日本の戦時下ジョーク集〜太平洋戦争編 早坂隆

 戦争中で民衆生活が圧迫されようとも笑いの火がすべて消されてしまうことはありえない。笑いこそは人間的活動の本質のひとつなのではないかと考えさせられる、戦時中に流行した漫才やジョークを集めて収録した文庫。
 この本を書くにあたっての取材を不謹慎と言った人物がいたそうだが、戦争そのものを笑っているのではなく戦争中の笑いを集めているのに、どこが不謹慎なのか分からない。そういう人は理念をよく理解できなかったのか――したくなかったのか、戦争に対して一方的な価値観をもってしまっているのではないか。それこそ危険は道筋だと思うんだけどなぁ。

 ジョークは時局の変遷にともなって紹介されているため、太平洋戦争全体を通した概要の勉強にもなる。戦局が市民生活にあたえる影響が、ジョークの形で息づいたものとして感じられる。
 イラクでのクーデター騒動など初耳に近いものもあったが、当時を生きていた人にはリアルタイムの時事だったのだと感じられて興味深かった。

 ネタの内容そのものに関しては、けっこう面白さが弱いと感じるものも目立った。いろいろな制約もあったかもしれないが、それ以上に時代的な感性の違いが裏にある気がする。とはいえ笑えるものは笑えて、楽貫世文の「太平洋相撲戦」などはノリもよくて大変楽しい。イタリア機と対戦したカーチスが故障負けなのは当時の日本人もイタリアがヘタリアであることを薄々把握していた結果かもしれない……。
 他にも甥に教訓をたれて自滅するおじさんの話や、兵の検査でおもしろい結論をくだす軍医の話などが楽しかった。

日本の戦時下ジョーク集 太平洋戦争篇 (中公新書ラクレ 250)
日本の戦時下ジョーク集 太平洋戦争篇 (中公新書ラクレ 250)
早坂 隆
カテゴリ:歴史 | 06:50 | comments(4) | trackbacks(0)

ガス溶接・溶断作業の安全 中央労働災害防止協会

 特にアセチレンガスと酸素を使った溶接・溶断作業について教えてくれる教科書。歴史的背景からはじまって道具の仕組みや注意事項を述べている。後ろ3分の1が関係法令で固いが、前半は読みやすくていろいろと興味深い内容もあった。

 なんといっても化学に繋がることが多くて、勉強しておくことは本当に大切だと感じた。化学の知識があるとないとでは理解の深さが全然異なってくるはずだ。まぁ、頭でわかっていても実際に使いこなせなければ意味がないのも確かだけれど…。

 ところどころに事故の事例が載せられているのだが、あまりにも爆発死亡事故の話が多いので無常観すら覚えるようになってしまった。本当、のべつまくなしに爆発してる――そういうのを集めたのだから当然だろうけどね。
 装置が改良された現代にあっても不注意が重なればこうなのだから、アセチレンを液化して使うなんて乱暴なことをしていた時代の悲劇は想像するだけでも恐ろしい。技術の進歩と先人のたゆまぬ改良に頭が下がる思いだ。
 これからもっと安全で使いやすくできますように。

ガス溶接・溶断作業の安全
ガス溶接・溶断作業の安全
カテゴリ:ハウツー | 00:17 | comments(0) | trackbacks(0)

不祥事はなぜ繰り返されるのか 武井勲

 タイトルには「なぜ」の文字があるが内容はあまり理由について直接的なアプローチをとっておらず一足飛びに不祥事が繰り返されないようにするリスク・マネジメントの方法論を説明していっている。まぁ、理由を「あげればリスク・マネジメントをするべき人間が愚かだから」のひとことで片付いてしまうので、この方が建設的だろう。

 現代日本が直面しているさまざまなリスクにも触れており、なかなか興味深い内容も多かった。ただ、著者本人の主張が微妙に混じっているので警戒しながら読むことにもなった。職業病的にとりあえずなんでも「リスク」の言葉に変換してしまう雰囲気がある。
 話の中で特に気になったのは代表を立てた集団訴訟を可能にする「クラス・アクション」の制度の話で、度がすぎれば弁護士の存在自体がリスクになってしまうように思われる。制度を適度に導入するだけならともかくアメリカの弁護士までは絶対輸入したくないものだ。
 ただ、企業を無闇に増長させる流れについては何らかの方法で対処していかなければならないはず――ネットの力は使えると思うんだけどバランスよく掣肘を加えるには制御が難しすぎるか。

 著者が主張していることのひとつに日本人は問題を「点」で捉える傾向が強くて、それが継続する「線」がみえていないという主旨のことがあった。なるほど納得させられる話で、もっと連続性を考えてリスクを見ていかなければならないのだろう。

不祥事はなぜ繰り返されるのか―日本人のためのリスク・マネジメント (扶桑社新書 21) (扶桑社新書 21)
不祥事はなぜ繰り返されるのか―日本人のためのリスク・マネジメント (扶桑社新書 21) (扶桑社新書 21)
武井 勲
カテゴリ:ハウツー | 23:45 | comments(0) | trackbacks(0)

スレイヤーズすぺしゃる7〜がんばれ死霊術士 神坂一

影なる脅威
 シャザード=ルガンディの名前は歴史のテストにでるので覚えておいて損はない……考えてみれば「テストに出る」なんて動機付け、情けないことこの上ないなぁ。人生に役立つとか、ともかく面白いとかで売ってみろ。
 さてその伝説の魔道士が生み出した「影の鏡」の効果は――けっきょく反対にされる性質が恣意的なんだよなぁ。恥ずかしくて封印する前にそのあたりの研究を進めて使えるようにすることはできなかったのだろうか?いろいろ試したけどダメだった可能性と実験による「失敗作」の大量発生に恐怖した可能性があるな。
 まぁ、人は失敗を重ねて成長していくものだ。うん。

インバース恋愛教室
 レスターの性格は異常……こういうゲストキャラの腐らせ方は本当にうまい。鬼畜極まりない彼の発言には大いに笑わせてもらった。ぶっとばされるだけで惚れるなんて安いやつだ。親父にも殴られたことがないのだろう。
 リナが普通にピンチに陥っていたのが気になった。やっぱり最後は運が頼りか。

絶海の死闘
 考えたんだが……空飛ぶモンスターを召喚してその背中に乗って脱出しちゃダメなのか?意外と航続距離がでないのかもしれないが海面に浮くものを召喚してその上で休むという手も使えるはず。これなどは手法がいろいろあるとかえってお話作りの邪魔になる例だろう。
 けっこう強力なモンスター退治が楽しく描かれているのでこれはこれでよい。

秋の味覚の争奪戦
 やってることは限りなく酷いけど、みんなでワイワイ野望にむかって突き進むのは楽しいだろうなぁ、とは思った。でも、迷惑掛からないようにやれよ。紅一点のイラストがエロカワイイのがよかった。リナは変な方向に耐性付きすぎである。
 オチの裏をかく技は見事――食欲魔人め。

がんばれ死霊術士
 ゾンビに歩き回られたら衛生的にじゅうぶん問題があると思うぞ……浄化の呪文で塵にしてしまうのも遺族にとっては悲しいかもしんない。
 そういえば土葬ではなく火葬が基本になったら死霊術士は失業しかねない。まぁ、応用の利くテクニックをもったウィニーの一族はそれでもやっていけるかもわからないけど。

ガッツだ(もと)死霊術士
 裏の裏をついてくる展開はなかなか楽しかった。リナは人を疑うことを覚えすぎである。本人があんな性格しているからって……。
 特製ゾンビはカッコいいけど、これも維持コストなしで生産できるのだろうか?やりようによっては一大死霊国家を築くことも可能な気がする。実力的にウィニーの夢は洒落にならん。

神坂一作品感想記事一覧

がんばれ死霊術士 (富士見ファンタジア文庫―スレイヤーズすぺしゃる)
神坂 一
カテゴリ:ファンタジー | 07:08 | comments(0) | trackbacks(0)

雲の世界 山田圭一

 解説は簡潔につべこべいうことなくたくさんの見ごたえのある雲写真で勝負してくる本。十種雲級に分類された写真の中には被写体として撮りやすくない雲の写真もあるのだが、前景に鳥の群れや飛行機を入れたり、山や飛行機から見下ろす形で撮ったりと工夫を凝らして楽しめる画面にしていた。さらには衛星写真まで導入してミクロ視点からマクロ視点まで雲の映像を網羅している。
 ひたすら連続する雲の写真を眺め続けているうちに精神が弛緩して、ゆったりした気分になることができた。ちょっと気になったのはズーム写真と思われるものの中にピントが甘いものがあったことだろうか。あるいは太陽光が強すぎてぼやけてしまっていたのかもしれないが、もう少し光を抑えた写真の方が個人的には好みだった。

 短い解説も雲を構成する氷結の形から、光学特性にばらつきがあり、ひいては気象予測に影響を与えてくるとする最新のホットな知見に触れており興味深かった。述べられているように人間の活動が排出した微粒子がすでに雲の生成を無視できないレベルで促進している気もする――中身の飛行機雲やスモッグの写真を眺めていると。
 そういう部分も含めて雲の動きに注目してみたくなった。

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雲の世界
雲の世界
山田 圭一,菊地 勝弘
カテゴリ:写真・イラスト集 | 12:41 | comments(0) | trackbacks(0)

ミスマルカ興国物語1 林トモアキ

 本格異世界ファンタジー!しかも、国とかの規模で話が動く、凄いよ国だよ!?と思ったけれど、私が知っている林トモアキ先生の作品はどれも世界の規模で覇権を争っていたのだった。ただ、妙に関係者がご近所さんっぽくなってしまうだけ。芸能界が意外と狭かったりする現象と同じようなものかもしれない――そうすると各国の指導者の世界もそれほどの規模をもつわけではなくマヒロ王子の野望にも妙な説得力がついてくる。古代ギリシア史によれば王一人を騙すより民衆一万人を騙すほうが簡単らしいけど。
 要はアプローチしてくる方向が異なるだけで行き着く「世界」はお・り・が・みなどとさほど変わらないのかもしれないなぁ。それはそれで楽しいので構わないけど。

 世界観は完全異世界にみせかけて、お・り・が・みや戦闘城塞マスラヲの未来にあたる設定になっているようだ。魔人や神器など耳になれた単語がひょいひょいとでてくる。冒頭の地図に「ゼピルム共和国」の名を見た瞬間には頬に汗が流れそうになった。
 あのゼピルムが――どれだけ連続性があるのか知らないけど――いまや魔人と人間の共和国で、魔人専制国家のグランマーセナル帝国と睨み合っているのだから歴史の流れは読みがたいものである。というか、林先生の頭の中身はほんっとーに読みがたい!
 それでもこうして「衝撃的な」作品が生産されてくるから不思議でならない。

 マヒロ王子の狂いきった言動もはちゃめちゃなギャグも楽しめた。ここまで読者を驚かせてくれる主人公は貴重なのではないか。
 しかし、戦争で国を奪うより口先で世界を征服する事のほうが凶悪に思えてしまうのは何故だろうな。戦争はどうしても集団の行動になるのに対して、詐欺は個人の行為に収束されるからかもしれない。
 ストーリーを振り返ればスリルに満ち溢れていたにも関わらず、実は死人がでていない現実も素晴らしい驚きをもたらしてくれた。


 あと、挿絵のルナスたんが男前すぎる。髪をおろして着るもの着ればまた化けるのかなぁ。もう一方のヒロインであるパリエルも考えてみればさぞかし由緒正しい家柄に違いない。もしかしたら帝国に侵攻する際の大義名分に担ぎ出されるのではないか。
 二人揃って政治的立ち位置もマヒロ王子的においしくなっているのが興味深い。

ミスマルカ興国物語 1 (1) (角川スニーカー文庫 150-20)
ミスマルカ興国物語 1 (1) (角川スニーカー文庫 150-20)
林 トモアキ
カテゴリ:ファンタジー | 09:11 | comments(0) | trackbacks(0)

石はきれい石は不思議 津軽・石の旅

 津軽地方に産出する石について、どんなものがあるかを解説し、それを集める趣味について造詣を深められる本。
 石集めをされている二人のコレクターの話の内容が熟成された感じに極まっていて、こういう世界も深いのだなぁと感じさせられた。後半では彼らのコレクションの写真が公開されており、実際におもしろい石が多数見受けられたので、理解も深まる――が、奥さんたち家族を理解させるのは大変そうな趣味である。床が抜けるし。
 まぁ、元手が掛からない分いいのかもしれない。磨いている人のほうは加工費がかかると思うけど。

 津軽半島にメノウが産し舎利石として利用されているという知識は新鮮だった。ここではないが、メノウ拾いをしたことはあって、海岸でクラゲや海草をおもわせるゼラチン的な雰囲気をもったメノウ――無色だから玉髄のほうがしっくりくるけど――を拾うのはなんとなく感慨深かったものだ。
 趣味人の人に比べればプロの人たちのコラムはさすがに落ち着いていて読みやすい。とくに石神の話が興味深かったかな。

石はきれい、石は不思議―津軽・石の旅 (INAX BOOKLET)
石はきれい、石は不思議―津軽・石の旅 (INAX BOOKLET)
カテゴリ:地学 | 08:24 | comments(0) | trackbacks(0)

デジカメだからできるビジネス写真入門 田中長徳

 タイトルのとおりにプロのカメラマンがデジカメを使ったビジネスシーンに有効な写真の撮りかたについて手軽に紹介してくれている。その知恵は非常に有効度が高いので、2001年に書かれた内容であるにも関わらずほとんど陳腐化していない。
 著者としてはデジカメに仕事を奪われて半分やけくそ気味に書いたものだと語っているのがおもしろい。他にもカメラ業界の裏について語っていてそちらの面でも興味深かった。まぁ、本業はデジカメに食われない領域にあるらしいので、カメラマンの強さを影に語っている気もする。やっぱり一般人がなかなかいけないような「領域」に踏み込んで撮影するたぐいの仕事はなくなりそうにない。
 また、デジカメとの付き合いも黎明期からの長きに渡るらしく、仕事で愛用している関係もあってか、なかなか思想的な考察も読ませてくれた。作例や賑やかしとして掲載されている写真も気楽にみれて楽しいものだ。

 個人的に語られている内容から現実の進歩が足りないと思う部分はデジカメの起動時間かな?これが早くなればもっと決定的瞬間を撮れるようになるのにと何度も思う。
 それこそ、本の中ではまだプロ専用機だった眼レフデジカメの出番なのかもしれないが……こっちはちょっと嵩張るんだよね。けっきょく最強のデジカメは人間の目の中にくみこんで任意にシャッターを撮れるものなのではないか、とSF的な結論を出してみる。
 構図の工夫ではモニターを回転させられるデジカメにも利はあるけれど。

デジカメだからできるビジネス写真入門 (岩波アクティブ新書)
デジカメだからできるビジネス写真入門 (岩波アクティブ新書)
田中 長徳
カテゴリ:ハウツー | 00:31 | comments(0) | trackbacks(0)

スレイヤーズすぺしゃる5〜戦え!ぼくらの大神官 神坂一

インバース教育委員会
 ふたりのお姉さんが手取り足取り指導――というシチュエーションからはかけ離れた色気のなさ。ともかく妖怪おばはんジョセフィーヌの存在感が強烈過ぎて、他のすべてが押し流されそうになっている。そんな彼女も不死身ではなく、意外とあっさり並みの盗賊に倒されている点では一安心。殺せる確信が持てなければひたすら不愉快なだけの存在になってしまうので、あの展開は心理的にも助かった。
 ナーガのフェイントはむしろ反対方向を見たくなる紳士?もいるかも――結局、外見に騙されるか。やっぱりリナが言うとおり、……男って……悲しい生き物……

れすきう作戦
 極貧魔道士のチープな生活臭がある意味たまらないっ!そして馬鹿にしているわりにリナの懐も豊かとはいまいち言えないオチになった。レグルス盤は使い方しだいで有効利用できそうなものだが――兜の中に仕込めば耳穴なしでも明瞭に命令伝達できるとか――価格がネックになるだろうな。量産化でコストダウンを図れるタイプでもなさそうだし。
 レイリーのキャラクターはなかなか面白かった。リナの脅しに迫力がありすぎて怖い…。

戦え!ぼくらの大神官
 ともかく爆笑。しかし、勝手に「ぼくらの」大神官にならないでいただきたい。こちとら願い下げなのである。せめあぐねたリナがルドルフに対して竜破斬を使うかと一瞬、思ってしまった。日頃から彼女、手加減ないからなぁ。
 あと、アイパッチの律儀さがなんだか可愛かった。もしかして依頼主に怯えていて逃げられなかったんだろうか……?

ないしょの作戦
 コンパクトに収納できる机を売りさばいて一財をなせば、その資金で胸を大きくする薬も手に入れられないかなぁ?大金持ちであるはずのリナさえ入手していないのだから無理か。もう、胸に赤眼の魔王が封印されていると思うしかないね。
 オチがかなり悲しかった。そんなものだと知らず必死で頼りにせざるをえなかった自称美少女魔道士の心情も。

だんぢょん探訪記
 基本的な作戦は悪くないと思うんだがなぁ……いっそ誘い込んだあと迷子にさせて餓死してから金品を強奪したほうが効率的かもしれないね。どちらにしてもリナたちには通用しないか。
 というか、考えてみれば気付かれないほど遠距離から事前に地霊砲雷陣を唱えておいて不意打ちをかければ必勝なんじゃ…?まぁ、メリルの頭では気付いていないと思われる。

それぞれの騎士道
 ちっとばかしカッコ良くても魔人ジョセフィーヌを前にしてしまえばヘタレるのが騎士のさだめ。ある意味、ジェフリーのよわっちさは母親に対する免疫なんじゃないかと思えてきた。もはや人間をやめているために苛立ちさえ抱くことを許されない。そんなやるせなさに満ちてしまった。
 毒効かねーかなぁ。

神坂一作品感想記事一覧

戦え!ぼくらの大神官 (富士見ファンタジア文庫―スレイヤーズすぺしゃる)
神坂 一
カテゴリ:ファンタジー | 19:57 | comments(1) | trackbacks(0)

ガスプロム〜ロシア資源外交の背景 酒井明司

 ロシア最大の企業ガスプロムを中心に現在のロシアがおかれた経済的状況を通観するブックレット。資源が絡んでいることからも非常に政治的な側面が強くなっており興味深い。ロシアの電力がガス発電に大きく依存していること、原油高騰にあわせて資源供給国としての立場から西側諸国に対抗する姿勢を取れるようになっていること、など勉強になった。
 ガスという媒体の関係上、アメリカとの取引があまりなくユーラシア大陸内での駆け引きが大きな割合を占めていることも面白い。資源の性質は国家戦略まで大きく変えてしまうのである。

 プーチンロシアの復活についても触れられていて、幸運に助けられた部分もあるものの、ロシアが老いたりとはいえ底力をもった国であるという再評価が新鮮だった。老朽化が指摘されようともやはり資本やインフラ基盤は国家を助けるのである。
 逆に考えると、そういうものさえあれば何とかなる状況から抜け出せずに足掻いている発展途上国の現状がどれだけ苦しいかも意識にのぼってきた。よって立つ基盤さえあれば助かるのだが、そのよって立つ基盤を確保したくて苦しんでいるわけで、どこかでブレイクスルーしなければならない。
 そのひとつとしてロシアのように資源を使うのも当然の選択だろう。資源をもたざる西側諸国側の立場からの思想は一面にすぎないことに注意する必要があると思った。

 それにしてもロシアに対するポーランドの外交が恐ろしく危うげなものに見えたのだが……大丈夫なのかなぁ。

ガスプロム―ロシア資源外交の背景 (ユーラシア・ブックレット No. 111)
ガスプロム―ロシア資源外交の背景 (ユーラシア・ブックレット No. 111)
酒井 明司
カテゴリ:雑学 | 15:33 | comments(0) | trackbacks(0)
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