野鳥撮影術〜鳥の魅力を引き出す表現テクニック 山田芳文

 日本に生息する野鳥を魅力的に撮影する方法がわかるハウツー本。撮影者の注目点が説明された鳥の写真集としても楽しめる。
 一枚の写真を撮るためにも入念な下準備があり、しっかり計画を立てても自然の存在である鳥や背景となる雲などが思い通りに動いてくれるとは限らない。
 さすがに著者は鳥の動きを知り尽くしていて、写したい場所に鳥がくることを予想してシャッターを切れているようだが、アマチュアの野鳥撮影家にはなかなか真似できない芸当かもしれない。

 それでも著者が紹介したさまざまな野鳥の撮影方法を試していくことで、撮影した写真が単調になる事態は避けられそうだった。
 絞りを開放したボカシの多様、鳥の目にピントを合わせること、などは強く印象に残った。

 構図の取り方や意図の反映方法は自分が趣味でやっている3DCGを作る上でも参考になると感じた。

関連書評
GIMP2.6スーパーリファレンス 野沢直樹

野鳥撮影術―鳥の魅力を引き出す表現テクニック
野鳥撮影術―鳥の魅力を引き出す表現テクニック
カテゴリ:ハウツー | 18:57 | comments(0) | trackbacks(0)

リンク 意外な起源〜剣からスパイ機へ ナショナルジオグラフィック

 てっきり剣とスパイ機のデザインに共通性がある(スパイ機が何らかの参考にした)という話だと思っていた。わらしべ長者ではないけれど、秦帝国の剣から技術の発達を追いかけていく話だった。かなり強引で、どんなルートでも設定可能に思える。
 そもそも秦の剣が、柔らかい青銅と堅い青銅をミックスする技術で三割伸びたことが統一の原動力になったとする一歩目から疑問を覚える。剣は主力兵器ではあるまい。槍だったら柄で長さを補えるはずで……「戈」には大きなプラスに働いた可能性があるかもしれないが、すでに戦車の時代じゃなくなっている。
 かなりダーティーなプレデターを技術の粋をあつめた存在ともちあげられることにも抵抗感があった。同じ兵器である剣から始めているので、まだ格好がつくけれど、平和的な技術から話をスタートさせていたら「終着点はこんなものか……」と残念に感じただろう。
 まぁ、兵器には最新技術が盛り込まれやすい事情はあるのかなぁ。途中の技術は兵器じゃないなんて言い出すとキリがない。

 あと、ナビゲーターの肩書き「イノベーション・コンサルティング」からヤバい要素しか感じられなかった。いまは別の肩書きを名乗っていそう。
 自分の手で青銅の鋳造作業に挑戦している点などは割と好感がもてるのだが。

関連書評
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秦漢帝国へのアプローチ 鶴間和幸 世界史リブレット6
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ジャックダニエル〜伝統の製法と味に迫る ナショナルジオグラフィック

 テネシー州リンチバーグ。禁酒法がいまだに有効な地域で生産されているウイスキー「ジャックダニエル」。酒飲みには有名らしいその製造現場を知ることができる。
 ウイスキーの色は100パーセント、風味も半分くらいはホワイトオークの樽から来ていることを知って驚いた。蒸留された直後のウイスキーは水みたいに透明で、純粋なアルコールに近い(とはいえ、酵母が大事にされているのだから、単純なアルコールでもないはず)。

 ルイビルにある樽工場はジャックダニエルにとってなくてはならない存在だと分かった。でも、別会社で樽を売ってもらっている。災害の多い日本では供給元の分散が話題になりそうだが、大陸地殻の土地なら余裕をもっていられるのだろう。
 ウイスキー工場の方は石灰岩から湧き出す鉄分のとれた水源に依存しているので分散させようがない。

 いろいろな職人の話を聞けて興味深かった。この道一筋で十年以上やっている職人もたくさんいる。誰もが転職しまくっているわけでもない。
 ジャックダニエルでは社員の誰もがテイスティングを行うことも面白い。そういう日は自動車以外で通勤するのであろうか。

 リンチバーグもルイビルもアメリカ南北戦争で地名が出てきた気がした。それでちょっとだけ湧いた親しみが、そこで仕事をしている人たちを知ることで強化された。

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つくってあそぼう14〜酢の絵本 やなぎだふじはる・へん

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行ってみたい世界の灯台

 まず灯台を目的に海外旅行する発想がなかった。
 目から鱗が落ちる思いだった。
 何事にもマニアはいるもので、国際機関が世界の灯台100選とか作っているらしい。日本の灯台も多数ランクインしているようだ。
 3000ある日本の灯台で内部を見学可能なものは40しかないと書いてあったが、そのわりに紹介されている灯台の見学可能率は高かった。注目の灯台には管理人も気を使っているらしい。

 出てくる地域にはかなり偏りがあって、ヨーロッパとアメリカ、日本がずいぶん多めである。人口比でいえばニュージーランドも多い。
 灯台が必要だった時代に長期間残る建築物を造れた地域が偏っているためと考えられる。

 それにしてもインド洋の灯台がひとつもないのは寂しかった。イギリス人が建てた灯台などたくさんありそうなものだけどな。保存状態が悪いのか?
 マカオの灯台はマカオ出身のポルトガル人建築家が設計していて、マカオの特殊な歴史を強く感じさせてくれた。植民地出身の宗主国人もいるんだよな……。

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カテゴリ:写真・イラスト集 | 12:32 | comments(0) | trackbacks(0)

はじめての浮世絵3〜いろんな浮世絵を楽しもう!

 深光冨士男・著

 浮世絵に存在した多彩なジャンルが整理されている。江戸時代の人が子供をあたたかい目でみていたことが改めて実感できた。姉や母が子供の世話をしている絵はたくさんあっても、兄がなさそうなのは美人画要素もなくなってしまうから?

 役者絵にくらべて美人画は一見同じ顔にみえるとの解説には現代の「判子絵」を連想した。細かくみればちゃんと違いが描写されているらしい……。

 遊び心のある絵もおおくて、雷神がうっかり川に落ちて這い上がろうとしているところを河童にひっぱられている絵には腹を抱えて笑った。
 元々意図されていた笑いではないけれど、はんじ絵の「不明 いまだに、なぞのままです」にも笑いが止まらなかった。答えも配布しないから。
 紹介されている風刺画で歌川国芳がねらった「さまざまな解釈を生むことにこそ、ねらいがあったようです。その結果、話題性、売れ行きアップ」もエヴァンゲリオン的というか……むかしから頭をひねって商品開発がされていたことが分かる。

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カテゴリ:雑学 | 17:46 | comments(0) | trackbacks(0)

はじめての浮世絵2〜人気絵師の名作を見よう!知ろう!

 深光冨士男・著

 江戸後期はずっと歌川派のターン!
 子供向けなのでしかたないが、ウタマロが世界に知られている背景に春画をあげられない片手落ち感……あくまでも美人画の一種と処理してしまえば、それまでなのかな?

 巻末では日本国内の浮世絵博物館・美術館が紹介されていて、北斎の名を関したミュージアムが2つに対して、広重は4つと大きな差がでていた。ほかには菱川師宣記念館があった。
 この比較では日本中の風景に密着した広重に有利に働いたのかな。

 明治期になっても活動していた浮世絵師は、当時の人々が求めていた文明の情報を届けつづけていた。浮世絵は最後までマスコミの機能を果たしていたんだな。
 役者絵が一ジャンルになるほど人気なのも変わらぬ国民性を感じさせる。

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人気絵師の名作を見よう! 知ろう!
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カテゴリ:雑学 | 17:48 | comments(0) | trackbacks(0)

はじめての浮世絵1〜浮世絵って何?どうやってつくるの?

 深光冨士男・著。
 浮世絵を起源から知ることのできる絵本。絵は浮世絵の写真であるが。
 とてもよくまとまっていて、大人でも勉強になる内容だと感じた。(肉筆浮世絵じゃない)浮世絵は絵師一人ではなりたたず、版元、彫師、摺師との共同作業によって世に送り出されていた。
 それぞれに腕の見せ所があるのも面白い。自分で彫ったり摺ったりしてみる絵師はいなかったのかな……絵師というより版画家になるな。

 幕府による検閲が浮世絵研究者にとっては重要な情報源になっている点は皮肉に感じられた。改印デザインを変えていたのは、せめてもの複製対策だったのかなぁ。どうせ彫られた姿になってしまうので、少しすれば改印の贋作は簡単だ。
 たぶん無印で出すよりも改印の贋作の方がハイリスクだろうけど。

 知らなかった浮世絵師として初期に活躍した鈴木春信がいた。かなり独特の人物画を描く人で、何度も見ていると癖になりそう。
 キャプションを読む前に、人物から鈴木春信の絵だと気づけたときは嬉しかった。
 自分の知らない絵師はいくらでもいる。浮世絵の世界は実に奥が深い。

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月岡芳年の武者絵〜大日本名将鑑 歴史魂編集部

浮世絵って何? どうやってつくるの?
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カテゴリ:雑学 | 17:45 | comments(0) | trackbacks(0)

Q&A はじめよう!シカの資源利用 丹治藤治

 著者は、急速に生息数が増えてしまった日本のシカ問題に対して、資源利用による解決を提案している。単純な駆除ではシカを驚かせ、広範囲に移動させてしまうことで、逆効果になってしまっているとの主張だ。
 あと、大雪に非常に弱く、大量死が起きていたのが、地球温暖化の影響で安定して越冬するようになってしまった由。
 それでも、オオカミがいれば調整できたのかもしれないが。
 エゾジカについては頭数が減少に向かっているらしく、本州との差が気になった。さすがにあっちは降雪量が減っていないから?

 日本が参考にすべき例として、中国とニュージーランドにおける養鹿が紹介されている。中国での鹿飼育の伝統は200年を超えているらしく、新しい家畜への一歩を踏み出していると言えそうだ。
 ニュージーランドにはアカシカとニホンシカが導入されてアカシカが生き残り、増えすぎたものを民間主導の対策でやっと落ち着かせているとのこと。
 ニホンシカだったら直接的な参考になったので、ちょっと惜しい。

 国産の伝統工芸品でも中国産のキョンなどの皮が使われているらしく、シカの増加対策抜きでもそこは何とかした方がいい気がした。
 日本産のシカ皮で再興された印伝の写真をみて著者たちの本気を感じた。幼角を使った漢方薬については……漢方薬にするために希少動物を殺している悪いイメージを払拭するためにも、漢方薬業界は持続可能なシカの幼角を使うべきかもしれない。

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野生動物と共存できるか〜保全生態学入門 高槻成紀

Q&A はじめよう!シカの資源利用
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カテゴリ:ハウツー | 22:32 | comments(0) | trackbacks(0)

寄り道の多い数学 大沢健夫 岩波科学ライブラリー172

 数学コンクールに出題された問題を大量の寄り道をくりかえしながら解説する本、らしい。正直、これが理解できる数学に堪能な高校生を尊敬してしまう。
 もっとも才能だけの問題ではなくて、著者が引用しているティリクレ12歳の言葉「いいえ僕は分かるまで読むのです」が出来ていないせいもある……。

 本書は数学に関わる重要人物の歴史を知ることができる構成にもなっていて、古代から20世紀まで偉大な数学者たちの名前がならんでいる。
 ちょっと昔のルネサンスの数学者であっても生没年がしっかり分かっていることが興味深かった。ヨーロッパにおける数学者の地位は歴史的に高かったのかもしれない(宮廷数学者の話は高校の数学教師から聞いた覚えがある)。

 基本的に難解な話ばかりだが、それらが現代の生活に欠かせない技術を支えていることも説明されており、理解できなくともできるかぎり襟を正して読んだ。

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カテゴリ:科学全般 | 22:05 | comments(0) | trackbacks(0)

山登りABC テント泊登山の基本 高橋庄太郎

 自分のすみかとなるテントをかついで山に登るテント泊登山。ややハードルが高く感じられるレジャーについて、細かくレジャーしてくれている。
 登山はしないが、キャンプを楽しみたい人にも有用な情報がたくさん含まれていた。やっぱり装備が増える分だけ準備と片づけ、装備のケアが大変になるので、そういうのも含めて楽しめる人向けのレジャーである。

 いろいろ先進的な装備がでてくるので、それらがなかった時代のテント泊登山が気になってしまった。ひたすら運び上げる重量を増やして対応していたのかな。
 テントも今みたいに軽量高性能なものではなかったはず。

 あえて昔の装備を使って当時の登山を再現する登山もおもしろそうだ。

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今日からはじめる山歩き 森田秀巳・松倉一夫・田口裕子

テント泊登山の基本 (山登りABC)
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カテゴリ:ハウツー | 22:04 | comments(0) | trackbacks(0)
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