薄紅天女 荻原規子

 坂上田村麻呂をはじめとする歴史的偉人たちが現れて、神話時代の最後の輝きを目撃する中世日本のファンタジー。この話に出てくる勾玉こそ後の神器である――のか?

 皇と蝦夷の血を引く若者の宿縁が、重厚につづられている。すさまじい力も、定められた高貴な運命も、人生のレールではなく、ハードルと主人公たちにみなされ乗り越えられていく。物語では不思議なことではないはずなのに、見事と思えてしまうのは、軟弱な話を読み慣れてしまったせいかな。
 既に多くのものに縛られてしまっている皇と、針の穴を通すような苦労をして望みを叶える阿高の対比が興味深い。彼が幸せになることで、皇族たちが少しでも心を癒すことができたなら、これに優る幸いはない。

 物語の舞台が蝦夷の地から長岡京まで広い範囲にわたっていることも印象的で、日本の中にまったく異なる国をみる経験は刺激的だった。
 けっきょく、坂上少将のやったことは蝦夷のためになったのやら……末尾のまとめにかなりの不安を感じた。仲成も最終的には悲しい死を遂げているようだし、ハッピーエンドを確信させてくれるのは非常に出番の遅かったメインヒロイン苑上だけかもしれない。語られないだけで、藤太も千種と仲良く暮らしているんだろうけれど。

荻原規子作品感想記事一覧

薄紅天女 (トクマ・ノベルズ Edge)
薄紅天女 (トクマ・ノベルズ Edge)
カテゴリ:ファンタジー | 21:02 | comments(0) | trackbacks(0)

月刊ニュートン2012年5月号

NGK SCIENCE SITE
 釣りの理屈がわかりにくい。乗せる瞬間にちょっとだけ空気が抜けるのかな。良く読むとシートの反対側に錘をつけて調整すると書いてあるから、そうらしい。

SIENCE SENSOR
 豊富な栄養で成長抑制:栄養を与えすぎた畑はおかしくなる。そういう経験を科学的に証明した記事。
 黒い始祖鳥:構造上の問題で見掛けは二の次だったようだ。飛んで逃げられるなら迷彩の必要は低下するし、黒もそう目立つ色ではない。
 活発な太陽がごみを撃沈:歓迎すべきなのか、他の影響を心配すべきなのか。ただ歓迎する業界の人がいることは確かだ。
 マグマの上昇メカニズム:ダイアモンドが地上に出てきた理由の解説。隕石だの大噴火だの言われていたが、そこまで劇的ではない。それとも結果が劇的な大噴火になるのかな?
 沈没船の積み荷:定説ではワインとオリーブオイルで一回使ったら臭くなるので破棄しているだったが、所詮は定説だったか。ソースの関係か記事の言うようにワイン専用とは思っていなかった。
 ピンぼけで距離測定:もはや同じ目でも別の器官に思えてくる。こういう方法もあるのか。
 消えた火星の海:寿命100万年の海。火星にとっては一瞬だが、人類にとっては魅力的な保持期間だ。
 睡眠で固定される感情:気を付けよう。だが睡眠時間を削っても別の問題が起きそう。とりあえず、ふて寝の長寝は厳禁。
 強風仕様のアホウドリ:風は強すぎても弱すぎてもいけない。環境に翻弄される生物の性を感じる。
 月の磁場はいつ消えた?:案外再加熱するプロセスがあったのかも。地球の潮汐とか無視できるのかな。
 再生医療ついに実現へ:時代はここまで来た。機械の代用の方が向いている利用分野もありそう。そこは使い分けが必要だ。
 貝の構造をまねる:これぞまさにナノテクノロジー。同じ霰石でも生物がつくると物が違うわけだ。
 知能は遺伝?環境?:変な言い訳に使わないように気をつけたい結果。残り4分の3で何とかしてみようじゃないか。

宇宙のお掃除プロジェクト開始
 SF小説の第六大陸でデブリに苦しめられていたことを思い出した。効率の非常に悪い方法だが、まずは一里塚を築いてほしい。

生命の誕生は、海ではないかも?
 母なる海ならぬ母なる温泉と呼ばれる日がいつか来る?温泉から海への進出は流れを下るだけなので問題なさそうだ。
 あと、ムルキジャニアン博士の名前が凄すぎる。

手のひらにN極だけの磁石を
 単純な方法で(計算上は)現れるんだな。実用への道のりは遥かに遠そうだけど夢がある。

世界最小の新種カメレオン
 マッチがスケールの代わりになる時代はいつ終わるのか。そんな脱線したことを考えてしまった。小さくても目に力のあるカメレオンだ。

脳科学がせまる脳と意識
 半盲の研究で人工的に猿の脳を損傷させていることが怖い。研究が盛んになるほど、動物愛護団体から攻撃を受けるリスクも高まる。

ブラックホールって本当にあるの?
 理論上はありえるブラックホールではない物が興味深かった。夢の広がる話である。

灼熱の王者「太陽」ベストショット
 ひのでが大活躍。写真を見た瞬間にひのでのことしか考えなかった。経済に直接かかわってくる観測対象なので、他の研究機関もせっせと衛星を打ち上げているわけだが。

知床の海に生きる
 ナメダンゴがかわいい。泳いでいる姿を動画で見たくなった――ので検索してYOUTUBEで観た。便利な時代だ。実物を肉眼でみたい欲求が生まれにくい点は残念?

ミクロの世界のショーケース
 結晶が風景画をなしている画像がおもしろかった。偏光観察の彩りは楽しいものだ。醤油の結晶が予想外に綺麗。そして、悪魔の仲間にしか見えないミジンコやアブの幼虫……触手つき二枚幼生もカッコいい。創作者にとってミクロはデザインの宝庫だな。

「スマートグリッド」が日本の電力問題を救う?
 コストが上がっては話が進まない。蓄電池の導入などブレイクスルーが必要と感じる部分が多かった。アメリカの東部・西部・テキサス州で送電網が分けられている事情が興味深い。さすがは独自の海軍をもっているテキサス共和国だぜ!

人類のやっかいな相棒「ピロリ菌」
 ピロリ菌から人類の歴史が見えてくることだけはありがたい。若くなるにつれて感染している人間が減っているし、除菌も可能な点は心強い――さっさと保険適応内にして国を上げて除菌した方がトータルの保険料は安くなるんじゃないかな。

血液型の新常識
 フランケン・ふらん8巻を読むときのお供になる。日本人のあるかぎり血液型占いは滅びぬ!何度でも蔓延るさ……おぇっ。

パレオントグラフィ 樹上のサルから地上のヒトへ
 広告にも良く使われる猿から人類への進化画像を連想させるタイトル。さすがにそこまで単純には描かない。プロコンスル(ラテン語で前執政官)って類人猿のネーミングがさらりと凄い。由来まで説明してくれていた。チンパンジーにコンスルってつけたロンドンの動物園が根源か。

身近な“?”の科学【麹/こうじ】
 かもすー!米に花が咲いたような画像が圧巻だ。伝統の力は侮れない。

STAR-WATCHING
 天文関係の部活・サークルに入ると二回目の脱皮くらいにいるカラス座がテーマ。日本から観ると高度が低いことも帆かけ船と言われる原因かな。南の海を滑っているように観えるんだよね。

Newton (ニュートン) 2012年 05月号 [雑誌]
Newton (ニュートン) 2012年 05月号 [雑誌]
カテゴリ:科学全般 | 23:36 | comments(0) | trackbacks(0)

カピバラ 渡辺克仁

 大きな鼻と細めた目、のんびり寝転がる姿が、あくびを誘発してやまないカピバラの写真集。真正面からの写真をみていると鼻の大きさが印象的だ。
 群れで仲良く固まって行動している様子も、胸を締め付けるのだった。

 後半ではカピバラの生態系が一通り紹介されていて、対象を一種に絞っているだけに頭に入りやすかった。
 集団間の行き来があまりないと、遺伝子的に行きつまらないのかな?水中は逃げたりトイレに使ったりするために欠かせない場所だが、逃げ込んだ先でピラニアやワニに襲われることもあるそうで、野生のカピバラは外見からは想像しにくいほど壮絶な生活を送っている。

 著者は自分のカピバラ巡りのために編集したと思しき日本中のカピバラを展示している動物園の情報が実際に彼らを見たくなったときに、とても役立ちそうだ。
 いちばんおもしろかったのが、著者がカピバラにのめり込んでいく様子を記した「軌跡」だったりするのは御愛嬌。

カピバラ
カピバラ
カテゴリ:写真・イラスト集 | 22:56 | comments(0) | trackbacks(0)

俊英 明智光秀【才気迸る霹靂の知将】歴史群像シリーズ戦国セレクション

 明智光秀の霞みがちな実績と、本能寺の変関連について掘り下げた本。
 冒頭の明智光秀に関連する城や地域のカラーイラストに見応えがあって良かった。説明は政略に偏っているので、城の防御能力を気にしだすと物足りないけど。

 個別の記事では山崎の合戦における「山崎の町」が果たした役割を論じたものが興味深い。経済力と政治力をもつ町が戦争に翻弄される存在に甘んじるどころか、歴史すら変えかねない主体をもった存在であったことが分かる。
 いっそ焼き払って阻止線を構築してしまったらと思わないでもないが、それで秀吉の進撃を食い止められても領内がまとまらないだろうなぁ。本能寺の変後に光秀がおかれた戦略的環境はいかにも苦しく、それが本能寺の変が衝動的なものであったと感じてしまう。秀吉の大返しが予想不可能な速さであったことも留意しなければなるまいが。

 後半にはトンデモ系の記事が集まっており、本能寺の変の黒幕説を信頼のおける史料で検証する対談の余韻をぶち壊しにしていた。
 特に光秀=天海説記事の妄想小説っぷりが凶悪で、かえって天海説の説得力を貶めていた。

 浄瑠璃や歌舞伎に描かれた光秀まで行くと素直に面白いんだけどな――現代の荒唐無稽な珍説も同じような扱いを受ける日が来るのかもしれない。

俊英明智光秀―才気迸る霹靂の智将 (歴史群像シリーズ戦国セレクション)
俊英明智光秀―才気迸る霹靂の智将 (歴史群像シリーズ戦国セレクション)
カテゴリ:歴史 | 23:24 | comments(0) | trackbacks(0)

ありのままの自然 平山健

 アメリカ合衆国内にある国立公園の写真集。西部や中西部に国立公園の多くが分布していることが分かる。
 グランドキャニオンやイエローストーンなどの超有名国立公園から、国立公園ではないが名勝地たりえる場所まで少ない紙面で押さえている。

 そのため、ひとつひとつの写真は少なく、不完全燃焼に感じることがあった。実際に行って観てほしいということかもしれない。
 説明文も簡潔でイメージを膨らませてくれるものの、それだけを頼りにできる内容ではない。

 国立公園のカタログと考えて眺めるのが良さそうだ。

ありのままの自然
カテゴリ:写真・イラスト集 | 22:37 | comments(0) | trackbacks(0)

太公望・下 宮城谷昌光

 ついに革命の時は熟した。というか、太公望がせっせとエチレンを掛けて強制的に熟させた!商は流言による信用低下と現実の苛斂誅求が重なって周囲から見放され、周は召とむすんで力をたくわえる。
 太公望のプロパガンダが酷いとはいえ、父親の季歴と息子の伯邑考を殺された姫昌には同情せざるをえず、商王朝は滅びるべき運命にあったという結論に至りがちだ。
 悪名高い妲己が完全に被害者で、その最大の加害者が彼女に仄かな思いを寄せていたはずの太公望である事実は残酷だったと思う。王朝を打ち倒して、復讐を遂げるためには罪のない女性まで犠牲にしなければならないのか……。

 西方人に酒池肉林や炮烙の刑をやらかした商が忌み嫌われた事情には、人身御供をやって古代ローマ人に嫌悪されたカルタゴを思い出してしまった。現実は文化の違いなのに、それを悪に出来てしまえるのは、勝者の価値観が後世に残るから。それだけのことなのである。勝てば官軍。
 とはいえ、多くの異民族の不幸の上に成り立っている商に後世を決めてもらいたかったわけでもない。

 最初は単なる復讐だった自分たちの戦いに大きな「意義」を与えた太公望の勝ちとしておこう。

宮城谷昌光作品感想記事一覧

太公望〈下〉
太公望〈下〉
カテゴリ:時代・歴史小説 | 00:08 | comments(0) | trackbacks(0)

太公望・中 宮城谷昌光

 商王の膝元で国家転覆の計画をたくましくしていく太公望はまさにテロリスト!だが、商王を倒した後のビジョンを育て始めている点が、そんじゃそこらのテロリストとは違う。革命家と呼ぶべきであろう。
 本拠地を構えるようになってからは人脈もぐっと増えて複数の諸侯や首長と交わるようになっている。そんな中バカ養子「子良」のおかげで鬼公との距離が広まってしまった点が惜しまれた。本当にまだ何者でもなかった太公望を見つけ出してくれた鬼公への恩は一生物である。
 他にも太公望は多くの人間から多大な恩を施されている。人間一人で何でもできるわけではなく、超人に思われる太公望にも手足となって働く多くの人間がいた。その事が意識された。

 諸侯の中では妲己の父でもある蘇候が非常に立派な人物として描かれていた。悪名高い妲己の方も受王の寵愛を得られぬ人質の身をなげく弱い女性にすぎない。
 太公望が彼女に一目で恋をしてしまう展開には驚いた。もしかしたら、太公望と受王があっても何か通じ合うものがあったかもしれない。太公望と妲己の邂逅はそんな夢想すらもたらすのであった。

 溜めの中巻では派手は会戦はないものの、太公望が向族を教育して狩りを行わせるシーンは興味深かった。瞬く間に機能的な軍隊をつくりあげた様子は、孫氏が宮女たちを組織した手際に比べても遜色がない。
 見事なものである。
 様々な族が各地に存在していて、商に従ったり逆らったりしている様子はガリア戦記のガリア諸族を連想させた。古代ローマはガリアの外側に強力な策源地をもっていたが、商が周辺諸族に一斉蜂起されれば大海に浮かぶ小舟のごときものになってしまう。
 ここに大差がある。

宮城谷昌光作品感想記事一覧

太公望〈中〉
太公望〈中〉
カテゴリ:時代・歴史小説 | 16:30 | comments(0) | trackbacks(0)

月刊ニュートン2012年4月号

NGK SCIENCE SITE
 変化球を起こすマグヌス効果の実験。Cコースはゴールにたどり着かなくて悲しいな。意識すれば野球の変化球対決シーンが楽しく読めるようになるかもしれない。

SIENCE SENSOR
 第6の指の正体:指のうち一本が向きを変えるよりも元々あった種子骨を応用する方がお手軽。前適応の言葉を覚えておきたい。
 時点の向きを変えた水星:太陽と小惑星にいじられまくっている印象。月との比較も面白そうだ。
 蚕からクモの糸:クモは共食いするから糸の大量生産はできないので蚕を使った……共食いを止めさせる方が難しいらしい。
 伸縮自在のセンサー:視覚だけではなく、触覚も再生医療の対象。信号の繋げ方が気になる。
 ど根性惑星を発見:見出しセンスが凄い。ど根性惑星にはど根性生物が住んでいないかなぁ。地圏の微生物なら?
 新たなHIVワクチン:今世紀中にはHIVも何とかなっている。そう信じられそうになってきた。
 金属になった水素:地下4000キロメートルの圧力。地球で考えれば相当だが、木星で考えれば印象が変わってくる。
 やさしきラット:チョコレートを食べ終わってから何気なく助けるラットはいなかったのか。
 複眼の起源をたどる:最初から不気味なほど完成度が高い。古生物には良くあることだ。
 古代の防虫ベッド:だが臥薪する古代人もいた。
 世界最深の熱水噴出孔:熱水噴出孔周りの生物量はどこまで増えるのかなぁ。
 尾で転倒防止:写真のロボットの車輪が気になる。大学院生の論文がnatureに載っていることが凄い。
 酸に強いネズミ:あいつら、こんな特技も持っていたのか。痛覚がなければ酸火傷が酷くなる可能性もある。そこは注意が必要だ。
 水がつくった火星の石膏:火星の鉱物がミネラルショーに出回る日が生きている内にくるといいなぁ。オポチュニティにはキュリオシティと重なって活動してほしい。

ブラックホールに飲みこまれる天体
 まるで囲まれたガス雲がちっとも見えない。地球質量の3倍じゃあな。

宇宙の法則
 宇宙は宇宙空間ではなく、地球上も含めて宇宙である。だから宇宙の法則は地球上も支配している。それを再確認させてくれる法則が多かった。宇宙空間への距離感が縮まる。

火星の大地を空からめぐる
 至福の時間。やっぱり火星の地形はすばらしい。アレス谷でクレーターとアウトフロー・チャネルの年代関係が「尾」によって判定できるところが興味深かった。キュリオシティの成果にも期待だ。

新説アレクサンドロス大王の東方遠征ルート
 この御時世にイランでフィールドワークとは凄い。欧米の研究者にはやりたくてもできない気がする。亀裂のような谷が文献の記述と一致しているところに感動した。参考図にも使われているように、Google earthの事前調査も威力を発揮しそうだが、最後はやっぱり現地調査にしくはないな。

雪の大地を生きる動物たち
 見ているだけで撮影者が戦った寒さが思われる。かわいい動物たちに遭遇することで報われる想いをされたことだろう。巣穴から顔だけ出しているエゾモモンガの可愛さが凶悪だった。

テクノロジー・イラストレイティッド 船・車・飛行機が立体交差する 東京ゲートブリッジ
 どうせなら電車も交差してくれたらいいのに。そんなことを思ってしまうタイトルだ。トラス構造を名前を知るだけではなく応用できるようになりたい。

身近な“?”の科学【電池】
 ニッケル水素電池は使い切り完全充電。リチウムイオン電池はチョビチョビ充電。これ重要。アルカリ乾電池用の充電器には昔見た覚えがある。今にして思えばクレイジーな代物だったな。

Newton (ニュートン) 2012年 04月号 [雑誌]
Newton (ニュートン) 2012年 04月号 [雑誌]
カテゴリ:科学全般 | 17:22 | comments(0) | trackbacks(0)

のうりん3巻 白鳥士郎

 いきなりマリア様が見てるネタからおっぱじめやがった。更にギャルゴの噂長に生身で匹敵しているヒトリガミは襲ってくるわ、バキの全選手入場ネタはあるわ、バイオテロ鈴木がソードマスターするわ、安心の生産者表示と品質である。だから乳牛コスプレした吉田おっぱいさんの切符先生イラストをペロペロしても大丈夫!問題ない。
 切符先生……そのうち家族会議を通り越して勘当されてしまわないか、心配になってしまうな。あんなにバイオ鈴木の胸を大きく描きおって……あんなのバイオ鈴木じゃない。パイオツ鈴木だッ!!

 パロディ多めで笑えて農業知識が身につく内容はいつも通りながら、どっちも危険な領域に突っ込みだした気がした。
 淫語が巧すぎて引くし、婚前旅行が決定した吉田胡蝶さんの農政批判にはハラハラしてしまう。実家が大地主の彼女に語らせるところもアイロニーがきつかった。
 でも、難しく絡み合った問題だからと解決にしり込みしている時間はもはやあるまい。

 ラブコメの方は林檎ちゃんが正ヒロインの座から蹴落とされかねない勢いで、ステマ幼馴染の攻勢が強まっている。
 耕作と農の地元の反応がおかしすぎるよ……実際にそんなことになっとったら、学校でも問題になるだらー。あれ?もしかして、アラフォーを野放しにしているあの学校ならそうでもない?
 四天農を筆頭とする田茂農林高校の凄まじさに感覚が狂ってきた。やっぱりなんだかんだで王道学園モノだよねー。


 最後のほうで耕作の親父がロクデナシフラグを立てていて怖い。そういえば彼に最初の畑を貸してくれたのは叔父だったな。

のうりん1巻感想
のうりん2巻感想

のうりん 3 (GA文庫)
のうりん 3 (GA文庫)
カテゴリ:文学 | 00:43 | comments(0) | trackbacks(0)

太公望・上 宮城谷昌光

 商王受に一族を襲われ、子供たちたった6人になってしまった太公望が、復讐のため商を倒さんと流浪の旅を始める。商側から殷周革命を描いた「王家の風日と補完しあう関係にある。太公望の諜報組織は、それだけ出されると反則に思えたので、創設から描いてくれると助かる。

 全般的に人の気配が濃厚とは言えず、遊牧の民が多く存在している古代中国の様子が新鮮だった。
 農耕の民が優越しているとは限らず、遊牧を行う民でも中原で活躍している――太公望の見るところ流れは穏やかに遊牧をする羌族の生き方を受け入れてくれない方向に進んでいるとはいえ。
 「悪い羌族」である馬羌族はいたって遊牧民族らしい人の扱いをしていたので、商のような農耕民族が一方的に悪だと言い切れる風でもない。周を味方にするのだから当たり前か。

 馬羌族と鬼公軍の戦闘が上巻では最も印象的だった。
 商王が太公望の一族を襲った時にも似た、機動力を活用して、敵を思った方向に誘導する戦い方をしている。兵が大きく広がるので、完全に敵の動きを読める策士がいた場合は手薄になった本陣を直撃される危険のある戦法だ。
 まぁ、商王も鬼公も圧倒的な兵力差があったからこそ、ああいう作戦を採ったのであって、敵が一飲みにできないほど大きければ、また別の手段を講じるのかもしれないな。

 剣が非常に特別な商王家だけにしか扱えないものとして描写されているところも印象的だった。荘厳なのに中二臭いというか何というか。

宮城谷昌光作品感想記事一覧

太公望〈上〉
太公望〈上〉
カテゴリ:時代・歴史小説 | 08:00 | comments(0) | trackbacks(0)
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