ラバウル烈風空戦録10〜激突篇 川又千秋

 烈風が手に入ればラバウルが遠ざかる。
 空母剛龍に乗って再起したアメリカ機動部隊に一大決戦を挑む激突編!彼我の新型機が現れるタイミングが上手くはまっている。おかげで烈風無敵というよりも、零戦時代からの関係をそのまま引き継いだ印象になっているのは上手い具合だ。
 現実的には零戦を支えていた熟練搭乗員の割合が減少しているはずなのだが、主人公たちのような基地航空隊上がりの熟練搭乗員が底上げになったのか、対空砲火もかいくぐって少ない損害で大きな戦果をあげていたと思う。
 もしかしたら零戦よりも烈風の方が新米搭乗員向きなのかもしれない――操縦性はともかく無線の完備と二機編隊制の導入は有利に働いているな。

 第二次ミッドウェーに持ち込むまでの諜報戦の流れもなかなか凝っていて面白かった。陸軍まで巻き込んだ情報操作も見事だが、燃料や爆弾についてまったくセコセコしなかったのも功を奏していた。
 ともかく大勝以外頭にないから大胆に賭け金をつめたのかもしれない。
 こうなってみると山木八十八暗殺未遂事件で連合艦隊司令部が壊滅したのも災い転じて福となすに感じられてしまう。軍令部が主導権を取り戻すにも奇貨となったことであろう。

 さんざん煽られていた三田大尉――死後中佐の死だが……やっぱり勿体ないとの思いを拭えない。戦闘機による水平爆撃で戦果をあげるなんて真似をしでかしてしまった人物は、失うのに惜しすぎる。
 こちらも開戦からずっと戦い続けてきたレディ・サラと刺し違えるのも何かの縁なのだろうか。いくらなんでもこの損害発生ペースだと米海軍内での「バトンタッチ」に支障を来しそうだ。主人公たちが後まで前線に張り付いている日本軍と、そこが分かれ目になるのかもしれない。

ラバウル烈風空戦録〈10 激突篇〉 (C・NOVELS)
川又 千秋
カテゴリ:架空戦記小説 | 09:29 | comments(0) | trackbacks(0)

ラバウル烈風空戦録9〜風雲篇 川又千秋

 烈風!
 ついに新型主力戦闘機烈風のお披露目となる巻。架空の航空会社である国立飛行機に雷電の負担を肩代わりさせて、三菱の設計陣を烈風に専念させることと、中島と三菱の発動機技術を合成させることで何とか生みだされた主人公的な戦闘機だ。
 最後まで零戦で戦い抜いてしまった史実から新型機を待望する論はよく効くのだけど、欧州のスピットファイアやメッサーシュミットが発動機を更新して最後まで戦い抜いたことを考え合わせると問題は機体よりも発動機にあった気がしてしかたがない……。
 ただ、零戦に新しいエンジンに適応するだけの発展性がなかったから――小さな馬力を極限まで活用するためにピーキーだった?でも金星零戦の架空戦記は見かけるな――けっきょく新型機が求められることになってしまったのではないか。
 違うかなぁ。

 ともかく烈風の誕生であり、F6F相手に零戦で立ち向かわなければならない自体を避けれたことが嬉しい。あのP−51を相手しても互角の性能をもっているらしい語り口には眉に唾してしまうのだけど、フィクションのなかで事実といわれたら事実と認めるしかない…。

 あと、インドミダブルから剛龍への改装。
 機関出力アップまでするくらいなら最低限の着艦装置を整備するだけで実戦投入したほうが――損傷艦だったからいろいろ弄ったんだろうけど、翔鶴で批判した愚を著者自ら好みのために犯している印象を受けてしまった。
 まぁ、間に合ったからには全てよし、といえなくもない。

ラバウル烈風空戦録〈9 風雲篇〉 (C・NOVELS)
川又 千秋
カテゴリ:架空戦記小説 | 07:34 | comments(0) | trackbacks(0)

ラバウル烈風空戦録8〜怒涛編 川又千秋

 まずは第三次ソロモン海戦によって決するガダルカナル島争覇の顛末について――搭乗員の犠牲はバカにならないが何とか空母機動部隊戦に勝利して、アメリカが積極的に動くチャンスを奪えた。
 この隙にアメリカとオーストラリアの間で空母による通商破壊戦ができればなぁ、と思ってしまう。まぁ、日本側も余力があるわけではなく作戦行動に投入された空母が次の任務につくまでの手間を考えればなかなか上手くはいかないか……。
 それでもオーストラリアを脱落させる絶好の機会にみえてしょうがないのだった。ポートモレスビーが落ちていないから政治的な圧力が足りないかなぁ。
 何よりも足りないのは外交力だけどね。

 空母戦にはイギリスから駆け付けたヴィクトリアスも参加していたのだが、彼女が戦いにもたらした混乱の数々が興味深かった。むしろ分離して先陣をまかせることで日本軍の攻撃を吸収させた方が重装甲もあいまって役に立ったかもしれない……それはそれで政治的に難しい問題が多そうだが。
 イギリス海軍の航空機についてボロクソに近いことが言われていたけれど、アメリカなどと違って皮肉にあまり抵抗を覚えないのが愉快だった。さすがはイギリス気質というべきなのかもしれない……。


 最後は腕を撫すばかりだった主人公が内地に帰還して新型戦闘機を受け取るところに繋がっていく。ついにやっと烈風が出てきた。思えば雷電を駆っての戦いはあまり激しくならなかったなぁ。ちょうど日本側が攻めに転じていた時期に迎撃機を任されてしまったのだから仕方ないか。

ラバウル烈風空戦録〈8 怒涛篇〉 (C・NOVELS)
川又 千秋
カテゴリ:架空戦記小説 | 12:25 | comments(0) | trackbacks(0)

ラバウル烈風空戦録7〜血戦篇 川又千秋

 日本側の人名は変更されているが、アメリカ側の人名はあまり弄られていないようで……その変わりか知らないが駆逐艦の名前がSF作家になっているのには笑った。何か恨みでもあるのかと穿ちたくなる撃破っぷり。
 それにしても強烈なのが山本五十六の変名「山木八十八」で、彼の名前がつけられた理由を考えれば凄まじすぎる。御三家を生んだ徳川家康を超えるレベルでハッスルしているよ――海兵隊は罵倒の言葉を改める必要があるなぁ。

 まぁ、微細な話はおいといてガダルカナル島への戦艦大和殴り込み砲撃から、太平洋戦争は大きく回天をはじめる。大和の砲撃が飛行場施設だけではなく兵士の士気までも粉砕しているのが印象深かった。
 ちょうどアメリカ海軍の航空兵力に空白状態が生まれた隙をついて仕掛けたおかげもあるのだろうが、空母二、三杯の攻撃で致命傷を負わせるのが難しい巨艦であったことを考えれば史実でもそれなりに有効だったのではないかと思ってしまった。
 問題はやっぱり心理と燃料の側にある。

 こうなるとアメリカ海軍が積極的に空母機動部隊をガダルカナル島に陸揚げしていたのも気になる点で、いくら搭乗員の大量養成に定評があるとはいっても、あとあとダメージが効いてくるかもしれない。日本側がそれで手痛い目にあっているだけに、搭乗員の問題でエセックス級に報いる可能性にすがってしまうのだった。

 あと、三機編隊と二機編隊の問題が、目の焦点合わせの問題に通じて読めた。3つの目をもった動物を仮定すると目標を追うのが大変だという――2つなら融通が利くのだ。
 この巻はあまり主人公が戦っていなくて時間の進行に専念していた印象だった。これだけ大規模な戦いになってしまえば無理からぬ話だが。

ラバウル烈風空戦録〈7 血戦篇〉 (C・NOVELS)
川又 千秋
カテゴリ:架空戦記小説 | 12:53 | comments(0) | trackbacks(0)

ラバウル烈風空戦録6〜爆砕篇 川又千秋

 まったく歴史改変してポートモレスビーを占領した意味は何だったのか……けっきょく史実の流れに押し切られる形で飛行場までもを確保されてしまい、オーエンスタンレー越えの襲撃行に参加することになる。東に南にせわしなく、ラバウルの重要性がわかるストーリーになっている。

 そこで主人公はお気に入りの機体だった双戦を失うことになるのだが、片肺飛行での山脈越え描写がすばらしく冒険小説的でロマンを感じてしまった。さすがにちょっと劇的すぎる気がしたけれど、ドラマになるようなピンチを乗り越えたからこそ、空戦録を著すことができるわけで現実的にも不思議なことではないのかもしれない。
 まぁ、昔語りに美化が含まれるのは当然のことで、そっちの意味でもリアリティを確保できていると思う。

 しかし、風間氏の口から語られる欧米主義への反感や「美学」には首を捻ることも珍しくないわけで、しょうじき敵と戦っている時よりも自然と生存をかけて争っている時や飛行機について語っているときの方が安心して楽しめてしまう、変な印象の作品になってしまっていた。
 ただ、主人公の了見はあくまでも下士官搭乗員レベルのものに過ぎないことは踏まえておかなくてはならないだろう。
 あえてジェネレーションギャップを惹起する発言をさせることで読者に考えさせるつもりなのかもしれない。

 さて、次号は新型迎撃戦闘機“雷電”の見参だ。歴史改変も加速してくるらしいので楽しみにしている。

ラバウル烈風空戦録〈6 爆砕篇〉 (C・NOVELS)
川又 千秋
カテゴリ:架空戦記小説 | 17:48 | comments(0) | trackbacks(0)

ラバウル烈風空戦録5〜激闘篇 川又千秋

 ついにラバウルに進出しての航空撃滅戦が主人公を待ち受ける。
 その前に、赤道直下へ向かっての大航空移動の描写がなかなか面白かった。戦いは旅の側面を持つものだが、この作品に至っては自分の手でする空の旅の紀行文がみれることになる。
 それにしても、日本の領土と占領地を伝うだけで赤道直下にまで行けてしまうのだから、当時の世界観はまた違ったものだったろうと感じた。ただ、現地に住んでいる人々に出番がないのが何とも…。

 さて、ラバウルに辿り着いた六空の面々は、いきなりガダルカナル島に長躯しての激しい戦いに投じられる。けっこう歴史改変の追いつかない拙いことをやっていて、優秀な搭乗員を空戦ではなく長距離飛行で犠牲にしかねない過酷さが伝わってきた。
 ひとえに基地設営能力がおいつかないのを「機体の航続力」で補っている状態だ。もしも防御力がしっかりした代わりに相続力が平凡な航空機を運用していたら、もっと真剣に重機の導入などを図っただろうか、と考えだすとたまらない。
 運用思想が兵器を決定するが、兵器がいきわたった後にはその性能が運用思想を縛り付ける逆転現象もありえるのだ。

 後半では史実的に輸送船をとり逃した第一次ソロモン海戦の結果に関して、著者が独自の意見を展開しているのが、印象的だった。しょうじき、ついていけないと感じてしまうのはジェネレーションギャップという奴かなぁ。著者と実際に戦っていた兵士たちの間にも、それはある気がする……。
 栗田艦隊謎の反転に比べれば三川(作中では三河)司令長官の艦隊運動は――真珠湾の南雲長官と同じく――分かりやすいし、チャーチルが栗田ターンにしたコメントを適用すれば文句はないよ(栗田ターンそのものになら文句がある。実際その場にいなかったとしても、人生に重大な影響を与えられた人間が多すぎる)。
 まぁ、そんな個人的な考えもまた世代の波間に埋もれていくことになるのだろう。それ以前に世代の波に乗ってすらいねぇ!

ラバウル烈風空戦録〈5 激闘篇〉 (C・NOVELS)
川又 千秋
カテゴリ:架空戦記小説 | 19:20 | comments(0) | trackbacks(0)

ラバウル烈風空戦録4〜征空篇 川又千秋

 やっとラバウルの名前が出てきた!
 珊瑚海海戦で機数の誤認をせずにポートモレスビー攻略に成功したことは地味に大きい。それでこそラバウルを中心基地として堅い守りを展開する余裕が生まれてくるからだ。オーエンスタンレー越えの戦いで消耗しきるわけにはいかないだろう。
 いっぽうでミッドウェーの戦いは史実に近い4空母撃沈の大惨敗になっている。「片割れが揃わないから」なんて史実のバカバカしい理由で投入されなかった瑞鶴がいただけマシだが……生き残って事後処理させられることの多い空母である。
 しかし、彼女の航空隊も失われてしまって搭乗員でみた被害はさらに大きく広がっている気もした。敵に相討ちに近い被害を与えている分、緘口令が弱くなって搭乗員運用に余裕が生じることを期待するしかない。さすがに暗雲が立ち込めてきた感じだ。

 ちなみに風間氏が「征空」しに描かれるのは南でも東でもなく北の戦場で、隼鷹に乗ってのアリューシャン列島での戦いになる。軍事的には冴えない作戦だったけれども、P−40ウォーホークとの空戦シーンには手に汗握った。
 あまりの描写に腕の立つ敵を落とすことへの躊躇いも共有でき、だからこそ落とすべきだったと悔恨もまた濃い……。

 小型とはいえ双発戦闘機を空母で運用しようとする試みにはドーリットル隊の刺激もあったのかもしれないなぁ。爆撃能力を期待するのはいいけれど、中小空母への搭載を狙うのは何かが違う気もするのだった。

 空母への着艦方法など堅実な知識が記されているのも興味深くていい。この時期の米軍機が水上レーダーを搭載しているみたいに語っているのは気になったが……まぁ、「風間氏の記憶違い」か。

ラバウル烈風空戦録〈4 征空篇〉 (C・NOVELS)
川又 千秋
カテゴリ:架空戦記小説 | 23:12 | comments(0) | trackbacks(0)

ラバウル烈風空戦録3〜雄飛篇 川又千秋

 前巻ではマレー沖海戦に参加した主人公が、今度はドーリットル隊の東京空襲に居合わせるという巡りあわせの強さをみせる。まぁ、戦闘の激しさだけでいえばもっと凄い経験をしている搭乗員もたくさんいただろうし、日程的に無理があるわけではないからね。
 空母航空隊に所属していないことも大きくて、南雲もとい東雲機動部隊がインド洋を所狭しと暴れ回っているのにも関わっていないわけで、遭遇する歴史事象のバランスが興味深かった。まとめてしまえば結局、航空機――しかも戦闘機の――搭乗員は圧倒的多数といえるほど居るわけではないし、戦争中だけに歴史的な大イベントも無数に存在したのだと納得することにした。

 それはともかく、ラバウル烈風空戦録オリジナル戦闘機の登場である。
 二式双発単座陸上戦闘機、略して双戦は零戦をできるだけ素直に双発化したようなイメージの機体で、有効性に対する存在感の無理のなさは相当素敵な機体だった。特に護衛のない大型爆撃機を叩き落とす任務には凄まじく向いている――ドーリットル隊のために準備したみたいだと思ってしまった。
 速度性能や機銃の機首集中配備もいいけれど、いちばん画期的に感じられるのは無線機が有効に使えていることであるのが皮肉でおもしろい。この機体をきっかけとして空戦術が改められていけばいいなぁ、と願いつつも今まで匂わされた伏線からは微妙な感じだ。ただし、陸軍側から堀を埋めていく手は使える。
 回想録の体裁をもっているために、端々から少しずつ未来のことがネタバレされていく形式にも困ったもので、気になることが飛び地状に増えていってしまう。ただ、3巻冒頭で炸裂させていたように「主人公の記憶違い」を理由に微修正を図れるのは上手いものだ。

 双戦の弱点としてエンジンの調子が左右で合わないと出撃できないことを挙げていたが、不調でも無理矢理出撃させて無闇に犠牲を増やすよりは、かえっていいのでは?と思った。その辺の強引さもいかにも大日本帝国軍らしかった。

ラバウル烈風空戦録〈3 雄飛篇〉 (C・NOVELS)
川又 千秋
カテゴリ:架空戦記小説 | 23:36 | comments(0) | trackbacks(0)

ラバウル烈風空戦録2〜進撃篇 川又千秋

 いっきに歴史変更点が明らかになる二巻。とりあえず目立つトピックは真珠湾奇襲部隊によるエンタープライズの撃沈と、マレー沖海戦に参加することになったインドミダブルが日本海軍に鹵獲され、空母「剛龍」として生まれ変わることが明らかになった点か。
 どうやら効果的に空母戦力を運用させることで、機動打撃的に戦線を支えようとする思惑がみえる――けど、搭乗員が確保できるんだろうか。基本的に史実と変わらない精神性で描かれているので不安になった。
 それとも風間健児が問題意識を持てるくらいには改革されたってことなのか。これで史実の方がもっと厳しいというのも辛いものがある。まぁ、特攻をやってしまった時点でね……。
 地味だけどかなり引っ掛かる変更点は司令官の名前で、南雲司令長官が東雲司令長官、山口提督が川口提督となっている……山・川とは分かりやすすぎ!この辺は慣れといってしまえば、それまでなのだけど、実名を使うことが常態化した架空戦記小説の潮流からみれば違和感が強かった。
 でも、なんだかんだで「違う」ことを直感的に伝えるにはいい設定なのではないか。

 1巻に比べると敵に対する評価が厳しいのだが、それでも冷静さを取り戻すのは、敵をバカにするとその敵にやられた戦友に跳ね返ってくる意識があるおかげ。この手の想像力って案外働かないもので、国家意識をみるときのバロメーターにもなるかもしれない。

 最終章の「征空八犬伝」話は、真剣かつバカバカしくてついついニヤリとしてしまった。それも最後は三田小隊長がきっちり締めてくれる。あの人には本当に惚れそうだよ…。

ラバウル烈風空戦録 (2) (C・novels)
川又 千秋
カテゴリ:架空戦記小説 | 21:33 | comments(0) | trackbacks(0)

ラバウル烈風空戦録〜初陣編 川又千秋

 太平洋戦争を生き抜いた架空の撃墜王、風間健児の視点から語られる空戦録。
 その独特のスタンスから戦闘機パイロットの死生観を色濃く打ち出した内容になっており、いろいろと感じ入らされる。かなり冷静に空戦や敵機を分析しているのも興味深い。その真剣さのおかげで命が掛かっていることのリアリティを強めていた。
 決して無敵皇軍路線に走らず、敵の性能を見極めていているところも好印象。ここまでP39エアコブラがしっかり評価されている作品は珍しいかもしれない……どんな機体でも採用されるだけの売りや長所はあるし、ともかく機銃が命中すれば落とされる危険は常にあるわけだ。
 この巻で戦った相手はアメリカ陸軍機ばかりだったけれど、海軍機がどう評価されるかも楽しみなところだ。

 内容はいまのところは史実に沿っていて真珠湾奇襲攻撃は普通に行われ、台南空に所属する主人公の視点からフィリピンと台湾の間での航空戦がメインに描かれている。
 ただ、回想の端々に問題意識が萌芽していることが見られて、一人称による主観の強さをテコのひとつに少しずつ改良を行っていく流れがみえる気がした。
 それにしても1948年まで戦い続けるとなれば、核兵器に対抗する方法が問題になりそうなものなのだが……ジェット戦闘機も配備されるようだし、片っ端からエノラゲイを叩き落とすんだろうか。保有される核が少ないうちにうまく迎撃できれば製造費がバカにならないだけにある程度の抑制は効くかもしれない。

 まぁ、その辺は「さかのぼれば戦闘機が勝てないから戦争に勝てない」理論の裏返しと、肉筆を感じさせる独特のリアリティで押し切っていく構想なのだろう。

ラバウル烈風空戦録〈初陣篇〉 (C・NOVELS)
川又 千秋
カテゴリ:架空戦記小説 | 20:36 | comments(0) | trackbacks(0)
| 1/3PAGES | >>