シャーロック・ホームズの決闘 伊吹秀明
2010.08.31 Tuesday | by sanasen
モリアーティ教授との戦いでホームズの命を救った謎の武術「バリツ」を軸に展開されるホームズのパロディ作品。
「彼らが生きていた時代」のイギリス社会の雰囲気を見事につかみ、同時代人を巧みに配置して興味深い5編をつくっている。
やはりいちばんの見所といえるのは、バリツを使ったホームズの格闘シーンで、それまでの推理からちゃんと繋がりつつも、激しい肉体技の応酬をみせてくれた。観戦者が医者であるワトソン博士であることも、格闘描写を緊迫したものにするのに一役買っていたと思う。
医者を傍観者にした原作の炯眼を、繰り返し見せつけられた気分になる。
登場人物として大脱出王のフーディーニやドーバー海峡の向こうのあの人物も出てくるのだが、個人的にいちばん興味深いと思った話は盛んだった古生物学にからんだ一編「ピルトダウンの怪人」だった。ネタにされている事件にも聞き覚えがあり、日本における神の右手事件も連想させるものがある。
そして、負けたらただじゃ済まない相手だけに異「種」格闘戦が手に汗を握らせた。最後の話は「あんたら勝敗をバトルで付けていいの?」とついつい突っ込んでしまうところがあり、熱戦でありながら、どこか滑稽な雰囲気が漂ってしまっている。
パロディなのだから、ギャグに振れるのは至って自然なことか……。
伊吹秀明作品感想記事一覧
シャーロック・ホームズの決闘
「彼らが生きていた時代」のイギリス社会の雰囲気を見事につかみ、同時代人を巧みに配置して興味深い5編をつくっている。
やはりいちばんの見所といえるのは、バリツを使ったホームズの格闘シーンで、それまでの推理からちゃんと繋がりつつも、激しい肉体技の応酬をみせてくれた。観戦者が医者であるワトソン博士であることも、格闘描写を緊迫したものにするのに一役買っていたと思う。
医者を傍観者にした原作の炯眼を、繰り返し見せつけられた気分になる。
登場人物として大脱出王のフーディーニやドーバー海峡の向こうのあの人物も出てくるのだが、個人的にいちばん興味深いと思った話は盛んだった古生物学にからんだ一編「ピルトダウンの怪人」だった。ネタにされている事件にも聞き覚えがあり、日本における神の右手事件も連想させるものがある。
そして、負けたらただじゃ済まない相手だけに異「種」格闘戦が手に汗を握らせた。最後の話は「あんたら勝敗をバトルで付けていいの?」とついつい突っ込んでしまうところがあり、熱戦でありながら、どこか滑稽な雰囲気が漂ってしまっている。
パロディなのだから、ギャグに振れるのは至って自然なことか……。
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シャーロック・ホームズの決闘