縄文世界の一万年 泉拓良・西田泰民/責任編集
2015.09.30 Wednesday | by sanasen
イラストのボリュームが多いとはいえ、集英社がこういう本を出版していることに驚いた。薄くて素早く読めると想像していたら、復元イラストのラッシュが終わったところで内容がボリューム満点になって思いっきり減速した。
最後のモノクロ部分は化学分析の話に突入して、粘度がものすごい。泳ぎ切るのは意外とたいへんだった。
それだけ内容が詰まっているとも言えるわけで、1999年時点ながら縄文時代研究の全体的な状況が分かる内容になっている。
縄文人が食べていたものや人口密度のデータは興味深かった。特に人口密度は狩猟採集民としての縄文人の繁栄と限界を見事に描き出してくれていた。
狩猟採集民としては比較的に多くても1km^2に1人以下しか寂しいものだ(関東や中部に限ってみれば1人を突破している例もある。山から糧を得られても山地の割合は重要だ)。そして、奈良時代の人口密度がすごい。
制度化された社会の力を感じる――蝦夷の東北だけが一桁すくない点からも。
表紙では女性がウリボウを抱いた姿が描かれていて、まるで縄文人がイノシシの家畜化を進めていたみたいである(本文中ではまだ判然としない扱いだ)。
そこで思い出したのがアイヌのクマ祭りで、古来はイノシシの子供を本州から手に入れて大きくなるまで育てて犠牲にしていたという。北海道での入手が難しくなったためにヒグマに変わったそうだ。
人口密度の点でも近代アイヌの水準が縄文人に比べられていたが、もしかしたら縄文人もクマ祭りに似たような部分的な牧畜をしていたのかもしれない。まぁ、本文中にはひとこともそんなことは書かれていなかったのだが。
狩猟採集民としては豊かに見える縄文時代も15歳時の平均寿命は16年しかなかったそうで、丁寧な研究データの集合と分析から、やはり彼らも大変だったのだと思い知らされた。
関連書評
ビジュアル版 縄文時代ガイドブック 勅使河原彰
縄文人を描いた土器〜和台遺跡 新井達哉
国宝土偶「縄文ビーナス」の誕生〜棚畑遺跡 鵜飼幸雄
縄文世界の一万年 (imidasSpecialIssue)
最後のモノクロ部分は化学分析の話に突入して、粘度がものすごい。泳ぎ切るのは意外とたいへんだった。
それだけ内容が詰まっているとも言えるわけで、1999年時点ながら縄文時代研究の全体的な状況が分かる内容になっている。
縄文人が食べていたものや人口密度のデータは興味深かった。特に人口密度は狩猟採集民としての縄文人の繁栄と限界を見事に描き出してくれていた。
狩猟採集民としては比較的に多くても1km^2に1人以下しか寂しいものだ(関東や中部に限ってみれば1人を突破している例もある。山から糧を得られても山地の割合は重要だ)。そして、奈良時代の人口密度がすごい。
制度化された社会の力を感じる――蝦夷の東北だけが一桁すくない点からも。
表紙では女性がウリボウを抱いた姿が描かれていて、まるで縄文人がイノシシの家畜化を進めていたみたいである(本文中ではまだ判然としない扱いだ)。
そこで思い出したのがアイヌのクマ祭りで、古来はイノシシの子供を本州から手に入れて大きくなるまで育てて犠牲にしていたという。北海道での入手が難しくなったためにヒグマに変わったそうだ。
人口密度の点でも近代アイヌの水準が縄文人に比べられていたが、もしかしたら縄文人もクマ祭りに似たような部分的な牧畜をしていたのかもしれない。まぁ、本文中にはひとこともそんなことは書かれていなかったのだが。
狩猟採集民としては豊かに見える縄文時代も15歳時の平均寿命は16年しかなかったそうで、丁寧な研究データの集合と分析から、やはり彼らも大変だったのだと思い知らされた。
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ビジュアル版 縄文時代ガイドブック 勅使河原彰
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