愛知の山城ベスト50を歩く 愛知中世城郭研究会・中井均

 三英傑を輩出した愛知県にある50の山城と17の平城の歴史と構造、見学方法を記載したガイドブック。
 城を県内にまんべんなく割り振っているので、愛知県民なら一つは近隣の城を見つけることができるであろう。

 織田・松平・武田・今川以外にも県内の中小勢力の歴史に関わる城も多く、三英傑の膝元に隠れていた人々の存在や歴史に目を向けられている点も興味深かった。
 こうして見ると、戸田氏や水野氏はかなり目立っている方である。続いて菅沼・奥平かな?

 全体的に開発が進んでいる愛知県内だからか、アクセスが最も難しい星三つに分類されている城は少なかったが、険しい山城に挑戦するときはGPSと地形図をもっていった方がよさそうだ。
 高さ30メートル程度でも山城に分類される城がある一方で、85mある犬山城が平城扱いになっている点が気になった。実際にそれぞれを踏査してみれば、理由がわかるのだろうか。
 おそらく何に防御力を求めているかが重要なのだと思うが。

愛知の山城ベスト50を歩く
愛知の山城ベスト50を歩く
カテゴリ:歴史 | 00:03 | comments(0) | trackbacks(0)

のうりん2巻 白鳥士郎

 わけがわからないよ・・・

 ハーレムものから大きく外れているラノベとはいえ、ここまで衝撃的な寝取られを見せられることになるとは、思いもよらなんだ。
 まさか三角関係をこんな風に動かしてくるとはねぇ。効率的で上手く転べは後始末は良さそうだが、ラストに持ってこられると3巻が出るまでがつらい。
 あまりの衝撃に耕作が寝取られ趣味に目覚めないことを祈る。田茂農林の委員長にしては脚フェチの変態性は物足りないからな。もっと強烈な性癖を身につければ耕作も晴れて6人目の四天農になれるはずだ!

 冒頭の手紙が過去ではなく未来のものに見えたので、それが避けられた点はよかった。1巻最後で農がぼやいていたのは、こういうわけだったのかと伏線の解消には膝を打たされた。王様ゲームで自分の名前を呼び捨てろと命令するわけである。
 しかし、あっさり農に転んでしまう林檎も林檎だが、農も好意に答えすぎではないか。
 耕作はあくまでも偶像の草壁ゆかとして林檎を見てきたが、農は最初から一人の女の子として林檎を見ることができていた。それが待遇の大差を生んでしまったのかもしれない。
 継の語りの通り林檎が耕作に惹かれているのなら、最大のライバルは中沢農ではなく、草壁ゆかになるのかもしれない。
 農業を通じて触れ合うことで、耕作も林檎の実像を正面から受け止められるようになっていると思うがーーまだ多少の時間が掛かりそうだ。
 それにしても主人公とメインヒロインが同性としか、ちゅっちゅしていないラノベってどうなのよ?

 2巻ではカラー口絵を占拠した四天農が大暴れ。登場人物の幅が広がると同時に、彼らのチート変態っぷりのせいで農林高校のリアリティは後退していた。
 そんな不満もあるが、マネー金上は本当にかっこよかった。ローズ花園とバイオ鈴木には本当におとなしくしてほしい。ウッドマンは本当にどうでもいい。

 最後に白絹病ではじめての大豆畑が台無しになって落ち込む林檎に耕作がした語りがすごかった。高校2年生で、ここまで考えているとは。農業は人を哲学者にするのか?
 少なくとも耕作は常に考えて作業している。農業を通じて大地とコミュニケイトしているんだと悟っていれば、組織の大ボスにだってなれるな。
 そのまま悟りを恋愛にも広げて、ダブルヒロインダブル寝取られにもめげない雑草のごとき強さを身につけてくれ。

林檎に「耕作って雑草みたい……抜いても抜いても逞しい」と言われるほどに!

のうりん1巻感想

のうりん 2 (GA文庫)
のうりん 2 (GA文庫)
カテゴリ:文学 | 00:22 | comments(0) | trackbacks(0)

生命の湖 琵琶湖をさぐる 滋賀県立琵琶湖博物館

 あらゆる観点から琵琶湖をしゃぶりつくす。琵琶湖にテーマを絞った本。様々な研究分野のトピックを一度に読むことができて、退屈とは無縁だった。
 多くの研究分野で共通して分断と地域化が取り上げられている点が興味深い。琵琶湖それ自体がひとつの孤立した環境である上に、地形的な障壁ともなっていることが印象付けられた。位置は激しく変わっているが、400万年の歴史をもつ「古代湖」であることも琵琶湖の重要な特徴である。

 ただし、貴重な生物が多く棲息するにも関わらず、人間の活動の真っただ中に存在しているから心配の種が尽きなかった。身近に貴重な環境を置くことで、易しく自然に親しむことができる点では強みでもあるのだが……琵琶湖での成果が全国に広がっていくことを期待したい。

生命の湖 琵琶湖をさぐる
生命の湖 琵琶湖をさぐる
カテゴリ:科学全般 | 12:31 | comments(0) | trackbacks(0)

ナポレオンの戦役 ローラン・ジョフラン/渡辺格

 これは小説である。

 あとがきによれば50あるとされるナポレオンの戦役のうち、8(+2)の戦役をガリア戦記を彷彿とさせる力強く美しい文体で活写した名著。巻末にひとまとめにされている戦況図の説得力もあって、作者の語ることが唯一の歴史的真実であるかのように思えてくる。
 その危険性に身をすくめつつも最後まで貪るように読まざるをえなかった。

 ナポレオンを内政好きで外征嫌いの支配者として描いている点や、マレンゴでは致命的な失策を犯していたとしている点など、フランス一の英雄へのイメージを揺さぶる力も持っていた。ピラミッドの戦いなど、描写の通りなら中の下以上の将軍なら誰でも勝てる戦いにみえる。歩兵方陣の凄まじさには、何度も歴史を変える力があったようだ。

 幻滅させられる描写もあったにも関わらず――ケレルマンが可哀想だ――最終的にワーテルローでナポレオンを応援したい気持ちになってしまったのは、極めて近い視点からナポレオンの戦いを追っていたことで彼に対する“戦友意識”が芽生えてしまったからか。

 負傷兵の運命など、戦闘描写に対する知識の挿入が巧みで、効果的に臨場感を高めてくれていた。ナポレオン時代に夢中になる人がいるわけだと納得できる作品だった。


 あと、犬関係のフランス語の本ばかりを翻訳している訳者の経歴に笑った。

ナポレオンの戦役
ナポレオンの戦役
カテゴリ:歴史 | 23:38 | comments(0) | trackbacks(0)

ホッキョクグマの親子 ノアバート・ロージング

 全身が白くてもこもこした生き物のかわいさは異常!
 しかも、母親にまとわりつく子供のかわいさ付きと来たら、もう!くあー、かわいいな!!
 ホッキョクグマの通常母1頭、子2頭のバランスもいいと思う。

 ホッキョクグマおじさんとまで言われる著者が撮影したホッキョクグマの親子を筆頭とする北極圏に生きる動物の姿が収録された写真集。
 かわいいだけではなく、猛烈な吹雪の中のクマ・キャンプの金網のしがみついているクマなど、緊迫感にあふれる写真もある。

 文章はさらに真面目で、地球温暖化の危機に晒されるホッキョクグマの将来を憂えている。ヒグマと交雑できるらしいから、氷上での狩りを諦める形で残る可能性があるのかな。ホッキョクグマについてはもっとも大きな影響を受けていそうな南の方にあるカナダ、ハドソン湾の事情がいちばん伝えられているために全体的な危機の程度が分からないと感じることがある。
 とはいえ、海氷がなくなったら彼らの生存に致命的な影響がでることは間違いない。彼らができるだけ数を減らさないように、そして氷上に戻っていけるように、できることをしていきたい。

ホッキョクグマの親子
ホッキョクグマの親子
カテゴリ:写真・イラスト集 | 19:40 | comments(0) | trackbacks(0)

惑星気象学入門〜金星に吹く風の謎 松田佳久

 金星のスーパーローテーションの解明を研究の主目的にしてきた著者による太陽系の惑星気象の簡単な説明が読める。
 火星や木星と一緒に語られることで地球の気象も、相対化してみることができるようになる。地球の赤道上空には高緯度地域よりも寒い場所が存在しているという話が興味深かった。第二次世界大戦の戦記物で、南洋の航空戦が描かれているときには念頭においた方がいいかもしれない。

 火星の気象については比較的に研究が良く進んでいて、木星や金星に比べると巨大な謎は少ない印象を受けた。海が存在する状況でも気候が安定しうる件は、テラフォーミングの絡みからも重要である。

 主題となる金星については、温暖化現象とスーパーローテーションの二つの話題がある。地表面が存在しなければ、あるいは地表面まで光が届かなければ温室効果は起きないということを覚えておきたい。
 スーパーローテーション発見以前に予想されていた夜昼間対流は、ホットジュピターの想像で復活しているわけで、実際に行ってみたらやっぱりスーパーローテーションを起こしている可能性もありそうだ。
 スーパーローテーションの原因としては「熱潮汐波」と「子午面循環」の二通りが有力な説として挙げられている。特に熱潮汐波の解説は分かりやすかった――分かりやすい方が正しいとは限らないけど。

 地面との摩擦が、岩体全体の運動量にくらべて極めて小さいと言っても、何十億年のスケールで積算されていくと、影響が無視できなくなったりはしないのであろうか。新しく興味が生まれることがあった。

惑星気象学入門――金星に吹く風の謎 (岩波科学ライブラリー)
惑星気象学入門――金星に吹く風の謎 (岩波科学ライブラリー)
カテゴリ:地学 | 01:25 | comments(0) | trackbacks(0)

関ヶ原疾風伝3〜天下泰平の器 尾山晴紀

 大垣表に兵を残しているため、史実よりも少ない東西両軍が激突する関ヶ原の合戦が繰り広げられる。
 関ヶ原を決戦の地に描く利点は、史実通りの要衝の地であることに加えて、何度も何度も描かれたアイスバーンの決戦場であるため、近隣の住民でなくても戦国時代好きなら地形をおおよそ把握していることにあるかもしれない。
 事実、非常にイメージしやすかった。

 戦い自体は徳川四天王の本多忠勝・井伊直政が良くも悪くも目立ったわりに、榊原康政は史実通りの地味っぷりだったとの感想……もっと大事な連中がいろいろ居る気がするが。
 島津と井伊の因縁は捨てがまりで直政が負傷、のち死亡した史実の未来を関ヶ原前に逆輸入しているかのようだ。直政はどうしてもキツイ役割を与えられやすい気がする。傷を負わない忠勝ではらしくないせいかなぁ。むろん榊原康政は地味だから除外される――鳥居元忠や奥平信昌みたいな籠城戦での華々しい見せ場があればねぇ。

 島津は歴史シミュレーション通りのチート島津だったとして、新鮮な活躍をしていたのが吉川広家だ。懐の深い政治家、外交家のイメージが関ヶ原の合戦で沁みてしまっているが、この作品では思う存分に兵を動かしてくれている。
 あと叱責されつつ仕事をこなしている小野木公郷が妙に愛おしい。フィクションの中の彼では最も活躍しているのではないか?

 ひとつの戦役に焦点を絞り、尾山氏の力強い戦闘描写の密度を徹底的に高めた作品だったが、だからこそ最後は政治の話になった。
 宇喜多・毛利・徳川のトロイカ体制が安定したわけには、八丈島で84歳の大往生を遂げた秀家の長寿が物を言っている。温暖な八丈島だからこその長寿という気もするが、栄養条件と医療体制の向上で気候の厳しさは相殺できるかもしれない。できることなら信之お兄ちゃんには勝ってほしかったですね。天海までとは言わないけれど。

尾山晴紀作品感想記事一覧

関ヶ原疾風伝3: 天下泰平の器 (歴史群像新書)
関ヶ原疾風伝3: 天下泰平の器 (歴史群像新書)
この世界の八丈島は眉目秀麗な人の率がちょっと低下したのかなぁ、なーんてねっ!
カテゴリ:時代・歴史小説 | 21:42 | comments(0) | trackbacks(0)

月刊ニュートン2012年3月号

NGK SCIENCE SITE
 これはお手軽で良いな。夏休みの宿題に使うと怒られそうだが――非常に多くの種類を作って表にまとめるなら、そこそこいけるか。

SIENCE SENSOR
 ベスタと地球の類似点:いわいる分化が進んでいるって奴か。玉ねぎやキャベツをイメージした。地球と似ているなら「ゆで卵」をイメージするべきなのだろうが。
 世界で最も軽い材料:こりゃすごい。しかし、エッフェル塔の温故知新とはね。
 失われた巨大氷惑星:消えた家族!と煽ると怖いな。家出して飛び出した氷惑星坊やが帰ってくることはない……。
 古代の遠洋漁業:4万年も前からマグロを食べていたら舌が肥えてしかたがないのでは?
 山脈を曲げた原因:日本サイズなら海山の沈み込んだ部分が、という論文はあったはず。さらに大きなスケールでも通用するようだ。

探査機ケプラー、地球サイズの惑星を次々に発見
 地上からの追試は厳しい条件だが、それでも多くの惑星を発見している。当たりをつけておけば数年後に確定がでる可能性もあるのだろうな。南半球の高精度ドップラーはスイスチームの機材か。

高い音を「明るい」と感じる理由
 高い声をだす人が明るいことが多いから印象が明るいのではなくて、印象が明るい人になるのは高い声を出すからだったとしたら?暗い方で、そういう効果が働いていたら嫌だな。

太陽から“生還”した彗星
 彗星によるエクストリーム太陽接近。天体たちのエクストリームスポーツは次元がちがーう!

タイムトラベルを科学する
 まぁ、イラストだけでも。超光速ニュートリノの発見?は気になるところである。すでに現実的な未来へのタイムトラベルはSF大作「闇の左手」で駆使されていたな。

体を脅かすウイルスたち
 まったくもって恐ろしい。海外に行く前に任意ワクチンを接種しておこうかな……。

ハッブル宇宙望遠鏡が解き明かす宇宙の新事実
 老いてますます盛んなハッブル宇宙望遠鏡。黄忠のごとき腕前で天体の姿を射止め続けている。若い星の形成を観測するために、可視光が果たせる役割が大きいことを再確認した。

北極圏 オーロラ紀行
 ニューヨークでは一年に数度はオーロラが見えるそうな。羨ましい。ハッブルの写真と続けられるとオーロラが宇宙に繋がっていることが感じられる。97P下側の写真がいいなぁ。
 アラスカやカナダ、北欧の名前があがっていたけど、ロシアもオーロラ観光に力を入れてみてはどうか。

身近で意外な果実の世界
 メロンやスイカが野菜に分類されるという話は聞き覚えがある。言われてみればイチゴも仲間になるのだな。
 カシューナッツの果実の方も食べられることが新鮮な驚きを与えてくれた。苦いイメージが凶悪なゴーヤが熟したときの種子が甘いというのも面白い。イチイは仮種皮はイケるのに種子は毒なのか……怖いが身近な食べ物にも似た例があった気がする。
 一生に一度は食べてみたいと思える果実が目白押しだった。

パレオントグラフィ 海で繁栄した節足動物
 繁栄を続けている水中の節足動物達。ズワイガニのイラストに表情が見える気がした。オストラコーダは、海岸ならどこにでもいる凄い連中だ。

STAR-WATCHING
 カノプーを探す余裕がある生活をしていれば寿命も伸びようというもの――そういうゆとりを作るようにしたい。見よう見ようとしすぎて寒風に体調を崩すのは良くないけど。

Newton (ニュートン) 2012年 03月号 [雑誌]
Newton (ニュートン) 2012年 03月号 [雑誌]
カテゴリ:科学全般 | 00:56 | comments(0) | trackbacks(0)

日本史リブレット 都市平泉の遺産 入間田宣夫

 世界遺産にも登録された奥州藤原氏が造った都市「平泉」の姿を浮き彫りにすることを目指したリブレット。北の京都というおぼろなイメージが払拭され、武士的なありかたや宗教との関係が多いに反映された平泉の姿が脳裏に浮上してきた。

 しかし、ちょっと箱モノ都市っぽい。施設を中心に紹介された影響があるのかもしれないが、そこに住む民衆の生活をイメージさせにくい内容だった。素晴らしい記録が発掘されているだけに――1000年近く前の杉板が書かれた字の読める状態で出てくるなんて凄すぎる――支配階級に視点が偏っていた印象がある。
 まぁ、実際施設のレベルの割に、人口は少なかったのではないか。行政や輸送のために必要な人間は集まってくるけれど、町そのものに産業があるというよりは東北における物資輸送の結節点として栄えたようなので。

 頼朝に奥州藤原氏が滅ぼされたときも自焼されたと思われる館以外は無傷で、むしろ鎌倉殿は都市の保全につとめたことが分かって良かった。その後の失火や兵火で施設が櫛の歯を欠くように失われていったのは、再建するだけの価値を時の施政者が認めなかったせいになろうか。

 日本史リブレットのおかげで、前九年の役や後三年の役にも段々親しみを覚えてきた。修羅の刻 源義経編で、藤原氏と陸奥圓明流に約定が結ばれたのは後三年の役のことなのかなぁ。
 ともかく、清衡は平泉と奥州藤原氏を建設するにあたって、いろいろと魔術的な外交(朝廷工作)を展開していたようだ。案外、朝廷が持つ「華夷思想」のおかげで、絶妙な独立的地位を確保することができたのかもしれない。

都市平泉の遺産 (日本史リブレット)
都市平泉の遺産 (日本史リブレット)
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