日本の戦時下ジョーク集〜太平洋戦争編 早坂隆
2008.05.31 Saturday | by sanasen
戦争中で民衆生活が圧迫されようとも笑いの火がすべて消されてしまうことはありえない。笑いこそは人間的活動の本質のひとつなのではないかと考えさせられる、戦時中に流行した漫才やジョークを集めて収録した文庫。
この本を書くにあたっての取材を不謹慎と言った人物がいたそうだが、戦争そのものを笑っているのではなく戦争中の笑いを集めているのに、どこが不謹慎なのか分からない。そういう人は理念をよく理解できなかったのか――したくなかったのか、戦争に対して一方的な価値観をもってしまっているのではないか。それこそ危険は道筋だと思うんだけどなぁ。
ジョークは時局の変遷にともなって紹介されているため、太平洋戦争全体を通した概要の勉強にもなる。戦局が市民生活にあたえる影響が、ジョークの形で息づいたものとして感じられる。
イラクでのクーデター騒動など初耳に近いものもあったが、当時を生きていた人にはリアルタイムの時事だったのだと感じられて興味深かった。
ネタの内容そのものに関しては、けっこう面白さが弱いと感じるものも目立った。いろいろな制約もあったかもしれないが、それ以上に時代的な感性の違いが裏にある気がする。とはいえ笑えるものは笑えて、楽貫世文の「太平洋相撲戦」などはノリもよくて大変楽しい。イタリア機と対戦したカーチスが故障負けなのは当時の日本人もイタリアがヘタリアであることを薄々把握していた結果かもしれない……。
他にも甥に教訓をたれて自滅するおじさんの話や、兵の検査でおもしろい結論をくだす軍医の話などが楽しかった。
日本の戦時下ジョーク集 太平洋戦争篇 (中公新書ラクレ 250)
早坂 隆
この本を書くにあたっての取材を不謹慎と言った人物がいたそうだが、戦争そのものを笑っているのではなく戦争中の笑いを集めているのに、どこが不謹慎なのか分からない。そういう人は理念をよく理解できなかったのか――したくなかったのか、戦争に対して一方的な価値観をもってしまっているのではないか。それこそ危険は道筋だと思うんだけどなぁ。
ジョークは時局の変遷にともなって紹介されているため、太平洋戦争全体を通した概要の勉強にもなる。戦局が市民生活にあたえる影響が、ジョークの形で息づいたものとして感じられる。
イラクでのクーデター騒動など初耳に近いものもあったが、当時を生きていた人にはリアルタイムの時事だったのだと感じられて興味深かった。
ネタの内容そのものに関しては、けっこう面白さが弱いと感じるものも目立った。いろいろな制約もあったかもしれないが、それ以上に時代的な感性の違いが裏にある気がする。とはいえ笑えるものは笑えて、楽貫世文の「太平洋相撲戦」などはノリもよくて大変楽しい。イタリア機と対戦したカーチスが故障負けなのは当時の日本人もイタリアがヘタリアであることを薄々把握していた結果かもしれない……。
他にも甥に教訓をたれて自滅するおじさんの話や、兵の検査でおもしろい結論をくだす軍医の話などが楽しかった。
日本の戦時下ジョーク集 太平洋戦争篇 (中公新書ラクレ 250)
早坂 隆