隔週刊トレジャー・ストーン22 ディアゴスティーニ

ミネラルファイル-宝石
 モルダバイト:非晶質の宝石。そしてカットしない方が風流だと言われてしまっている……あえてカットしたのもの一つ載せてほしかった。まぁ、硬度が低いのもあるね。
 オブシディアン:これもけっこう強引に宝石に分類されている印象がある。確かにいいものが上手くカットされると文句なく綺麗だけど。

ミネラルファイル-鉱物
 リシオフィライト:知っているものの別名に思えて仕方なかったけれど普通に知らない鉱物だった……リチなんとか石が多すぎるよ。写真をみた感じ、名前ほどは魅力的ではない。
 菱亜鉛鉱:とっても王道の鉱物。コレクションする場合、これはさすがに押さえておきたいタイプ。いいものを求めはじめると際限のないタイプでもあるかもしれないが。
 安四面銅鉱:名前的にメジャーでひとつ標本をもっておきたいと長く思いながらも果たせないでいる鉱物だ。よいもののイメージに毒されすぎているのかなぁ。知名度のわりにレアなのもありそうだ。

世界の鉱物産地/カナダ編
 こと鉱物に関していえばカナダは夢のある土地だ。ついつい熱い視線を送ってしまう。地球温暖化で開発が進むとしたら素直には喜べないのだけど…。

地球物語/英仏トンネル
 地質調査をしっかりやっておくことは最終的な予算の圧縮につながる。地質断面図がよかった。マール層といえども断層の走っている部分では浸水に苦労させられたんだろうな。

ディスカバリー/六方晶系
 二ページで写真と図をふんだんにつかえば、文章はちょっとだけ。写真にあった銅藍の結晶はけっこう珍しい気がした。


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カテゴリ:地学 | 22:34 | comments(0) | trackbacks(0)

封印された日本の離島 歴史ミステリー研究会

 日本にあるあまり知られていないが魅力的な歴史をもった離島を紹介していく本。風習から地質まで、さまざまな視点から語られていて読んでて飽きなかった。いくつか他の本で読んだ島があるのも、記憶をくすぐられて楽しい。
 最後に位置と面積、人口などが表記されているのも良いところで、そこから島の生活をおぼろに想像することも楽しかった。いまでも暮らしている人がいるのだと実感できることは大きい。

 かなり方向性の異なった紹介があるのも特徴で、屋久島や南大東島の解説は地質メインだし、そうとう怪しげな鬼ゲ島「女木島」の恐怖的な記述もある。個人的に本当に恐怖を催してしまったのは、神罰よりも植民地にされていた時代の与那國島の人減らし描写だったりした。
 人頭税を課せられたために、自由な時間もなく命懸けで働き続けなければならない彼らの生活、それを強要していた時代のことを思うと身の毛がよだつ。他の島の話題も総合すれば過酷な支配が行われた背景には島民に逃げ場のない離島であったことも影響しているようで、独自の文化が育まれるのとは別の離島の面が見えた気がした。
 それぞれの土地で健やかに生活していける世の中を大切にしたいものだ。

 島へのアクセスも簡単ながら紹介されており、国内にあることは間違いないので何かの機会があったら行ってみたいと思わせてくれる。
 資料としてウェブサイトのものが大量に使われているのも時代を感じさせた。でも、本の体裁のせいか、一昔前の情報に触れている気分になってしまうのだった。


しぶとい戦国武将伝:八丈島に流された宇喜多秀家の話あり
月刊ニュートン1991年8月号:瓜生島沈没の記事を収録
戦略・戦術・戦史Magazine 歴史群像 No.39:東京湾海堡についてイラストレーション付きで解説
戦略・戦術・戦史Magazine 歴史群像No.61:毒ガスを製造していた大久野島の記事が掲載されていた

封印された日本の離島
封印された日本の離島
カテゴリ:雑学 | 22:47 | comments(0) | trackbacks(0)

戦国合戦史事典〜存亡を懸けた864の戦い 小和田泰経

 タイトルの通り、応仁の乱から大阪の陣まで戦国時代の日本を揺らし続けた合戦の諸々を小さなものまで収録した事典。
 その数は864にもなるのだが、それでも伝え切れていない小合戦がたくさんある様子だった。やはり恐ろしい時代だったと思わざるをえない……。

 私の愛好する戦況図が収録されているのは50の主だった戦いに限られており、それも兵の動きが最低限分かる程度のものに過ぎない。地形が分かりやすい点はよいのだが、物足りない気分にさせられた。
 また、合戦の様子を伝えるのに、両軍の兵力や損害がデフォルトで記載されていない点も痛い。史料にそれらがしっかり伝わっているものが乏しかったという事情はなんとなく想像がつくのだけど、戦いの規模や位置付けを知るためにも分かっている兵力はすべて載せてほしかったところだ。

 そんな難点はあるけれど、やはりあまり有名ではない戦国武将の戦いまで伝えてくれている点が嬉しかった。連戦連勝をやってのける太田道灌のすさまじさに息を呑み、七転八倒の小田氏治の戦いにはニヤニヤして、津軽氏の戦いにはマニアックだなぁ、と溜息をつく。
 知られている武将でもあっさり記述された戦後処理から苛烈な性格がうかがえたりして、短く多くの戦いがまとまっていることのメリットが感じられた。織田信長や竜造寺隆信は当然として、毛利元就も相当怖いなぁ。

 最後までとことん今川家に忠実だった城主がいたことや、依田信蕃などマイナーだけどかなりのやり手を知ることができたのもよかった。

戦国合戦史事典 存亡を懸けた戦国864の戦い (Truth In History 20)
戦国合戦史事典 存亡を懸けた戦国864の戦い (Truth In History 20)
カテゴリ:歴史 | 21:41 | comments(0) | trackbacks(0)

工場管理7月号

【特集】創意工夫で差をつけよう!伸びる現場をサポートするITの活かし方
 ITとは何であったのか……そういうまとめが欲しくなってくる今日この頃。むろんアレな架空戦記小説における烈風のような最強の秘密兵器でもなんでもなく、使い方次第で生きも死にもする「道具」なのであった。
 導入で問題を起こしている組織は、もっと別の致命的なことで問題が起きてしまう前に構造的な欠陥が明らかになってよかったと考えた方がいいのかもしれない。IT化によって兆候をみながらスルーしている会社は……。

「段取り選手権」で現場の足腰を鍛え上げる!〜高品質はもはや前提条件。過剰コスト削減の可否が勝負の決め手だ〜MIYOSHI
 いけいけムードが失われ、他のいけいけなところと戦う必要に迫られたときこそ、プロ意識が大事になってくる。そういうモラルを養うにも効果のありそうな方法だ。

まんが de KAIZEN 226 梱包単位の1人屋台で、1名活人を実現
 非常にわかりやすい改善例だった。こうなると一人一人の作業スピードが比較されやすくなるんだろうなぁ。それで、遅い人が早い人に学ぶようになるだけなら良いのだが。

「改善力」ワンポイント講座 75 「まだ問題・また問題」ならば、「また改善」すればいい
 永劫に続くモグラたたきか……改善を指導する方にはその方が都合がいいな。それは皮肉がすぎるにしても状況は刻々と変わっているわけで、きちんと続けられることは大切だ。

生き残りを賭ける工場革新Q&A 43 昔お世話になった高飛車な企業との取引は、どうすればいいのでしょうか?
 こういう企業って取引先がなくなって困ったりしないのかなぁ。悪い噂が拡散していけば最終的に酷い不利益をこうむりかねないと思うのだけど……大企業の看板を盾に実情を知らない相手を次々に食っていればやれるんだろうか。そうだったら嫌な話だ。

工場運営の光と影 48 数値を眺めていただけでは本当のムダを発見することはできない
 もちろん、数値「も」参考にすることは有効。そんなニュアンスが微妙にある上手いタイトルだ。

そのまま使えるモノづくり現場の英語コミュニケーション 11 5S Committee
 自己紹介は恥ずかしくても、好きなものを紹介する手はおもしろいかも。マイナー漫画のレビューを英語で描ければ…。

海外のゲンバから お!ナイスカイゼン 9 “改善の光”を職場に灯そう!
 あまりに改善のなされていない工場にプロフェッショナルなコンサルタントを呼びこんだら、アドバイスを受ける方がついていけないかも……この起用はちょうど良さそうだったが、大変そうでもあった。

工場管理 2010年 07月号 [雑誌]
工場管理 2010年 07月号 [雑誌]
カテゴリ:工学 | 13:20 | comments(0) | trackbacks(0)

工場管理6月号

約400トンのCO2削減を実現する工場づくりに挑む!〜照明本数100本削減達成、省エネ先進企業を目指す〜東洋ボデー
 やっぱりやる気の問題は大きいんだろうなぁ。だから、常に意識を刺激するのは効果的な作戦だと思った。

【特 集】改善活動の成果を経営数字に反映させよう!収益VM/見える化による収益改善活動の進め方
 ビジュアルマネジメントの略でVMらしい。まず手法名が見える化されていませんよね……?むやみでいちいち分かりにくくなる用語の氾濫をみていると何を考えているのかと思う。
 英語にすれば押しが効いて凄そうに見えるってところか。本当の成果を見える化するはずのVMでそれはないだろうよ。
 やっていることは効果がありそうなだけにもったいない。

下請加工業者における関連技術取り入れと自社技術の進路
 わかりやすくて興味深かった。あまり派手にやりすぎると技術を盗もうとしていると警戒されてしまう気もするが……場合によっては製品そのものを送り出す道が開けるだけに立ち回りには注意が必要なんだろうな。

現場で役立つ不良対策 よくわかるSPC入門 2 不良の原因〜ばらつきや誤差の基本〜
 懐かしい頭痛が蘇る統計のお話。こういう機会にわずかなりとも復習をしておかなければ……やっぱり数学は社会に出て役に立つじゃないかと、世にはびこる意見に怒りすら覚えた。

まんが de KAIZEN 225 分業、仕掛り品をなくし、活人目標を達成
 あいかわらず似顔絵が良く似ている。もしかして、髪の長い人にもモデルがいるのかなぁ。そこが妙に気になってしまった。

「徹底する」は改善にアラズ「具体的なやり方の工夫・変更」が改善
 あー、耳に痛い。仕組みから構造的に起きないような手を考えろということ。経験しなければ覚えないのでは――著者は経験しても覚えないと指摘しているのだが――人が変わったときにまた繰り返しになるからなぁ。

動作分析によるムダ取り
 凄いけど常に意識しながら作業をしていたら頭がパンクしそうな手法だな。あえて趣味的なことなどに応用してみるのはおもしろそう。

ムダのタチツテト
 ゼロ戦が規格にあわないパーツを調整してつけてしまっていたことを思い出した。

豊富な資産で安定した企業の未来戦略はどこにあるのでしょうか?
 ほんと、羨ましい。企業全体で貴族化してしまっている感じだ。作曲家はいいとして、収入ゼロは本当にどうかと思った。家族であることを忘れれば、古風にパトロンをしていると考えることもできる?

そのまま使えるモノづくり現場の英語コミュニケーション 11
 英語の覚え方が参考になった。鉱物関係の記事でも探してちょびちょび読もうかなぁ。

おのれをも、しっかり監視、監督者
 タチツテトくらいならともかく、これは言葉遊びに過ぎるのでは……自分がどこかに該当してしまいそうなので抵抗を覚えるのかもしれない。

サービス業に学べ!宅配業編
 ひさしぶりに、納得しやすいチョイスだった。

改善で売上げアップじゃ! ゲンバリサーチ シュミット・ブラッド
 ドバイの携帯販売企業とはおもしろいところをついくるなぁ。採用していた手法もかなり興味深かった。いわいる漸減邀撃作戦か…。

工場管理 2010年 06月号 [雑誌]
工場管理 2010年 06月号 [雑誌]
カテゴリ:工学 | 23:08 | comments(0) | trackbacks(0)

氷山空母を撃沈せよ!3〜東京沖最終決戦 伊吹秀明

 まずはマリアナ沖での岸田艦隊と、体勢を完全にととのえた氷山空母ハボクックの戦い!
 これまでの経験から導き出した「ベストの作戦」が、圧倒的な打撃力とアイスマンの頭脳に次々と打ち砕かれていく絶望感が見事だった。これまで激しく干戈をまじえてきた英雄たちがひとりまたひとりと消えていく様子も戦争の空しさを伝えている。

 死力をふりしぼった最後の抵抗もついえたかに見えたとき、阿合捷一郎が歴史の表舞台に姿をあらわして、本当に最後の勝利への道を開く。
 なんだかんだで新兵器の目白押しで勝負するところはSFっぽいと言うか……詰め以外は兵力が充分にあれば新兵器がなくてもできる作戦ではあった。
 諦めずにしっかりと迎撃体勢をととのえていればハボクックにも勝機が――と考えてみたけれど、最初から専門の兵員を準備している日本軍相手ではあまりにも分が悪いなぁ。乗り移るときに舷側の高低差がどうなっているのか気になった。
 場合によっては空挺作戦で襲い掛かることも可能な戦闘艦艇。それが氷山空母ハボクックではあるが……。

 エピローグをみた感じではハボクックは戦後、合衆国に返還されたようだ。日本としては自分にも氷山空母「富嶽」さえあれば、維持に恐ろしく金の掛かりそうなハボクックはあえて必要ではなかったのだろう。
 どうも世界に定着した様子に、ソ連もまた氷山空母を建造してアメリカと覇をきそうロクでもない戦後を脳裏に描いてしまった。核兵器のおかげで相対的に重要性は低下していくとは思うが、メガフロート空母構想に似通ったものを持っているだけに氷山空母世界の未来に興味が尽きない。

伊吹秀明作品感想記事一覧

氷山空母を撃沈せよ!〈3〉東京沖最終海戦 (トクマ・ノベルズ)
カテゴリ:架空戦記小説 | 20:16 | comments(0) | trackbacks(0)

氷山空母を撃沈せよ!2〜ソロモン逆襲海戦 伊吹秀明

 氷山空母ハボクックを進水させた恐るべきアメリカ合衆国と大日本帝国の戦いが、ソロモン海を焦点に激しさを増していく。
 前巻がひとつの海戦を双方の戦力を出し切らせる形で発展させたものだとすれば、こちらは一連のキャンペーンを描いているわけで、戦争の描き方としても実に巧みだ。ただ、主人公となるハードがハードなので、陸上での戦いはほとんど描写されていない。
 その代わりに銃後の生活にちょっと触れていて「辛み入り汁かけ飯」のエピソードには興味をそそられた。鴨葱コンビは、どうにも好きになれないが――そういう風につくられたキャラクターだからなぁ。

 この巻では氷山空母の衝撃を味方にする形で山本五十六と「阿合捷一郎」がおしすすめた海軍の改革が興味深かった。作品オリジナルで、なかなか有能な司令官の抜擢に、効果的な戦力の集中。
 その前から兵器開発を中心にして、史実よりも優れたところの多い海軍である。そうやって史実を一枚うわまわることで、それを更に押しのける氷山空母の巨大さを感じさせている。

 新型機が米軍に先んじるペースで配備されているのも嬉しいところで、特に正統派主人公的な紫堂礼二が駆る烈風の活躍には素直にもりあがってしまった。
 性能的には同時代の機体から異常に飛びぬけているってわけでもないのだが、最後までこれを量産化できなかった開発の迷走を嘆かずにはいられない。アメリカ海軍の方は、氷山空母のもたらす巨体に変な余裕を与えられてしまったせいで、F5Fスカイロケットという双発機を繰り出してきた。さらにフライング・パンケーキも投じてくるのは遊びすぎではないか。
 とはいえ本当に余裕綽々でもなく、ハボクックの実戦投入がかなりの泥縄であったことも描かれていた。そこにもう一本泥縄を結う形で投入されたプロトタイプの氷山空母「ユナイテッド・ステーツ」は舵に集中攻撃を受けてめでたく「氷山」に戻ってしまった。他には1巻でやられた艦砲射撃に、艦橋への集中攻撃が有効かな。後者は的が小さいうえに凶悪な対空陣地に突っ込んでいく破目になるが。
 黒鉛を散布して溶かす作戦はダメージコントロール要員に邪魔されそうだ。そんなダメコンが必要な軍艦は氷山空母だけだろうな。

氷山空母を撃沈せよ!〈2〉ソロモン逆襲海戦 (トクマ・ノベルズ)
カテゴリ:架空戦記小説 | 20:04 | comments(0) | trackbacks(0)

氷山空母を撃沈せよ!1〜ミッドウェー逆襲海戦 伊吹秀明

 基準排水量850万9500トン!長さ1700メートル、幅530メートル、搭載機数1000機!!パルプに氷を混ぜたパイクリートなる素材を元に建造された氷山空母ハボクックがほぼ単独で、連合艦隊に立ち向かう――雰囲気的には逆――驚天動「氷」の架空戦記小説。

 ともかく氷山空母の発想が物凄く、史実にまったく負けない存在感を、周囲に放射しつづけている。
 それを陳腐にしていないのは、氷山空母以外はかなり正確に描かれた「まともな」兵器や戦術の数々であろう。けっこう自然な形でミッドウェー海戦を逆転させた手腕には感心した。それすらも氷山空母の前座に過ぎなかったわけだが……。

 登場人物にも似たことがいえて、氷山空母を指揮するアイスマンことウォルター・ウォード大将が、ウィリアム・“ブル”・ハルゼー中将と噛み合って、うまいことキャラクターを立てていた。
 大量に挿入されている、史実・架空入り混じったポートレートがかなり独特の空気を醸成している点も見逃せない。

 なんといっても、投入した戦力を考えれば尻切れトンボに終わった印象さえ抱いてしまいそうなミッドウェー海戦を発展させて、戦艦大和までもが実戦投入される劇的な展開にもっていったエンターテイメント性の高さを評価したい。


 ちょっとしたやりとりも気が効いていて、歴史改変で参戦している十六試艦戦を指して「その零戦、何を食ったらそんなにでかくなるんだ?」と言わせていたのには笑ってしまった。
 1993年発行の古い作品だが、決して朽ちない何かを持っていると思う。SF系架空戦記小説にひとつの金字塔を打ち立てた作品なのかもしれない。

伊吹秀明作品感想記事一覧

氷山空母を撃沈せよ!〈1〉ミッドウェー逆襲海戦 (トクマ・ノベルズ)
カテゴリ:架空戦記小説 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0)

アーサーとアングロサクソン戦争 デヴィッド・ニコルPhD・著/アンガス・マックブライド・彩色画/佐藤俊之・訳

 ローマが去ってからヘースティングスの勝利によってノルマン人の支配が訪れるまでの5〜11世紀間のブリテン島とアイルランドの軍事史を武装を中心に描いた本。
 古代ローマの遺産やケルトやアングロ・サクソン、デーン人の文化が一体となって織りなされた複雑な歴史を垣間見ることができた。年表を追っているとケルト系のストラスクライドの派手な動きに手に汗握った。そんな国も最終的にはアイルランド人が東への入植をして創ったスコットランドに併合されていくわけで、イギリスの歴史は本当に複雑だ。
 他にもマーシアやグウィネズ、ノーサンブリアなど、やたら琴線に触れる名称の王国が目白押しで、彼らの勢力争いをもっと詳しく知りたくなった。

 全体の流れを見ているとアングロ・サクソン人はどうも悪役然とした目で見られてしまう損な立場にいるなぁ。ヴィンランド・サガを読んだ影響から北方人がやってきてからの展開に強く興味をそそられた。

 島の内部が複雑な領土に別れて激しく争っている状況は、日本の戦国時代を彷彿とさせなくもないのだが、大きく異なるのは数度にわたり大陸からの強い影響を受けていることだろう。
 まずブリテン人に残されたローマの文化からしてそうだし、アングロ・サクソン人やスカンジナビア人の侵略、そして融合などはイギリスの地域性を感じさせる。
 同時にこれらの歴史によってイギリスの地域性が形成されていったともいえるのだろう。

アーサーとアングロサクソン戦争 (オスプレイ・メンアットアームズ・シリーズ)
アーサーとアングロサクソン戦争 (オスプレイ・メンアットアームズ・シリーズ)
カテゴリ:歴史 | 14:35 | comments(0) | trackbacks(0)

歴史群像アーカイブvol.13 戦国合戦録 信長戦記

 織田信長の生涯にわたる合戦の数々を収録したムック。たくさんの戦線をもっていた信長のこと網羅するまではとてもいかないけれど、彼の戦略を感覚的につかむにはいいまとまりかたをしていた。

 尾張統一戦の頃から内戦作戦による各個撃破の達人で――桶狭間だって戦術的に各個撃破といえる――勝てない戦いを見切るのに敏。そんな特性が際立っている。
 織田家はたとえ包囲網を構築されて窮地に立たされたとしても、一元的に支配した領域からもっとも重要な戦線に兵力を集中することができる。逆に信長と戦う側は、寄り合い所帯の悲しさで外線作戦の徹底に失敗ばかりしていた。
 織田家と徳川家の同盟が、信長に立ち向かった人々の同盟にくらべても強固な点も大きいだろう。それだけ力の差があったとも言えるかもしれない。

 全体を振り返ってみると、やはり武田信玄が包囲網にくわわったときが信長にとって最も危ない時期だったと意識された。
 勝頼も相当のやり手だが、それ以上の技の持ち主がよどみなく攻め寄せて来るのだ。はたして信玄が生きていたら――でも、信長(と家康)なら何とかしてしまった気がするなぁ。そんな印象を抱いてしまうことこそ天下人の証明なのかもしれない。

 締めの記事が大野信長執筆とは捻りが効いている。タイトルは織田信長戦記にしておくべきだったな!


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カテゴリ:歴史 | 13:16 | comments(0) | trackbacks(0)
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