体制を追求しているようだが。
根底となる設定は、科学者を発狂させるために何者かに創り出された超空間移動手段「ハイゲート」によって恒星間宇宙に乗り出した人類が、他の知的生命体「ネイラム」や「ヲルラ」と遭遇する。そしてネイラム第一氏族との戦争――その終戦によって起こる社会変革が物語の中心になる。
まずゲートを制作している何者かは、気長なシミュレーションゲーマーなのだと思う。各星系に育まれた知的生命をゲートというツールを使って接触させ、その示す変化を楽しんでいるのだ。少なくとも佐藤御大は楽しんでる。
データが細かく参照できるなら、要素を操るメソッドは単純な方がゲームの妙味は増すというものだ――これは同意してくれない人も多そうだが。
ネイラムについては、どうも第三までの氏族がちょうど地球連邦を代表する日米英三国に相当している気配がする。第一氏族はアメリカ、出番のない第二氏族はイギリス、そして貪欲な第三氏族が日本だ。地球連邦が接触したのが第三氏族の領域ではなくてよかった。
第一氏族が相手だから1億人弱が死ぬ程度で済んだ。第三氏族と正面切って接触していれば凶悪極まる経済的侵攻を受けていたことだろう。その甚大なる被害は地球人類のネイラム主義への合流をうながしたかもしれない。
ま、それも神の御業のなせる業。
第三次世界大戦によって中国とインドを筆頭にする地域の人々が殲滅されている設定については……ずいぶん思い切った解決をしたものだ。ガンダムの宇宙植民に対するアンチテーゼが根元にあるのかもしれない。あの世界と違って小惑星が落ちたのはヨーロッパだったけど。
基本的にあまり楽しくない世界だが、その中で日系人の最強設定が際立つ。人類の半分以上を犠牲にした上でなければ、それは手に入らないと佐藤氏が考えているようでもあり、興味深い。
地球連邦の興亡〈1〉オリオンに自由の旗を
根底となる設定は、科学者を発狂させるために何者かに創り出された超空間移動手段「ハイゲート」によって恒星間宇宙に乗り出した人類が、他の知的生命体「ネイラム」や「ヲルラ」と遭遇する。そしてネイラム第一氏族との戦争――その終戦によって起こる社会変革が物語の中心になる。
まずゲートを制作している何者かは、気長なシミュレーションゲーマーなのだと思う。各星系に育まれた知的生命をゲートというツールを使って接触させ、その示す変化を楽しんでいるのだ。少なくとも佐藤御大は楽しんでる。
データが細かく参照できるなら、要素を操るメソッドは単純な方がゲームの妙味は増すというものだ――これは同意してくれない人も多そうだが。
ネイラムについては、どうも第三までの氏族がちょうど地球連邦を代表する日米英三国に相当している気配がする。第一氏族はアメリカ、出番のない第二氏族はイギリス、そして貪欲な第三氏族が日本だ。地球連邦が接触したのが第三氏族の領域ではなくてよかった。
第一氏族が相手だから1億人弱が死ぬ程度で済んだ。第三氏族と正面切って接触していれば凶悪極まる経済的侵攻を受けていたことだろう。その甚大なる被害は地球人類のネイラム主義への合流をうながしたかもしれない。
ま、それも神の御業のなせる業。
第三次世界大戦によって中国とインドを筆頭にする地域の人々が殲滅されている設定については……ずいぶん思い切った解決をしたものだ。ガンダムの宇宙植民に対するアンチテーゼが根元にあるのかもしれない。あの世界と違って小惑星が落ちたのはヨーロッパだったけど。
基本的にあまり楽しくない世界だが、その中で日系人の最強設定が際立つ。人類の半分以上を犠牲にした上でなければ、それは手に入らないと佐藤氏が考えているようでもあり、興味深い。
地球連邦の興亡〈1〉オリオンに自由の旗を