これはゾンビですか?15〜はい、どっちもあたしです 木村心一

 魔力が無尽蔵に必要なら、永久機関をつくればいいじゃない?という無茶苦茶な理屈で、天才魔装少女悪魔男爵ハルナちゃんが一人にして二人力を発揮して大発明をなしとげてしまう。いかにも暴走しそうで、世界が滅びる悲劇につながる気がして怖い。そのまま放っておいても緩慢な滅びに到達しそうではあるけどさ。
 まぁ、いざとなったら無限の属性をもった歩やユーに何とかしてもらおう。
 最初の機動にサクリファイスが必要という問題に関してはセブンスアビス狩りをサクッとサクリファイスしておけば良いんじゃないかと本気で思った。ベー郎、死ぬがいいよ、ベー郎。
 大先生に任せておくと京子を生け贄にしそうで怖い……されても無理のない側面をもっているとはいえ。あのおっぱいがなくなるのは世界の損失だ。

 今回は料理屋で大先生を接待ということで、正面切ってのバトルより接待の多い作品になっている。それでもメガロ行列やオリジナルハルナの修行はあったが……主人公が最強を目指さない路線はちょっと新鮮。拳法を習えば強くなれることを自覚しているのに、まったく興味を示さないのはどうかと思う。大先生は多忙にしてもセラに修行を受けることにして、ついでにセクハラしておけば美味しいのに。あるいはクリス(おっさん状態)と実り多い放課後を。

 ハルナが二人に分裂したときのキャラクターは、オリジナルハルナがなかなか新鮮だった。知ったかぶりだが、引っ込み思案のところが面白かわいい。分裂したままなら歩を落とせそうだったので、他のヒロインも再融合に協力するよね!黒い黒い。
 セラが歩をデートに誘うものの不発したところにツンデレの悲哀を感じた。

 最後にあとがき、今後セラモデルさんの話をする機会は結婚報告だけにしてください。イラッ。
 発売日が4月1日なら自由に解釈できたのに。

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これはゾンビですか?15はい、どっちもあたしです (富士見ファンタジア文庫)
これはゾンビですか?15はい、どっちもあたしです (富士見ファンタジア文庫)
カテゴリ:ファンタジー | 23:42 | comments(0) | trackbacks(0)

古城の風景3〜一向一揆の城 宮城谷昌光

 三河の城巡りと見せかけて半分以上寺巡りだが、最後に出てくる本證寺はどっちでも正しい寺社城郭!遺構が良く残っていて全国的にも貴重な物件である。まだ訪問していないのは不覚。それでいながら水堀を浚った時の生物調査記録を読んだことがあったりする。外側に一部だけ残っている水堀も調査対象になっていたっけ?

 三河といえば松平氏の本拠地だが、どこの馬の骨とも分からない彼らが勢力を広げる前に、根を張っていた名族たちの歴史が城を通して垣間みえる内容になっている。
 なんといっても三河は今川氏発祥の地なのだから歴史の皮肉を感じざるをえない。義元から「故地に錦」を飾る雰囲気が感じられず、浜松まで本拠を前進することさえなかったのは、家康がついの住処に決めた駿河のよすぎる気候のせいなのかな――と思っていたが後で1巻を読むと義元が三河を統治し、氏真が駿河と遠江を治める構想があったらしい。
 一方、松平氏は松平郷から始まって岩津から安祥、岡崎と本拠地を移している。家康の時代になってからも動いて、関東出身という噂の先祖と一周させているし、三河の風土に育まれながら土地にこだわりのない一族と言えるかもしれない。

 徳川四天王に隠れて少し影の薄い三河侍たちの話を、城や寺に絡めて読めたところが良かった。やっぱり本多作左はよい。

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古城の風景3 一向一揆の城
古城の風景3 一向一揆の城
カテゴリ:歴史 | 00:09 | comments(0) | trackbacks(0)

これはゾンビですか?こぶいちむりりんアートワークス

 見分けがつかない絵師コンビこぶいちむりりんによるこれはゾンビですか?画集ですか?
 思ったよりエロいというより思いっきりエロい。特にBlu-ray関係は容赦がなく、着物のはだけたユーと抱き枕カバーのユーはギリギリアウトだった。同じ抱き枕でもトモノリならまだ「健康的な」という表現を冠することが出来るのだが、ロリババアなユーでは「犯罪的な」になりかねない。
 おかげで関心がエロ方面に偏ってしまったが――とくにサラスのエロティックな絵が多いことがわかった――モノクロイラストでは男キャラがそこそこ活躍していて、なんとかバランスが復元した。プラトーンの織戸がタッチまで全然違っていて凄い……これはこれで収録される価値がある。
 尻に竹槍が刺さったバユムの姿はそれが大いに疑問なのだが。

 これゾンの二次創作がいまいち盛り上がらないのは、キャラクターデザインのためかもしれないと考えもした。
 ユーは甲冑だし、歩とハルナは魔装少女だし、セラは絶妙なおっぱいだし、大先生は微妙なデコだし、クリスは縦ロールが三本もある。レベルが高いと同時に、なかなかハードルも高い。
 オリジナルが良すぎると挑戦の意欲をかき立てない可能性はあるが、公式を見る分にはやっぱり良い。

 おまけ小説というか書き下ろし漫才ではヴィリエの教育制度がちょっと分かった。卒業間近の連中は魔装「少女」を名乗るにはちょっと苦しい実年齢になるな。もっともヴィリエの一年が地球の一年と一致している保証もない。

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これはゾンビですか? こぶいち むりりんアートワークス
これはゾンビですか? こぶいち むりりんアートワークス
カテゴリ:写真・イラスト集 | 14:40 | comments(0) | trackbacks(0)

古城の風景1〜菅沼の城、奥平の城 宮城谷昌光

 菅沼氏を主人公にした宮城谷先生の時代小説「風は山河より」で登場する東三河の城郭を編集者たちとめぐる紀行文。城を視ている間、待たせていると思しきタクシー代が気になってしまう私はセコい。運転手は特に道に詳しい人を手配してもらっているのかな。著者と編集者たちに続く第三の登場人物がタクシー運転手である。
 城の来歴を読んでいて「風は山河より」の場面をいろいろと思い出した。忘れてしまっている部分も多くあって自分の記憶力に呆れる。東三河は今川氏の影響力が大きく、松平氏が顔を出すのは清康の時代になってからだ。清康の地均しがあったからこそ、家康の逆撃が可能になったのかもしれない。持つべきものは偉大な先祖である。

 土地から浮かび上がってくる著者のほろ苦い思い出語りがなかなか興味深かった。高校生時代でも詫びた雰囲気があるのは、振り返っているだけだからではあるまい。まぁ、なんだかんだいって今の家人との付き合いもあったはずだけど……。

 あと、源氏物語への意見がおもしろかった。まともに読んだことがないが、印象だけで語れば似たような感想を抱いてしまう。
 著者の背景を考えると、宮城谷先生が望むような話にならないのも当然だけど――清少納言が引退後にアンチ源氏物語を書いてくれていればあるいは?ってところか。
 話の締めは長篠城。今川松平今川と来て武田が顔を出した。織田もいるし、三河もすさまじい激戦地である。田舎でありながら交通の要衝といわざるをえない。

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古城の風景 1
古城の風景 1
カテゴリ:歴史 | 11:35 | comments(0) | trackbacks(0)

戦国の覇者1〜信長を獲れ! 坂上天陽

 長篠の合戦が武藤喜兵衛(後の真田昌幸である)の献策によって、史実とは変わった展開をみせ、そこに若き岡崎信康や織田信忠の思惑が絡むことで信長が囚われの身になってしまうシミュレーション。
 ちょっと強引な展開だとは思うものの、長篠の合戦直後のタイミングは魅力的な武将が織田家の内外に数多く残っていて、彼らが鎬を削るさまが楽しめる。
 特に松永久秀が織田信忠について、蠢動していることが印象的だった。

 長篠の合戦から武田家の滅亡――本能寺の変までは結構時間があったことにも改めて気付かされる。その間にもいろいろなことが起こっていて、秀吉たちの領地も大きく変わっているのだった。
 みんなして近江に領地をもっている状態がおもしろい。おかげで信忠勢の中入り策が機能する結果にもなった。

 良く知られた武将たちが活躍する中で異彩を放っているのが、史実では切腹させられた家康の嫡男、岡崎信康だ。
 笑ってしまうほどの猪武者ぶりだが、不思議と憎めない。どこか勝頼と気の合いそうな人物だった。この世界の勝頼は、信康の一歩先を行く器を見せているけれど。
 信長が早すぎる退場をした戦国で、誰が天下人になるのか、楽しみである。

戦国の覇者 1 信長を獲れ! (歴史群像新書)
戦国の覇者 1 信長を獲れ! (歴史群像新書)
カテゴリ:時代・歴史小説 | 00:03 | comments(0) | trackbacks(0)

歴史群像シリーズ78 争覇春秋戦国〜五覇七雄、興亡の五百年

 春秋戦国時代をあつかった学研の歴史群像シリーズ。五百年を一冊にまとめるのは流石に圧縮率が高すぎたようで、満足の行く深度に達してくれている記事は期待したより少なかった。だが、その一部の記事を多くの読者に理解してもらうためには、当たり前に近い春秋戦国時代の概説も必要になる。しかたがない。

 一部の執筆者がなかなかの曲者で、定説になっていないことを堂々を言い切るから注意が必要だ。特に孔子に対する評価が偏見にまみれていて酷かった。天子になることを夢想したペテン師あつかいである。そこまで言うか?
 ある程度の真実があったにしても貴重な史料を提供してくれている相手なのだから、感謝を忘れないようにしたい。
 まぁ、他の著者にも厳しく言われる傾向があるので、この本だけで孔子のイメージを固められると儒教には厳しいことになりそうだ。
 あと、始皇帝を呂不韋の息子と断定してストーリーを作っている記事にも注意してほしい。独裁者の心理を描く「話」としては良く出来ているが……。

 おおよその戦史紹介以外には、諸子百家の紹介や人物伝などが基本的な構成で、カラーページに決定的な戦闘の記事と、巻末に学術的にも突っ込んだ記事があった。
 城濮の戦い解説で、楚軍が晋軍より多かったと言い切っている点が謎だった。状況を考えれば劣勢の可能性が高いんだが……しかも、著者の他の記事では晋を優勢と判定していたような?何か意見の変わる発見があったのかな?
 巻末では鉄と塩と経済に関わる話が興味深い。秦が勝利したので円形の銭ですんなり統一されたけれど、他の国が勝っていたら刀や鍬や貝の形をした銭で統一されたのかな?結局どこかで円形に変わりそうな気もする。

 商鞅が秦に与えられた領土の兵をひきいて秦と戦ったという記述も気になった(おそらく、そこまで出来ずに処刑されたのが痛切だが)。魏ゼンも函谷関の東に多くの封地をもっていたし、孟嘗君は薛の主である。戦国時代に入っても国の数が減るばかりだったとは言い切れないようだ。

争覇春秋戦国―五覇七雄、興亡の五百年 (歴史群像シリーズ (78))
争覇春秋戦国―五覇七雄、興亡の五百年 (歴史群像シリーズ (78))
カテゴリ:歴史 | 23:13 | comments(0) | trackbacks(0)

古城の風景2〜松平の城 宮城谷昌光

 歴史小説家、宮城谷昌光先生による三河地方の城巡り紀行文。帯には何故か東三河を巡ると書かれているが、大部分が西三河の城である。
 城の構造に要点をおいた文章ではなく、城から連想される歴史を語ることに重点が置かれている。松平信光が三河一帯に展開した松平一族の規模を伺うことができる。
 松平氏以外にも三河に拠点をもっていた勢力があったことも見えてくる。進出以前の歴史については不明瞭なところも多いが、なかなか興味深い。

 城の景色についても言及がまったくないわけではなく。城からの景色を観察して、その重要性を読みとることは多い。ついでにその眺めが城に拠点を構える一族の心を育てたと考えるところが宮城谷先生らしいと思った。
 とりあえず絶賛されている大給城には行ってみたくなった。桜井城の桜が咲いていたというのも名前から惹かれる話だが花粉症がなければなぁ……。

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古城の風景 2 松平の城
古城の風景 2 松平の城
カテゴリ:歴史 | 22:16 | comments(0) | trackbacks(0)

宝石・鉱物手帳 地質情報整備・活用機構/編著 青木正博/監修

 コンパクトでほぼカラーのポケット鉱物図鑑。図鑑というにはちょっと情報が少なくて、化学組成の表示がないのはやりすぎだと感じた。解説文には組成の話が普通に出てくるので、確認したくなるのだ。
 まぁ、物理本の数式みたなもので、できるだけ減らしたほうが喜ぶ層もいるのかもしれないな。そうでないなら極力載せてほしいところ。

 鉱物の分類方法は「色」で、「透明」のダイヤモンドから始まって「赤」「黄」「緑」――最後は「多色」の菫青石である。
 たいていの鉱物は収録されている印象をうけた。他の図鑑と見比べると何かが足りないと気付く予感もあるが薄いポケット図鑑なのでしかたがない。
 コラムが充実していて新しく得るものがあった。ルビの語原がルビーだったとは知らなかった。他の宝石にちなんだポイントの呼び名も生き残っていたら写植業界を華やかに感じたかも……。
 ただし、コラムで緑青を有害と書いていた件については――著者の情報が止まっている?昔は製錬技術の問題で銅に鉛が含まれることが多かったから緑青が有害と勘違いされていただけのはず。もったいない間違いだ。

 鉱物の写真は「ほっとするクオリティ」のものが多く、教育機関にある引き出しの標本をじゅんぐりに眺めている気分になれた。アメリカ、スウィートホーム鉱山産のロードクロサイトがさらりと高品質だったりするけれど……寒天みたいなあるいは高級マグロの赤身みたいな透き通った赤さに垂涎を禁じ得ない。

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宝石・鉱物手帳-神秘の石の世界をのぞいてみよう (大人の遠足BOOK)
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カテゴリ:地学 | 22:38 | comments(0) | trackbacks(0)

通商護衛機動艦隊 興国の楯〜暗闘!謀略の日豪停戦 林譲治

 戸田少尉がやばい。彼を陸士が凄いで説明できるなら日本は世界を征服できるな。
 オーストラリアにアメリカ、日本の陸海軍に通商さんとやたらと登場人物の多い戦いがポートモレスビーを巡って展開されている。ちょっとだけイギリスも顔を出していたな。
 話が複雑になるほどアメリカが足下をすくわれる可能性は高くなるわけで、通商さんの存在が情報面で与える影響は大きいと言える。しかも、陸海軍の情報を統合して分析する仕事までやらかしている。情報を握るものが未来を握るわけで、陸海軍も平然と危ないことをするものだ。いや、陸軍は流石に情報の重要性を理解しているかな?

 ラバウルの司令部にある「コンピューター」の話題が出てきたときには辻少佐が電気回路に接続された状態を想像してしまった……さすがに無理だったか。
 オペレーターに女性と使っている話はなかなか興味深かった。通商さんは既に戦後を考えた動きを始めているんだな。捕虜になった人々の吸収もその文脈で考えられるかもしれない。

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興国の楯―通商護衛機動艦隊 暗闘!謀略の日豪停戦 (歴史群像新書)
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カテゴリ:架空戦記小説 | 15:23 | comments(0) | trackbacks(0)

日本史と世界史 並列年表 歴史の読み方研究会

 日本史と世界史の年表を上下二分割でならべて表示した学生向けの本。
 コラムが充実しており、年表の上下を埋めている。図などは他の本から引用したものが多い。おかげで巻末の参考文献一覧がすごい事になっている。日本の歴史も世界の歴史も描いているから自然なことではあるのだが。

 年表にはけっこう大きな空きがあって、本当に重要なことやテストに出そうなこと、記憶に引っかかりやすいことだけが並べられている印象だった。コラムで人物像に触れていることも記憶の強化には役立つはず。
 ただし、眉に唾をして読んだエピソードもあるので鵜呑みにするのは危険。鵜呑みにしても、そこまではテストに出てこない内容かもしれないが、あくまでも説の一つとして読んでおいた方が無難である。

図解 日本史と世界史並列年表―比べてみるとよくわかる!
図解 日本史と世界史並列年表―比べてみるとよくわかる!
カテゴリ:歴史 | 23:26 | comments(0) | trackbacks(0)
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