加賀開港始末 谷甲州

 白山に登ろう!幕末を舞台にした歴史物とみせかけて、江戸時代の装備で登山するのかと思ったら、実は桜田門外の変を発動していた。わけがわからないよ……。
 もうちょっと伏線を回収する感じにしてくれても良かったのに。プロローグの薬草取りをみつけたのは真之介であってほしかった。侵入者の足跡を見つけたシーンでは、ここで繋がるのかと思ったのだが、別にそんなことはなかったぜ。
 せめて弥吉には再登場してほしかったなぁ……人の縁は一期一会。これくらいがリアルなのかもしれない。

 熟練の戦闘シーンはすばらしく、文面から血の臭いが漂ってきそうな程だった。少人数の争いなのにやたらと迫力がある。本当に人が何人も死んでいる現場であるという迫真の空気がどこからともなく伝わってくるのだ。
 新式の鉄砲でなくても使い方次第では、かなり役に立つなぁ。現代であっても火縄銃の殺傷力は恐るべきものなので、当然といえば当然だ。
 谷甲州先生が航空宇宙軍史で言っていた漁村に戦艦大和を思い出す。

 物語はたった数ヶ月だったが、激動の幕末らしく、非常に濃密な時間がすぎて行った。時代の変化に翻弄されそうになりながら、自分の意志を貫いた若い武士の姿に心を打たれた。

 後の石川・富山である、で気付いたのだが一つの藩から現在の二つの県ができているのは天領を除けば加賀藩だけか。やはり100万石は巨大だ。

谷甲州作品感想記事一覧

加賀開港始末
加賀開港始末
カテゴリ:時代・歴史小説 | 15:59 | comments(0) | trackbacks(0)

イングランド王国と闘った男〜ジェラルド・オブ・ウェールズの時代 桜井俊彰

 勝手にウェールズに侵入したノルマン人マーチャーの一員でありながら、ウェールズの王女ネストの血を4分の1受け継ぐクオーターであったジェラルド・オブ・ウェールズ。リチャード獅子心王やジョン王の同時代人であった彼のノルマンとウェールズの間で揺れるアイデンティティから、ブリティッシュの萌芽が描かれる。
 闘いは闘いでも政治的宗教的な闘いだ。カンタベリー大司教座に対抗してウェールズのセント・デイヴィッズに大司教座を置くために、国王や教皇に働きかけている。
 三度にも及んだローマ訪問は交通機関が発達していない当時では大変な旅だったと著書の中でも言われている通り。おそらくローマ時代よりも面倒だったのではないか。

 ウェールズの歴史についてはアンジュー帝国の総力を結集して討伐しようとしたヘンリー2世が嵐に見舞われて、政策を一変させたところが興味深かった。局所的一時的な気象現象が大きく歴史を変えることがある。
 ウェールズの山河はウェールズ人を守ったのだなぁ。しかし、同化しつつもじわじわと勢力を増していくマーチャーに対しては人間の力で対抗するしかない。ゲリラ戦で追いつめていたようだけど、最後は攻城戦が可能な正規軍を結集して拠点を潰さないとノルマン人を追い出すには至らない。
 そのための統一がないことが痛かった。

 ノルマン人やウェールズ人のほかにもアングロサクソン人やフランドル人が当時のウェールズで活動していて、辺境であると同時に国際色豊かな土地であったことが印象に残った。
 同じ島国でも日本とは違う――古代日本なら似ているかもしれないが、同時代の中世日本とは違うな。

関連書評
イングランド王国前史〜アングロサクソン七王国物語 桜井俊彰
スコットランド王国史話 森護

イングランド王国と闘った男―ジェラルド・オブ・ウェールズの時代 (歴史文化ライブラリー)
イングランド王国と闘った男―ジェラルド・オブ・ウェールズの時代 (歴史文化ライブラリー)
カテゴリ:歴史 | 09:04 | comments(0) | trackbacks(0)

上杉謙信〜越後の龍、戦国に飛翔する 新・歴史群像シリーズ16

 よくわかった。宇佐美定祐のプロパガンダが悪い!
 紀州藩で上杉流軍学をでっちあげたかもしれない宇佐美定祐によって、上杉謙信像が歪んでいることは想像がついた。ゆがめられていない歴史人物像など存在せず、意図が分かりやすい方がかえって利用価値があがるのも真実かもしれないが……。
 どうしても印象に残ってしまう人物なのであった。おかげで眉唾ながら情報が残っている側面もあるのだろう。上杉家がちゃんと存続したことを考えれば、武田家よりも史料全体は信頼できるとも考えられる。

 さて、上杉謙信だが、本当によく裏切られている。しかも、許せる範囲では許している。
 織田信長がよしみを通じていたのは、戦国の裏切られ者仲間としてただならぬ親近感を覚えていたせいだと、ついつい妄想してしまうほど。
 とくに揚北衆は手強い連中で、家康を手こずらせた信玄を手こずらせた謙信を手こずらせたということで、家康がもっとも恐れた勢力になる権利を保有していると思った。

 あとは経済に絡めたアオソの話題が心に残る。塩の件といい実は商売人気質のある戦国武将である。
 天正三年「上杉家軍役帳」は複数の記事で引用されていて、上杉軍のバランスを世に伝えている。槍が65.4%、手明(徒武者)が11.8%、鉄砲が5.8%で、旗が6.7%、馬上が10.3%で、弓は0.2%にすぎない。
 弓の異常な少なさは記事中でも指摘されているとおり気になるところだ。イングランドのヨーマンみたいに動員=弓の専門部隊がいたとか……鉄砲なども集中運用されていないらしいのに、弓だけはできているなんて甘い想定かな。何らかの記録が残っていないのもおかしいし。
 どこかの部隊が兼任していると考えたいが、ともかく謎である。

上杉謙信―越後の龍、戦国に飛翔する (新・歴史群像シリーズ 16)
上杉謙信―越後の龍、戦国に飛翔する (新・歴史群像シリーズ 16)
カテゴリ:歴史 | 01:13 | comments(0) | trackbacks(0)

未知なる火星へ――生命の水を求めて―― ディスカバリーチャンネル

 マーズ・リコナイサンス・オービター(略してMRO)の紹介動画。NASAが積み重ねてきた火星探査のステップとして、MROがどんな位置づけにあるのかが分かる。
 最初の方で全球において地上探査車並の役割をはたすと豪語していたので、流石にそれは無茶だろうと思ったが、ハイライズカメラの立体映像をみると意欲は伝わってくる。

 豊富な火星画像が惜しげもなく使われていて、眺めているだけで研究の進展が感じられた。特に説明もなく流される画像には、ちょっと不満を覚えたりもするが、ナレーションから出てくる文脈は想像できる。

 動画が作られたのはMROの火星観測開始前で、フェニックスもマーズ・サイエンス・ラボラトリーも到着していない。
 それでも、これだけの情報を用意できているのだから、新しい探査結果に期待が高まるのも当然といえる。しかし、今でもオポチュニティが運用中であることを、このビデオに登場している関係者は予想できていたのだろうか?
 いや、実際には停止してしまったMGSの運用が続いていることさえ期待していたかもしれないが……。

未知なる火星へ 生命の水を求めて [DVD]
未知なる火星へ 生命の水を求めて [DVD]
カテゴリ:映像資料 | 07:19 | comments(0) | trackbacks(0)

これはゾンビですか?16〜まあ、さいきんはとくに 木村心一

 さいきんじゃなくてウイルスだって作中で言っていたじゃないですかー!抗生物質が効かないウイルス。更生指導が効かない京子ちゃん。どっちも恐ろしい。
 今回はノロウイルスにラノベキャラが苦しむ話と言うことで、容赦なく下痢や嘔吐に見舞われている。実に生々しい。
 それでも、トモノリやハルナなら受け流せるが、典雅な大先生が諸症状に苦しんだことを想像してしまって……人類でも方法さえ選ばなければ魔装少女に対抗できそうじゃん。

 まぁ、連中には記憶操作があるから、生物兵器の実験も一筋縄ではいかないか。
 歩にキスの呪い(生物化学)を掛けられた大先生の反応が初々しくて良かった。でも、実力差を考えるとちょっと無理なんじゃないかなぁ。
 故意にスカートをめくられるは、故意にキスされるは、大先生は歩からエロいことをされる珍しいキャラである。でも、殺してはもらえないのだった。
 そういえばクリスはカラーページに出てきておいて本編では出てこなかったな。次回は出番のあることを期待する。

 戦闘においては「ユーは俺がおいてきた。言霊は強いがハッキリいってこの闘いにはついていけない……」になっていて――最初から戦闘要員じゃなかったからな。
 あそこまでの緊急事態ならハルナの病気をユーの言葉で治して、参戦してもらえと思ったんだ。
 焼き肉とラーメン食べたい。

 感想がとりとめもなくグダグダになってきたところで、最終刊の気配が濃厚な次を待つ。しゃーなし以外に何が言えようか。

木村心一作品感想記事一覧

これはゾンビですか? (16) まあ、さいきんはとくに (富士見ファンタジア文庫)
これはゾンビですか? (16) まあ、さいきんはとくに (富士見ファンタジア文庫)
カテゴリ:ファンタジー | 00:13 | comments(0) | trackbacks(0)

風は山河より 第三巻 宮城谷昌光

 ずっと雪斎のターン!いや、寿命がくるまで雪斎のターン!
 三河に乗り込んだ黒衣の宰相が現地勢力や織田軍を叩きのめす。寿命以外は何も彼を止められない様子だった。松平清康が生きていて雪斎と衝突したら、どんな戦いになったことか。作中の描写なら三河に進出せず、戦いにならなかった可能性の方が高いな。
 雪斎の三河人に対する評価が厳しいもので、道理はそうなのかもしれないが、辛かった。逆に織田信秀は三河人に甘いところがある。平均的な駿河人と尾張人なら逆の態度になりそうなものだが、宗教者と商人の違いも影響しているのかな。三河は農民と属性が綺麗に分かれている。

 織田と松平以外にも多くの勢力が愛知県には存在して、状況によって表面に出てくることが、他の巻以上に目立つ巻だった。吉良氏や戸田氏、奥平氏は有名どころとして、独立勢力としての佐久間氏や阿治波氏などなかなかにカオスである。もちろん菅沼氏も忘れてはいけない。
 勢力は簡単に塗り分けられる地図にはなっていなくて、道は情勢によって通行可能だったり不可能だったりする。綺麗に統一される前の複雑な政治状況を少しは肌に感じることができた。
 広忠の「これからだ」という所での横死は悲しい。二度あることは三度あるで家康も家臣から心配されていたに違いない。よくあんなに長生きしたものだ。

宮城谷昌光作品感想記事一覧

風は山河より 第三巻
風は山河より 第三巻
カテゴリ:時代・歴史小説 | 10:03 | comments(0) | trackbacks(0)

三国志合戦事典〜魏呉蜀74の戦い 藤井勝彦

 正史にこだわった三国志の戦闘一覧。演義の影響を排除して、効率的に正史の知識を摂取するのに向いている。あまり多くは取り上げられていないが、人物事典も付属していて「本来の姿」が見えてくる気がする。
 演義やその他の文献情報についても正史と比較する形でまとめてくれているので、自分の知識がどこから来たのか、整理する役に立った。陳寿による記述のそっけない趙雲……。

 不満点としては戦いに参加した勢力の指揮官しかまとめられていなくて、兵力などの情報がないこと。地図も収録されていない戦いがあって、地形表現がないタイプなので、見て考えるには物足りなかった。
 何らかの図録を副読本にできると読みやすいのではないか。

 時代ごとに区切られていく中で、独立勢力として遼東と交州がしぶとく生き残っているところが愉快だった。どちらも呉との関わりの中で滅んだんよな……。

 戦いのエピソードには蒼天航路で見覚えのあるものが幾つもあって、なんだか興奮した。いつのまにか人物の顔も蒼天航路準拠で思い出すようになってしまっている。
 この本、本来のイラストは正直、貧相でいまいち。ただし、魏文帝曹丕だけは絵の通りの男だったんじゃないかと思いました。

 魏と呉の戦いや、蜀滅亡前後の晋との戦いはどうしてもカバーが甘くなるので、正史準拠で知識をまとめて得られたことはありがたかった。

関連書評
図説合戦地図で読む 三国志の全貌 坂口和澄
真説 その後の三国志 坂口和澄

三国志合戦事典 (Truth In History 23)
三国志合戦事典 (Truth In History 23)
カテゴリ:歴史 | 06:49 | comments(0) | trackbacks(0)

Q.E.D.証明終了 ザ・トリック・ファイル 加藤元浩

 Q.E.D.の初期の事件と作者インタビューをメインにした解説本。橙馬のキャラクターが作者本人から説明されるので、理解を深めることができる。やっぱり、かなり変わっている。
 加藤先生は理系でも建築出身とのことで数学からはそこそこ離れている。あまりに近いと好きになることもできず仕事に間接的に活かすのは難しかったりするからねぇ。
 金田一少年の事件簿の原作者である天樹先生との対談が収録されていて、ミステリー漫画の醍醐味を知ることができた。最初は天樹先生が喋りまくるのだけど、いつのまにか加藤先生に丸め込まれて同意しているような……「なるべく早くマンガ家さんに渡してあげてください」と言われるオチには笑った。
 そのマンガ家との対談は今となってはいろいろ危険ですが――ある意味でQ.E.D.のネタになりそうだ。うさんくさい人物が、けっこう多い作品だよね。

 ダイジェストでまとめられている話は最近のものより記憶に残っている気がした。最初に読んだときと感想を書くときで二回は読んでいるからなぁ。記憶の密度に差が出てもおかしくはない。

 作者オススメのミステリーとしてアガサ・クリスティの作品が3つも挙げられていた。部長の元ネタ、エラリー・クイーンは2つである。遠慮なく偏っているなぁ。

関連書評
Q.E.D.-証明終了 ザ・トリック・ノート 加藤元浩・月刊少年マガジン編集部
Q.E.D.証明終了1巻 加藤元浩

Q.E.D.証明終了 ザ・トリック・ファイル (KCデラックス)
Q.E.D.証明終了 ザ・トリック・ファイル (KCデラックス)
カテゴリ:ミステリー | 05:55 | comments(0) | trackbacks(0)

図説 徳川の城〜よみがえる名城 白亜の巨郭 歴史群像シリーズ

 藤堂高虎が先頭になって天下普請で築きまくった徳川の城郭たち。その歴史と一覧が明らかにされている。
 家康本人が縄張りした城もさりげなく出てくるが、誰の縄張りと伝わっているにしろ、方形と直線をくみあわせた基本プランはほとんど変わらない。変えてはいけない。
 徳川の城であれば、どれに立てこもっても同じ結果を出せるように兵士が訓練されていたからだと本書は説明する。攻める側も自然と手慣れてくるはずだが――むしろ逃げられない城兵よりも攻める兵の方が経験値の蓄積を期待できる――有無をいわさぬ巨大な構造物が徳川家に一定の防御力を提供し続けている。
 まぁ、大砲の発達によって、サイズの違いは大きな違いになるのだけど、作られた当時はどこまで考えられていたことか。

 城の紹介が造られた時代を下っていく形で行われる――江戸城は特別に二回出てくる――のだが、天下泰平の城として紹介された大坂城と二条城がどちらも抵抗ではなく、将軍の退去で役目を終えていることが象徴的に見えた。
 徹底抗戦に使われた豊臣氏の大坂城や熊本城とは奇妙に好対照をなしている。

 江戸城、名古屋城、大坂城の全てが何だかんだで建造物を遺していることも興味深かった。それだけ規模が大きくて、たくさんの櫓や門を持っていたわけだ。

関連書評
図説 よみがえる名城 漆黒の要塞 豊臣の城 歴史群像シリーズ

よみがえる名城白亜の巨郭徳川の城―決定版 (歴史群像シリーズ)
よみがえる名城白亜の巨郭徳川の城―決定版 (歴史群像シリーズ)
カテゴリ:架空戦記小説 | 00:14 | comments(0) | trackbacks(0)

帝国戦記 太平洋の凱歌 伊吹秀明

 8巻に及んだ帝国大海戦にまつわる物語を収録した短編集。シミュレーションの中でも読者に知られざる戦いがたくさんあることを意識させてくれる。

南海のゼーゴイセン
 アメリカ、日本、イギリスの三大海軍国ばかりにデカい顔をさせていられない!海洋国家オランダの意地をみせてやる!!
 そんな感じで展開される蘭印を舞台にした通商破壊戦。歴史だけでいえばスペインやポルトガルにも、こういう見せ場がほしいところだが、参加していないか……。
 海防戦艦スラバヤが脱出する方法は本当になかったのか、考えるとやっぱりない。イギリスと日本をまとめて相手にするのは無理だ。アメリカの戦力がよほど厚くない限り、ジリ貧は免れない。
 史実のオーストラリアは、蘭印との戦争も考えたことがあるのかなぁ。やる気満々の姿にそんなことを思った。

猫の戦記
 艦艇を渡り歩いてきた猫視点の話。なんとなくうるうるしてしまった。木村提督が格好いいが、イメージはやっぱり釣り好きのおっさんである。
 猫を殺意をもって追いかけ回す乗員たちは、艦内でのいじめもやっていそうで、非常に嫌な感じだ。
 あと、アメリカの潜水艦がみせたファイティングスピリットが見事。艦を奪われるデメリットを思うと、降伏も簡単ではない。

ラスト・ミッション
 イギリス側からみた最終決戦を描いた一話。かなり駆け足だった帝国大海戦の最後に別の面から光をあてて立体感を出している。スプルーアンス提督の死と、ホーネットの砲撃による撃沈がアメリカ世論に非常に大きく響いたことが分かる。
 それにしても、ルーズベルトを選挙で破ったのはデューイか……まぁ、終戦してくれるなら誰でもいいな!もし、リンカーン大統領の再選をマクレラン候補が防いだら、という南北戦争歴史IFに近いものを感じる。

パラレル戦記「迷霧の荒鷲」
 帝国大海戦の本編から50年以上後の西暦2000年。アメリカ合衆国で流行する戦記シミュレーションの様子を描いた非常に皮肉の効いた作品。戦記しゅみれーしょんの現状(本書発売当時の)に一言もうしている。怪しい編集者も登場するが、著者がそういう人物に当たったことはない、とのこと。
 アメリカで戦記しゅみれーしょんが流行しているのは、戦争に負けて後悔の気持ちが強いから、という分析は現実に負けている日本の現状への皮肉だ。
 架空世界で架空戦記を小説家に書かせる入れ子になった状態は、フィクションの二次創作と考えれば日本では決して珍しいことではない。
 源田実の悪口をネタに大和とピラミッドと万里の長城がアメリカと激突する「世界三大馬鹿 太平洋決戦」という超戦記が馬鹿売れしている様子には笑った。さすがにここまで突き抜けた作品は……一部の作者は突き抜けが足りなかったのかもしれないな。けっきょく映画化までこぎつけた戦記しゅみれーしょんはなかったわけで(それとも私が知らないだけか?)。
 三日で一冊書いた戦記作家の元ネタは誰なのやら。諸元でページ埋めには強烈に見覚えがあって苦笑を禁じ得ない。擬音乱舞は田中先生だったか、谷先生だったか。

「帝国大海戦」アナザー・バージョン
 帝国大海戦のありえた展開をいくつか並べた小論。潜水艦戦でまずイギリスを脱落させる堅実な計画や、パラレル戦記「迷霧の荒鷲」で書かれた北太平洋を侵攻ルートとする作戦が語られている。
 地中海情勢への言及も。イタリアが日英同盟側でフランスを主敵に参戦したことの影響はやはり大きい。

伊吹秀明作品感想記事一覧

帝国戦記―太平洋の凱歌 (歴史群像新書)
カテゴリ:架空戦記小説 | 19:24 | comments(0) | trackbacks(0)
| 1/2PAGES | >>