月刊ニュートン2011年7月号

NGK SCIENCE SITE
 わざわざハスの葉っぱの形に油を塗るとはシャレが効いている。せっかく書かれた蛇の絵が破かれてしまったかと思うと、ちょっともったいない気がした。油紙は明かりとりにも使われていたはず。

SIENCE SENSOR
 ワイン残りかす:作業場の話からそれなりに機能的な雰囲気をたたえているところが流石は人類だと思った。
 “手”のつくりわけ:有機化学でお馴染みの右手左手の話。違いで毒になるやつまでいるとは、本当に生命は、微妙なバランスの上に成り立っている。
 iPS細胞の欠陥:さらに機能の高いiPS細胞が作られるようになるのだろうか。現行の欠陥にどれだけ問題があるのか、説明されていないので凄さが分かりにくかった。
 地下へ消えた大気:地下へ消えた分と、宇宙へ消えた分、その見積もりは火星の過去と未来を考える上で非常に重要だ。
 遺伝子を失い進化?:脳容積の増加をおさえる遺伝子があったのは、肉体のバランス上は不利だからかな。
 多言語社会のゆくえ:いままでのシミュレーションはバイリンガルを考慮していなかったとは――不備がありすぎだろう。そうと知りつつも複雑でやれなかったのだろうが。
 暖流で冷える:局地気象は奥が深い。北アメリカ大陸やユーラシア大陸の北東部にくらべると、南半球は平和だ。

地球以外にも地震はある?
 月の地震は心配ないと説明されているけれど、生命維持が繊細なバランスのもとに成り立っていることを考えれば、完全に安心はできない。火星はともかく、金星は火山性の地震があるだろうな。ガリレオ衛星については言うに及ばず。

浜岡原発が危険視される理由は?
 南海と東南海が時間差で起きて津波が増幅される過程はいくらなんでもレアケースに思われる。しかし、想定しないわけにはいかない雰囲気になっているのが現状だ。
 津波予想から0〜1mと考えられている浜名湖の中に建てればいいのにとついつい妄想してしまうけど、人口密集地の問題や地盤の問題、湖水環境に与える影響の問題は大きい。

きちんと知りたい原発と放射能
 それぞれに状況の異なる4基の原発が同時に問題を起こしているから厄介だ。部外者でも対応を考えるだけで頭が痛くなってくる。まぁ、5,6号炉が大人しくしてくれていて、まだ良かったと自分を慰めるしかない。
 避難区域でも南相馬町の海岸沿いなどは、割と汚染が少ないな。汚染の様子から、事故発生時の風向きがなんとなくわかる。
 ガラス固化で数万年保存は、記録がなくなった時にひょっこり地上に現れてきそうで怖い。子孫への凄まじい負の遺産だ。

震災後も懸念される大地震
 アウターライズ地震という用語をはじめて聞いた。変なタイミングで起こって被害を拡大しないことを祈るばかりだ。

X線で見た、超高温で輝く宇宙
 わりと解像度の低い画像があって、懐かしい気分にさせられた。芸術的な効果ではやはり可視光が最強か。

クジラの谷
 化石の野外展示は日本人にはできない発想だ。エジプトの環境がまったく違うことを意識せざるを得ない。あわせて観察できる奇岩地形など、そぞろに歩いてみたい気持ちになった。

テクノロジー・イラストレイティッド 放射線測定器サーベイメーター
 こんなところにまで原発事故の影響が……圧倒的な流れに、基礎的なものがどこかへ押しやられてしまいそうで心配になる。注目される科学だけ、ひたすら取り上げる方針は正しいのだろうか。

パレオントグラフィ 古生代を代表する節足動物
 三葉虫のいろいろな種類が紹介されている。見慣れた形状から、宇宙人的な遊泳種や禍々しい底生種まで、バリエーションに富んでいて、楽しかった。

ヒマワリで放射性物質を吸収
 もったいないけど吸収させるだけで水と二酸化炭素に分解させるようだ。種からバイオマスエネルギーを得られないかと思ってしまう。相手は放射能なのだから変に色気を出すよりも一つの目的に絞った方が賢明か。

邪馬台国の最有力地で新たな大型建物跡
 昔の天皇は代替わりするたびに新しい王宮を建てていたとは――別の「神」と考えた場合、同じ「神殿」を使い続ける方が違和感があるかもしれない。邪馬台国とヤマトの繋ぎ目がおぼろげながら見えてきた。

STAR-WATCHING
 ヘルクレス座の紹介。やはりM13のイメージが強い。星ごよみにある二つの流星群が気になったけど、両方ともあまり期待はできないようだ。

Newton (ニュートン) 2011年 07月号 [雑誌]
Newton (ニュートン) 2011年 07月号 [雑誌]
カテゴリ:科学全般 | 00:20 | comments(0) | trackbacks(0)

僕は友達が少ない6巻 平坂読

 うがー。残念は残念でも夜空の残念は意味が違ってきとるんじゃー。あほー!うんこうんこーっ!!

 絶叫してしまうほど不遇。残念。
 伝家の宝刀、幼馴染設定の刃を抜いたにも関わらず、終盤には星奈のいきおいに呑まれてしまっている夜空の扱いに涙せざるをえない。永夜市のデートもけっきょく星奈がかっさらっているし、恥じらいの可愛さを読者相手に魅せても意味ないんじゃ、ぼけー。
 最初に電話を掛けたのが、彼女じゃなかった点がせめてもの慰めか……。

 ゲームや随所での反応をみると、小鷹はエロスに興味がないわけではない。むしろ彼女を作ることよりも興味があるように伺える。
 彼女の方は友達より後でいいと言っているから――理科のツッコミもまんざら冗談に思えなくなってきた。さすがにそれはないにしても、小鷹の友達優先主義によって、最初に近付いたヒロインが憂き目に遭う可能性は否定できない。
 一番目が友達で、二番目が恋人になるならば、ハーレム世界の膠着状態は永遠に続く。急がば回れで、小鷹に男の友達を作ってやろうと、骨を折るヒロインこそが勝者か……彼女放置で男の友情をたくましくしていそうだなぁ。ハァハァ――できる理科が最も有利かもしれない。
 星奈にはいくらでも下僕を提供できるアドバンテージがあるけれど、人工的な友情を押し付けられるなら、理科の作ったAIとコンゴトモヨロシクやった方がマシか。

 気がつけば妹戦線も苛烈を極め、マリアに続いて、ケイトも妹として名乗りをあげた、シスターだけに。小鳩の拗ねかたが浮気に怒る妻みたいで、カワイイ。他の残念なヒロインはともかく、残念なシスターのケイトとお近づきになれるのは本気で羨ましかった。
 一緒にテレビをみるくだりなど、あっさり家族になっている。絡め手からマリアと小鳩を疑似娘にした夫婦関係を築きに行くとは恐ろしいシスターだ(食事中のうんこ連呼も矯正できないのは無能だが)!
 小鳩を懐かせることに成功すれば、ケイトの一発逆転勝利もありますよ!と言いたいところだが、彼女には星奈への遠慮があるらしい。
 星奈を含めて登場人物に「大人の決めた関係なんかに負けるな」と声を大にして叫びたい。型に嵌らない彼らだけの人間関係を創ってほしいのだ。


僕は友達が少ない1巻感想
僕は友達が少ない2巻感想
僕は友達が少ない3巻感想
僕は友達が少ない4巻感想
僕は友達が少ない5巻感想
僕は友達が少ない人生

僕は友達が少ない 6 (MF文庫 J)
僕は友達が少ない 6 (MF文庫 J)
カテゴリ:文学 | 23:10 | comments(0) | trackbacks(0)

図説合戦地図で読む 三国志の全貌 坂口和澄

 三国志における約50の合戦を地図で紹介する本。演義と正史を分離した記述はよく整理されていて、史実を見極めやすい形になっている。
 地図も理解を助けてくれるので、三国関係の創作物を読むときに、実際のところを確認するのに良さそうだ。

 ただ、地図はあくまでも地図であって、戦闘の実相を伝える絵や図に乏しいのは残念に思う。城の堅固さなど、記述を元にした想像図でもいいので、描いてほしくなる。
 まぁ、薄めの本がすべてを伝えられるはずもないわけで、どっちつかずになるよりは戦略面をきっちり描くことに専念する方が正しいのだろう。


 北伐の地図をみていると、漢中を制圧した蜀が、魏から西涼を切り離しやすい状況にあったことが分かる――異民族の存在も常に考慮しなければならないが。
 ただ、うまく関中までを収めても、董卓や韓遂たちが荒らしに荒らした土地の力がどこまで期待できたか……高祖とは似て異なる立場になったことが想像できる。やっぱり、荊州を押さえておくことは大事なのだった。

 そして、魏から呉への何次にもおよぶ攻撃は、長江を超えて何かをすることの無謀さを印象づける。江南の地を征服するには、まず上流を押さえて川を下る形で攻めること。晋による侵攻もその答えを出していた。

関連記事
戦略戦術兵器事典1〜古代中国編
三国志戦略クロニクル
三国志 合戦データファイル

図説 合戦地図で読む 三国志の全貌
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カテゴリ:歴史 | 10:25 | comments(0) | trackbacks(0)

月刊ニュートン2011年6月号

NGK SCIENCE SITE
 実験のチープさと音楽プレイヤーの高級感が釣り合わない……。磁場は生活に役立ちまくりである。

SIENCE SENSOR
 火山湖が出すCO2量は?:足し合わせると結構バカにならない。でも、人類と比べれば笑ってしまうほど少ないという。
 混雑した惑星系:芋を洗うような状態である。立派なガス惑星がこんなことになるとは、イメージを損ねるなぁ。
 火星バーチャル旅行:まさに耐久レース。それでも、いざという時にはすぐに助けてもらえる安心感が心理に与える影響は大きかろう。
 世界最古級の“義足”:見た目がかなりリアルだ。この時代に糖尿病になる人だから、地位は相当高かったのだろうな。

東北地方太平洋沖地震詳報
 高知県の津波の高さがけっこう大きなものになっている点に驚いた。実際に被害も生じている。逆を考えれば東南海地震が起きたときに東日本も安心はしていられまい。日本海側は流石に平穏だ。東北六県で秋田県のみは死者を出さずに済んでいる。東京が離れているわりに死者が多いのは、人口が多いだけ被害が発生する確率もあがるせいか。

超巨大地震はこうしておきた
 マリアナ型とチリ型の知識はあった。こうも価値観をひっくり返されると、東海地震は単独で起きないとも言いにくくなる。さりとて、対策の資源を集中すべき地域はあるはずなのだが、冷静にそれを見極められるかどうか。津波のイラストが分かりやすかった。福島第一原発関連で「わかっていない」の文字が踊ると、ついつい何かあるのではと勘繰ってしまう癖がついた。

徹底分析福島第一原発事故
 非常にキツイが、キツイからこそ正視することで備えられるようにしなければ。
 この事故が起こった後に映画「ゴジラ」を観たら、地震前とは違う感想を抱きそうだ。いちぶの原発が問題を起こすと、他の原発の運営にも大きな影響がでる。このリスクも、もっと真剣に考慮されるべきだったと思う。

次にひかえる超巨大地震
 すさまじく不安を煽ってくれる記事。大阪の上町断層は危険すぎる。もともとの地盤が悪い上に、建物の密集が凄いから、こういう計算になってしまうのだろう。東京直下型地震の推定死者数が意外と少ない。火山噴火の危険など、システム的な脆弱性は半端ではないが――いざというときの機能移転先はしっかり決めておいてほしいな。

STAR-WATCHING
 最後に星の世界に心を逃がすことができた。ずっとカタストロフィの話では滅入ってしまう。星空が変わらずあることはありがたい。もっとも、至近にいけば核融合爆発の連続する場所でもある。うみへび座を追っていると、必然的にからす座に目を奪われることになりそうだ。

Newton (ニュートン) 2011年 06月号 [雑誌]
Newton (ニュートン) 2011年 06月号 [雑誌]
カテゴリ:科学全般 | 11:03 | comments(0) | trackbacks(0)

あとに残された人へ 1000の風

 有名な「1000の風」の詩を、風を感じさせる写真と共に送る本。
 人の命が世界を循環して、どこにでも存在する状態に変えてしまうことを意識せざるをえない。実に心強く、温まる事実である――さすがに夜空に輝く星になるにはちょっと時間が掛かるけど。

 この詩を読んでいると思い出すのは、EDEN It's an Endless World!で言われていた「人は特別な墓をつくり自然に還らないことで自分たちが特別だと思いたがっている」という主旨のセリフだ。ちょうど、この詩の対極にある。
 とはいえ、火葬されれば燃える成分は大気に混ざることになるわけで――土葬も時間は掛かるけど、微生物の働きでだいたい同じ。
 1000の風になるのに支障はない。

1000の風―あとに残された人へ (ポケット・オラクル・シリーズ)
1000の風―あとに残された人へ (ポケット・オラクル・シリーズ)
カテゴリ:写真・イラスト集 | 00:09 | comments(0) | trackbacks(0)

豊橋自然史博物館 キラキラ水晶展パンフレット

 鉱物の中でも水晶だけにこだわった展示のパンフレット。目玉は山梨大学の水晶館から貸し出された展示品とのこと。おかげで明治時代の工芸品が多く出てきて新鮮だった。当時は極端に高くなかったのだろうが、今の目から見れば凄く希少で凄く欲しくなる。水晶のウサギが可愛い。

 山梨の水晶産業そのものは、衰退傾向に歯止めが掛からない現状にあるようで粛然とさせられた。いっそ国産水晶・国内加工に活路を見いだせないものか――大きな水晶が安定して手に入らないし、水源保護のために採掘が禁止された経緯があるから難しそうだ。

 山梨県以外では日本三大ペグマタイトと、豊橋の博物館だけに愛知県の水晶が取り上げられていた。茨城県真壁のペグマタイトも凄いよ。ただ「水晶」となれば、やっぱり三大ペグマタイトに落ち着くのかな。
 愛知県瀬戸市の丸藤鉱山と大学鉱山は初耳の産地だったので、興味深く読ませてもらった。実際、自分に行く機会が巡ってくるかはともかく……。水晶だけではなく産地の露頭写真を多く載せてくれているところも良かった。

鉱物関連記事一覧
カテゴリ:地学 | 22:22 | comments(0) | trackbacks(0)

異戦国志13〜天下一統 仲路さとる

 政宗おそろしい子!
 まさかのお家乗っ取りENDに唖然として声もない。豊臣家が繰り広げた激しい合戦はいったいなんだったのか……搦め手から徳川政権を攻略されると、諸行無常の思いが込み上げてくる。
 松平忠輝は、策に乗るフリをして、最後に将軍職をいただけば良かったのになぁ。大久保長安の件など、将軍になってしまえば何とでもなる。彼にはいまひとつ天下人への欲が足りなかったのかもしれない。
 彼と政宗の姫との間に子供があれば養子の条件を満たしていた気がするのだが、そこには触れて語られず。おそらくいなかったのだろう。

 徳川家のために粉骨砕身して、汚れ仕事さて手を染めてきた本多正純にはとても残念な結果になったなぁ。
 終わってみて思えば、この作品の正純は結構好きだった。若者らしいギラギラしたところが、ポジティブに捉えられた。すべては忠誠心のなせる業だと、伝わってきたおかげだろう。

 豊臣家の滅亡については、終わってみればなるべくしてなった結果としか……淀殿の心証破壊能力は異常だ。
 加藤清正をはじめとする多くの武将が豊臣家の花道を飾ってくれた。それだけで有難いことだ。秀吉が恨みを買う真似をする前に死んだからなぁ。そう考えた場合、家康の調略が効き過ぎにも思える。大量の謀臣を集めた甲斐は確かにあった。
 しかし、その一人を御しきれなかったために、最後は徳川家も天下人の座から蹴り出されることになるのだから、因果なものである。

仲路さとる作品感想記事一覧

天下一統―異戦国志〈13〉 (学研M文庫)
天下一統―異戦国志〈13〉 (学研M文庫)
カテゴリ:時代・歴史小説 | 21:25 | comments(0) | trackbacks(0)

異戦国志12〜将星乱舞 仲路さとる

 第二次関ヶ原の合戦は、福島正則の戦線離脱と、藤堂高虎の裏切りによって惨憺たる結果に終わる。石田三成は諦めれても、織田秀信の死は諦めきれないものがある。たまには彼が天下人になる話が読んでみたいものだ。秀頼ほど補正に恵まれていないだけに、そう思ってしまうのだった。
 大勢力に挟まれる大阪方の位置も悪かった。それでも、織田信雄の勢力を削りとって少しずつ領地を広げてはいたのだが、家康の拡大ペースには及ぶべくもなく、緩衝地帯のリスクばかりが大きかった。
 勢力図で信雄の部分まで、家康の色になっていたのは微苦笑ものだ。臣従する形になったのだから、分からぬでもないが。

 織田家の勢力が一掃されてからは、豊臣家が最後の力を振り絞った抵抗にでる。一度は引退を余儀なくされた黒田官兵衛を担ぎ出して、起死回生をうかがう。
 征夷大将軍になった徳川家と、関白になった豊臣家の、法的解釈を巡る議論がうんざりするほど繰り広げられる。おそらく本人たちもうんざりしていたことであろう。

 露になる黒田官兵衛の天下への野心は、似たものであった真田昌幸が夢をはたせず倒れたことを思うと……。何度もあった窮地を潜り抜けて最終決戦まで大地に立っている家康のしぶとさには、改めて畏敬の念を覚えるのであった。
 ヤス、お前がナンバーワンだ。

仲路さとる作品感想記事一覧

将星乱舞―異戦国志〈12〉 (学研M文庫)
将星乱舞―異戦国志〈12〉 (学研M文庫)
カテゴリ:時代・歴史小説 | 21:25 | comments(0) | trackbacks(0)

異戦国志11〜旌旗散ず 仲路さとる

 徳川家康の手元に固まっていく天下。戦力的に余裕の生まれた家康は上杉領への進撃を決意し、越後を助けるために大阪方の織田家と、豊臣家も動くことになる。
 それはまるで関ヶ原の合戦の再現。
 しかし、大きく違うのは石田三成が正式な総大将になってしまっていることだ……毛利輝元じゃいかんのか?この世界のテルは結構できる男なのにもったいない。最初の関ヶ原でも普通に戦っていたのだし。
 宇喜多秀家でも、織田秀信でもいい。淀殿の一方的な信頼があるといっても石田三成の総大将は無理筋すぎると感じた。

 ともかく、その効果は絶大で、徐々に石田三成への不満を募らせていた諸将を怪しい方向に走らせる結果になってしまう。
 淀殿はキチガイだし、藤堂高虎は陰険だし、読んでいて鬱屈の溜まる展開だった。鮭様と文化財破壊神の会話みたいに和気藹々とできないのか、貴様らは!

 ついでに高台院の暗躍もあって福島正則が戦線離脱。第二次関ヶ原の形勢は徳川有利に傾いていく。
 この苦境を凌いでみせたら三成は大したものだが――窮地に総攻撃を命じた勘のよさだけでも褒められる――その後も苦労が続くであろうことを想像すると不憫でならない。

仲路さとる作品感想記事一覧

旌旗散ず―異戦国志〈11〉 (学研M文庫)
旌旗散ず―異戦国志〈11〉 (学研M文庫)
カテゴリ:時代・歴史小説 | 21:24 | comments(0) | trackbacks(0)

異戦国志10〜争覇関ヶ原 仲路さとる

 徳川家康を最も恐れさせた男、豊臣小一郎秀長ついに散る。
 関ヶ原の合戦で、徳川軍を撤退に追い込むまでが、彼の命数だった……しかし、よくぞ、ここまで秀吉亡き後の豊臣家を支えてきたものだ。兄の後を弟が継ぐことに、それほど不自然はないのだが、とことん裏方に徹していた秀長だけに関ヶ原で大将をつとめる舞台が晴れ晴れしいものに思われた。
 それもこれも秀頼を出陣させない淀殿のおかげである――彼女こそ家康最大の味方だ。三成に彼女だけ置いてくれば良かったと言う訳にもいかないが。

 10巻の頂点となる関ヶ原の合戦は、決着の灰色具合が、史実でこうなると予想されていたものに近い感じがした。まさか地震をもってくるとは思いもよらず。
 けっきょく天下の帰趨が定まることはなく、これからも長い戦いが続けられていく。
 しかし、秀長が病死した影響はあまりにも大きく、西軍に家康の向こうをはる人材は黒田官兵衛しか残っていない状態である。君主としての器なら織田秀信も相当のものとして描かれているが、真田幸村では謀臣としての経験がまだまだ不足している。豊臣家の石田三成も同様であろう。
 天下人、家康の要素を抜きにしても、人材層の厚さで苦しくなっていく西軍である。織田信雄が人材を失っていくことには同情しないが。

 各部隊をみると、最初から最後まで激闘と戦い続けた井伊直政隊の粘り強さが超人的だった。赤備えは伊達じゃない。鳥居元忠も関ヶ原を伏見城の代わりにして華々しく散っている。
 関ヶ原そのものには参戦していないけど、いまだに越中で粘っている佐々成政もタフである。歴史改変の恩恵を一番こうむっているのは彼だったりするのかもしれない。結末が訪れてみなければ分からない部分もあるけれど。

仲路さとる作品感想記事一覧

争覇関ヶ原―異戦国志〈10〉 (学研M文庫)
争覇関ヶ原―異戦国志〈10〉 (学研M文庫)
カテゴリ:時代・歴史小説 | 21:21 | comments(0) | trackbacks(0)
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