ビジュアル博物館 騎士 クリストファー・グラヴェット

 名品だらけの騎士写真図鑑。甲冑や刀剣や生活を描いた彫刻などが収録されている。
 個人的に装備の値段が知りたかったのだが、初期の剣が馬一頭分の値段であることしか載っていなかった。代わりに重量については前半にいくつか記述があった。
 紋章学における色の名前なんてマニアックな情報もある。銀の上に金を載せている作品はニワカなので覚えておこう。

 セイウチの牙を削ってつくったチェスの駒や象牙で作られた聖ゲオルギウスなどの彫刻品が優れていた印象。甲冑の細工もすごい。
 絵は古いものほど稚拙な印象を受けてしまう。多くは「家庭内でのお絵描き」だから仕方ないのかな。
 馬上槍試合と剣闘士の関係が気になる。似たようなことをやっておいてまったく関係がなかったとは思えないのだが……。

 イギリス王室の闘士サー・エドワード・ディマックの逸話に笑った。エリザベス1世の戴冠式において、手甲を地面に投げつけ、「女王様の権力に文句あんのかコラ」とやったという……完全に総会屋である。

関連書評
騎士団 須田武郎 新紀元社
武装の騎士〜戦乱の中世ヨーロッパ ジョン・D・クレア/リチャード・フレッチャー
中世の城 フィオーナ・マクドナルド/マーク・バーギン/桐敷真次郎
クセノポーンの馬術・ポダイスキー ヨーロッパ馬術小史 荒木雄豪・編

騎士 (ビジュアル博物館)
カテゴリ:歴史 | 23:07 | comments(0) | trackbacks(0)

宇宙戦争1945 横山信義

 「火星人」は太陽系の外側からやってきた存在だった!そんな彼らの母船が地球軌道に乗るのを防ぐために、人類は総力をかけて制動機の存在するボルネオ島を攻撃する。
 世界各国の艦隊が協力し、最新鋭の決戦機B-29が無数に翼を連ねる。とてつもな兵力が「火星人」の先遣隊に叩きつけられた。

 結果は友情・努力・勝利。
 なのだが、人類の作戦に疑問を覚える部分もあった。冷却水パイプへの攻撃なら艦隊にも可能だったのではないか?取水口に対してなら雷撃も有効と考えられる。
 それなのにすべての攻撃を航空隊にまかせて海岸に遊弋していた事情がわからない。ちゃんとダメな理由があって説明を見落としたのかなぁ。
 「火星人」が最初からすべての戦力をボルネオ島に集中していたら突破はもっと難しかったかもしれないが、人類も戦力を結集しやすくなるので微妙なところだ。ただ、ドイツやソ連まで協力する体制を作るのは難しかったかもしれない。「火星人」に負ければ良くて奴隷化、悪ければ絶滅ってロシア人にとってはドイツ人との戦争でも変わらない……。
 本国も植民地も「火星人」に征服されているオランダが気の毒……人類同士の戦争でも結果は同じなんだよなぁ。中国や中南米諸国が明確には参戦していないのが残念だった。どちらも航空隊の派遣ならできるはずなのだが。

 最初は無敵だったトライポッドが気がつけば戦闘機の37ミリ砲で戦闘能力を奪われる状態になっているのも弱体化に感じた。何世代もかけて宇宙を渡ってきた関係(コールドスリープしていた可能性も示唆されているが)で、「火星人」も戦争には熟練していないようだ。
 地球の軌道にとどまれない腹いせに地球を破壊する爆弾を落としてこなくて本当によかった。中途半端に減速してしまったから「次の目的地」があったとしても到達することができず、滅亡まで宇宙を放浪することになるかもしれない。それはそれで恐ろしいことだ。

 「火星人」との戦いを通じて、人類は力をあわせることを学んだ。しかし、共通の敵は失われてしまったわけで、これを機に世界平和を達成できるかは未知数である。
 できなかった場合に領土内に火星人の技術を確保できていない日本は不利になるかもしれない。本土を攻められなかった僥倖が裏目に?

あわせて読みたい
第二次宇宙戦争 マルス1938 伊吹秀明

横山信義作品感想記事一覧

宇宙戦争1945 (朝日ノベルズ)
宇宙戦争1945 (朝日ノベルズ)
カテゴリ:SF | 22:35 | comments(0) | trackbacks(0)

サボり上手な動物たち〜海の中から新発見! 佐藤克文・森阪匡通

 猫も杓子もバイオロギング。海棲動物に小型の測定機器をとりつけてデータを定期的に記録することで得られた動物の「動いていない行動」の豆知識たち。
 サボっていると考えるよりも「全力で手を抜いている」と考えた方が近いかもしれない。効率的に動けなければエネルギーの無駄遣いで死ぬ可能性があるわけで、やっぱり自然界は過酷である。
 ……まぁ、それではペンギンの子供が舞い落ちてくる雪片を空中キャッチしたり、イルカどもが「ヒャッハー!!」と遊んでいる理由までは説明できないが。
 人間のおこなう研究と同じく、遊びが新しい何かにつながったり意外な能力を鍛えるため、最終的には種の保存に有利になるというところかな。あんまり深く考えずに上手にサボるのがベストに違いない。

 加速度計の取り付けは日本の研究者が初めておこない「お家芸」になっているようだが、当初の目的と得られた結果が違うことが研究に付き物のアクシデントらしくて面白い。
 まぁ、紹介されている図をみると当初の目的も最終的には達成されているようで、三方向の加速と回転を解析した計算がすごい。生態学も物理学と切り離せないな。
 マッコウクジラの頭の大きさが、そのまま前にでる音と頭骨に跳ね返る音の時間差から計算できる、程度の話が私には理解の限界である(思考のサボり)。

関連書評
ジュゴンの上手なつかまえ方〜海の歌姫を追いかけて 市川光太郎:こちらもバイオロギングの話。
ハトはなぜ首を振って歩くのか 藤田祐樹

サボり上手な動物たち――海の中から新発見! (岩波科学ライブラリー)
サボり上手な動物たち――海の中から新発見! (岩波科学ライブラリー)
カテゴリ:科学全般 | 17:58 | comments(0) | trackbacks(0)

宇宙戦争1943 横山信義

 人類の反撃がはじまった!
 日米が火星人の占拠するフィリピンのルソン島に二度にわたる攻撃をしかけ、ついに宇宙戦争ではじめての勝利を得る。多大な出血を強いられる勝利であったが、代わりに得たものも大きかった。
 何よりも大きなものは、人類同士たすけあう信頼関係であろう。臭い話だが「真実」だ。

 火星の兵器体系はかなりいびつであり、何よりも熱戦砲の射程と連射性能に制限がある。この辺り技術バランスよりも「原作縛り」で性能が決まっている関係もありそうだ。
 おかげで人類はなんとか勝利を得ているわけだが、「次の戦争」はどうなることやら……さすがに火星まで攻め込むことはできないし、コミュニケーションの取れない相手に終戦の方法まで考えなければいけないんだよなぁ。
 それは人類の叡智を結集する必要があるわ。

 火星人の脅威を前にアメリカが新兵器を矢継ぎ早に送り出している。この調子で核兵器が火星人相手に使われるのか、気になるところだ。最悪の場合はボルネオ島の熱帯雨林が消滅する……地球への降下を許してしまった以上は、犠牲なくして勝利なしである。

 FSに対空砲をつぶされながら戦う戦艦の姿に著者のデビュー作「鋼鉄のレヴァイアサン」を思い出した。ヴァツーチンがいればトライポッドなど……!?

横山信義作品感想記事一覧

宇宙戦争1943 (朝日ノベルズ)
宇宙戦争1943 (朝日ノベルズ)
カテゴリ:SF | 13:51 | comments(0) | trackbacks(0)

宇宙戦争1941 横山信義

 41年ぶり二度目の火星人襲来!イギリスが各国に秘密にしていた火星人の襲来が第二次世界大戦の最中、日本が真珠湾を奇襲するタイミングで行われる。
 おかげで米海軍は壊滅を通り越して、重油タンクとオアフ島の市街地ごと消えた……生物として違うだけに、まったく容赦がない。
 イギリスもドイツもソ連も国内を襲われており、日本は遠征先で火星人の兵器(トライポッド)と衝突している状況だ。本土が攻められなくて幸運だったと喜んでいるけれど、イタリアも攻められていないんだよなぁ……国力を冷静に分析して、上から順番に攻撃しているだけかも。フィリピンや東南アジアへの侵略が説明できないけれど……そちらを各国が協力して分析する作戦も開始されたので「ファーストコンタクト」モノとしても楽しみだ。
 イギリスはトライポッドを回収して分析できていないのか?伊吹秀明氏による同種の「宇宙戦争勝手に引き継ぎ」小説では各国がトライポッドのコピーに成功して異次元な勢力争いを繰り広げていたなぁ。

 火星人が世界大戦の最中に攻め込んできて人類を一致団結させたのは、戦争で消耗させるメリットよりも、戦争で兵器が発達するデメリットの方が大きいと考えたからか。
 トライポッドは戦艦でしか撃破できておらず(引き替えに交戦した四戦艦はすべて沈没している)FSの略称で呼ばれる「空飛エイ」も体当たりでしか撃墜できないなど、1941年の人類には非常に手強い相手だ。これはもしかして大和大活躍!?
 敵が強すぎるほど強いおかげで日本とアメリカの戦争が「なかったことにされる」くらいの奇跡が起きている。

横山信義作品感想記事一覧

宇宙戦争1941 (朝日ノベルズ)
宇宙戦争1941 (朝日ノベルズ)
カテゴリ:SF | 21:18 | comments(0) | trackbacks(0)

メソポタミアの神話〜神々の友情と冒険 矢島文夫

 古代メソポタミアにおいてシュメール人やアッカド人、アッシリア人などによって粘土板に印された神話を整理して紹介するジュニア向けの本。欠損していて不明な部分が多い神話を著者がおぎなって意味が通るようにしている。繰り返し部分は割愛されているが、それでも目立つものがあった。
 おそらく学校の教材として使用された関係であえて繰り返し部分が多くなっていたのではないか。

 イナンナが地下界に行く話は門を通るたびに装飾を取られていって最後に全裸になるところが「注文の多い料理店」を連想させた。宮沢賢治が知っていた可能性はあるのかな?
 世にも有名なギルガメシュ神話は、山男エンキドゥが妙に賢いところが面白い。そんなに頭脳明晰な答えを返していい育ちをしていないと思うのだが、当時の人々は設定とキャラクターに違和感を覚えなかったのかな。(動物と一緒に水や草をとっていたところは無視して)山男は賢いものだという常識があったのかもしれない。

 神では圧倒的に「困ったときのエア神」である。とりあえず相談にいけば人間でも神でも助言を与えてもらえる。とってもありがたい神様だ。みんなにドラえもん扱いされている。
 イナンナはスイーツ。事実を指摘されて怒り、襲ってくるとか始末におえない。多神教の神らしい理不尽さである。

 いったん問題がこじれて大きくなってしまうと血を見ずには解決できなくなってしまうのは神々の世界でも同じなのだと、ティアマトに関する物語を読んで思った。血縁関係があっても容赦なしである。

 意味不明な点もあるが、歴史時代の初期から物語性豊かな作品が存在したことがよく分かった。


 古代メソポタミアを舞台にした作品「四方世界の王」で、マルドゥーク神が50の欠片に分かれている設定はマルドゥークの名前が50個あることから来ていたんだなぁ。ナムルもシャズもマルドゥーク神の異名に数え上げられていることに気づいて感動した。

関連書評
古代メソポタミアの神々 三笠宮崇仁・岡田明子・小林登志子
バビロニア都市民の生活 S.ダリー著/大津忠彦・下釜和也 訳
五〇〇〇年前の日常〜シュメル人たちの物語 小林登志子
四方世界の王1巻 定金信治・雨音たかし

メソポタミアの神話―神々の友情と冒険 (世界の神話)
メソポタミアの神話―神々の友情と冒険 (世界の神話)
カテゴリ:文学 | 21:50 | comments(0) | trackbacks(0)

「弥生時代」の発見〜弥生町遺跡 石川日出志

 うっう〜!モールスの薫陶をうけた第二世代の日本人達が発見した縄文土器とは異なる弥生土器とそこから展開した弥生時代認定に関するドキュメント。
 考古学の草創期ということもあるのかもしれないが、アマチュアの蒔田鎗次郎氏が大きな役割をはたしており、研究方法の先進性もあいまって強く印象に残った。土器の編年についても九州のアマチュア研究家、森本六爾氏が活躍していて、弥生時代はアマチュアが育てたと言えないこともなさそうだ。

 肝心の弥生町遺跡については、有坂氏が土器を発見した場所がはっきりしなくなっており場所の細かい議論などがあったりする一方で、遺跡の全体像については未だに推定部分が残る。
 発見されたのは東京にあったからだが、研究が進まないのも東京にあるせいだ。なかなかままならない。
 東京大学がすぐ近くにあるそうで、加賀藩江戸屋敷だけではなく、弥生時代の遺跡にも関わっているのかと東京大学のイメージが変化していく。

 最初に発見された土器が、整理していくと実は古墳時代に属するかもしれない件については、考古学者の柔軟性を評価することにしたい。するしかない。

関連書評
泉北丘陵に広がる須恵器窯〜陶邑遺跡群 中村浩
吉備の弥生大首長墓〜楯築弥生墳丘墓 福本明
弥生実年代と都市論のゆくえ〜池上曽根遺跡 秋山浩三
東西弥生文化の結節点〜朝日遺跡 原田幹
南国土佐から問う弥生時代像〜田村遺跡 出原恵三
シリーズ中の弥生時代の本は意外と?少ないのだ。

新泉社 遺跡を学ぶシリーズ感想記事一覧

「弥生時代」の発見―弥生町遺跡 (シリーズ「遺跡を学ぶ」)
「弥生時代」の発見―弥生町遺跡 (シリーズ「遺跡を学ぶ」)
カテゴリ:歴史 | 00:23 | comments(0) | trackbacks(0)

ビジュアル版 古墳時代ガイドブック 若狭徹

 別冊02は旧石器時代ガイドブック。別冊03は縄文時代ガイドブック。そして別冊04は――古墳時代ガイドブックだ!!!……弥生時代はどこへ消えた?数世紀におよぶ最大規模のキングクリムゾンを目撃した。

 これまで多くの古墳が遺跡を学ぶシリーズに出てきた。そして、もっと多くの古墳が遺跡を学ぶシリーズで紹介されないままでいる。
 中には陵墓に指定されていて、一冊にまとめるだけの資料が集まらないものや徹底的な盗掘を受けているもの、とても小さいものなどもあるに違いない。
 それでも5000余りの古墳が日本にあるという記載には楽しみが増えた気分になった。きっと、これから発掘される古墳もあるわけで……新泉社の出版はこれからだ!
 シリーズ第五期に御期待ください!!

 古墳ガイドブックではなく、古墳時代ガイドブックなので、ムラでの暮らしや大陸から流入した文化についても詳しい解説がおこなわれている。
 同時に日本独自の祭祀もあり、そのもっともたるものが古墳というわけで、アマノヒボコでかき混ぜられたような混沌の状態だったことが伺える。
 そこから秩序を引き出してきた流れについては、ヤマト王権が飛び抜けた存在だったとする説と、参入も離脱も可能な緩やかな連合体とする説があるようで、日本のはじまりを知る上でたいへん興味深い。

 本書では群馬県(上毛野)の遺跡が多く紹介されており、古墳でも吉備にならんで畿内についで巨大なものが存在したことが分かる。蝦夷との最前線であった関係らしい。
 著者が群馬県の人であることは考慮したほうが良さそうだが、関東の歴史の深さが感じられる内容でもあった。

新泉社 遺跡を学ぶシリーズ感想記事一覧

ビジュアル版 古墳時代ガイドブック (シリーズ「遺跡を学ぶ」別冊04)
ビジュアル版 古墳時代ガイドブック (シリーズ「遺跡を学ぶ」別冊04)
カテゴリ:歴史 | 22:44 | comments(0) | trackbacks(0)

ビジュアル版 縄文時代ガイドブック 勅使河原彰

 表紙では土偶が総出で歓迎してくれる縄文時代のガイドブック。縄文のビーナスもいいけれど(反対側には仮面のビーナスも)遮光器土偶の異彩には目を奪われる。
 日常生活で使用する土器にいたるまで日本中の人々がみょうちきりんな物を得意げに作っていた時代とイメージすれば、案外実体に近いかもしれない。
 よいことだ。

 本書の内容は小さなことから、大きなことへ、かゆいところに手が届く親切さで丁寧に紹介してくれている。
 縄文時代にも階級差があったとする説がいきおいを得始めているが、著者は真っ向から反対する立場のようだ。確かに世襲になっていないなら平等性のゆらぎは限定される。
 一世代の差が次の世代に引き継がれていかないなら、階級も固定されない。

 ひとつの世帯が基本的に両親と子供による「核家族」と考えられる点が興味深かった。日本人は一万年を核家族で過ごしてきたのだ。大家族が伝統的な生き方?なにそれ?(と言っても注で、近代の核家族とは異なり共同体から完全に独立して生活できたわけではない点に言及されている)。
 他にも農業や黒曜石などの採掘生産の話題があり、分業がおこなわれないまでも、縄文人が彼らの知識で周辺の資源を最大限に活かして生きていたことがわかる。
 そうして、いろいろな方向に蓄積をおこなったから、弥生時代の水稲栽培という一つの方向に飛躍できたのだろう(北海道と南西諸島は水稲栽培が向かないので別の方向に成長している)。

新泉社 遺跡を学ぶシリーズ感想記事一覧

ビジュアル版 縄文時代ガイドブック (シリーズ「遺跡を学ぶ」別冊03)
ビジュアル版 縄文時代ガイドブック (シリーズ「遺跡を学ぶ」別冊03)
カテゴリ:歴史 | 21:58 | comments(0) | trackbacks(0)

北方古代文化の邂逅〜カリカリウス遺跡 椙田光明

 北海道の東の果て、標津。町の北側にある丘陵地帯には大量の竪穴式住居が、現代でもそのまま窪みが確認できる状態で存在していた!
 トビニタイ文化と擦文文化の住居跡が近接し、アイヌ文化へのつながりも見える重要な遺跡の内容が紹介される。

 縄文時代以降、日本の本州とは異なった歴史を歩んだ北海道の歴史が駆け足で紹介されている。それに圧迫されて遺跡の紹介ページが減ってしまっているが、すばやくオホーツク文化やトビニタイ文化のことを知ることのできるメリットはあった。
 擦文文化の縦穴式住居が、トビニタイ文化の竪穴式住居と同時代に存在していたらしいことを、立地による棲み分けの説明を読むまで理解していなかった。
 サケ・マス資源の利用に差があるものの、二つの文化は同居して暮らし、だんだんと変化していったようだ。平和的すぎてイメージしにくい……。

 特殊な大型や長方形の竪穴式住居(住居として利用されていない可能性が示唆されているが)の考察や、アイヌ時代に入ってからのチャシに関するまとめもあって、施設に注目したコミュニティーの姿がおぼろげながら見えてきた。

 ヒグマにおびえながら三つ叉の干し草用フォークを住居の中央に刺して炉の形式がトビニタイ文化か擦文文化か区別をする作業を1500の住居跡に対して行った著者の苦労が住居群を色分けした図から偲ばれる。

 地名にイタリアを感じてしまった。ポー川がモロだし、カリカリウスもローマ人の名前っぽい。不思議だな。もっとも発音を直接聞いたらぜんぜん別物かもしれない。
 航空写真の標津川に多くの三日月湖があったが工事で直線化されたときに生まれた人口の三日月湖っぽいな。

関連書評
北辺の海の民〜モヨロ貝塚 米村衛
北の自然を生きた縄文人〜北黄金貝塚 青野友哉
北の縄文人の祭儀場〜キウス周堤墓群 大谷敏三

新泉社 遺跡を学ぶシリーズ感想記事一覧

北方古代文化の邂逅・カリカリウス遺跡 (シリーズ「遺跡を学ぶ」098)
北方古代文化の邂逅・カリカリウス遺跡 (シリーズ「遺跡を学ぶ」098)
カテゴリ:歴史 | 09:12 | comments(0) | trackbacks(0)
| 1/3PAGES | >>