よくわかる人工知能〜何ができるのか?社会はどう変わるのか? 松尾豊

 すべての漢字によみがなが振られた子供向けの学習本。人工知能についての基礎的な知識を得ることができる。

 人工知能のブームが三回あって、現在はディープラーニングを使った三回目のブームらしい。このままブレーキが掛かることなく四回目のブームを経験せずに人工知能が社会に浸透しそうである。
 二回目の「エキスパートシステム」が、SF小説航空宇宙軍史に出てきたラザルスのシステムっぽい。年代的にディープラーニングは採用できないからなぁ。
 人間の神経を模倣した方法がコンピューターに応用しても、ここまで有効ということが驚きだった。未知の思考方法をもった宇宙人がいるとして、それを予想して模倣することはコンピューターにはできない、ってことでもあるかな?

 人工知能が代替していく仕事は警備の見回りなどとされていて、銀行の対人業務は人間が必要としている。
 でも、日本の場合は窓口業務こそ人工知能の需要が高いんじゃないかと思ってしまった。特にクレーマーの相手は人工知能にやらせておけばいいよ。

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よくわかる人工知能 何ができるのか?社会はどう変わるのか? (楽しい調べ学習シリーズ)
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カテゴリ:雑学 | 21:18 | comments(0) | trackbacks(0)

世界の美しい本屋さん 清水玲奈

「いつか行きたい世界中の名店ガイド」ということで、日本の書店はひとつも取り上げられていない世界の美しい書店写真集。
 あのTSUTAYA図書館が志向しているものが、おぼろげながらわかった気がしないでもなかった。カフェが併設されている本屋がけっこう多い。中には本を置いたBARというお店まで紹介されていた。
 それ以上に元々は別の建物であったものを本屋に改装したパターンが印象的で、その構造をいかした面白い陳列が試みられている。駅舎を本屋に改装して、だんだんと面積を広げている「バーター・ブックス」などは、建物を駅としても復活させたいと共同オーナー・店長が語っていて意気込みが凄い。

 お店紹介の最後に載せられている店長やオーナーのインタビューが、彼らの人生の一端を覗かせてくれて、非常に興味深かった。
 店主の父親が建物を買ったら「元書店だから書店として運営しろ」と無理難題を町役場にふっかけられて誕生したイタリアの「パラッツォ・ロベルティ書店」などは店主のヴェロニカ氏は今でもあまり本を読まないが作家と話すのは好きと語っていて、本大好きな人々とは違った視点を持っていそうだ。
 中東旅行の準備に本をあつめていたら「ぼくたちの考えた最高の旅行書店」を作る運びになってしまったドーント・ブックス・マリルボーンの店長とオーナーもおもしろかった。
 人生こうありたいものだが、やはり彼らの栄光の影には書店経営に失敗した多くの人が世界中にいるのだろうなぁ……。

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カテゴリ:写真・イラスト集 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0)

セラミックス 第53巻 7月号(2018年)

■ Ce3+を発色源とする新規な優環境型の赤茶色無機顔料
 原発事故のせいでマイナスのイメージがついてしまっているセリウムであるが、赤色無機顔料として無害なものを作れる可能性があるらしい。酸化鉄では需要を満たせないんだな……
 日本の希元素に頼らない政策によって余ってしまっているので用途を模索している事情は皮肉だった。

■ 酸化亜鉛受光層によるUVセンサー
 どうも、この筋の研究では亜鉛がけっこう熱いらしい。発見はけっこう遅れた元素だしなぁ。
 健康目的というか、子供を心配する親が関連商品をもたせたがりそうな技術だ。学校に採用されれば一気に広がるかも?

■ コアシェル型セリア微粒子による構造色の発現
 構造色は経年劣化しない!そういう強みを活かそうという話。そういえば正倉院の玉虫厨子は今でも綺麗なのかと思ったが、そもそも玉虫の羽根がほとんど失われているらしかった。復元品でイメージが混乱していた。

■ 無機蛍光体を分散させた農業用波長変換シート
 透明なシートにルビーを混ぜることで作物が利用できない波長域の太陽光線を利用させる研究。植物側を遺伝子操作して緑色の光に反応させる方法もありそうだけど……
 実用化されればルビーを使っているとしてブランド化してくることが瞼に浮かぶような技術だ。

■ ホタテ貝殻から創製した蛍光体とその応用
 炭酸雰囲気でホタテ貝殻を焼けば蛍光する。ホタテ以外の貝殻でも蛍光するのか?個人的にはそっちが気になってしまった。大気中で高温にさらしても数日間は光るらしいので個人レベルでもアサリの貝殻などで試せるかも?
 利用方法については実用化のために製薬会社が導入する精巧極まる機械のことを想像して頭が痛くなった。それでもお金を持っている業界なので必要があれば導入するだろう。


■ UNITECR2017とサンティアゴ訪問
チリの首都サンティアゴで開かれた学会の報告と、サンティアゴの観光案内。日本から直行便が出ていなくて27時間の旅になったそうだ。これにお金を出してくれる筆者の会社(新日鐵)は、やっぱり凄いな。聖堂の姿などには新大陸でもけっこう歴史が感じられた。

■ 東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所 大場研究室
 計算によって目的とする物性をもった物質をあらかじめシミュレーションして材料開発の近道を作ろうという研究をしている研究室。計算のために利用されている量子力学が直接的に一般の生活に役立っていることが分かる。
カテゴリ:工学 | 23:24 | comments(0) | trackbacks(0)

NHKスペシャル「完全解剖ティラノサウルス」 土屋健

「最強恐竜 進化の謎」と副題にあるが、進化の謎についての説明は不十分に感じられた。番組の副読本にはなるかもしれないが、単独で楽しむためには前提知識が必要なのではないか。
 著者は入門書と位置づけていて、本当に進化の謎を説明しているらしき「ティラノサウルスはすごい」に読者を誘導したいみたいだった。あと、ウェブサイトで補足説明をしているらしいので、そっちまでしっかり読めば「進化の謎」にしっかり納得できるかもしれない。
 3D映像も見れるらしい。

 「超肉食恐竜」とまで持ち上げられているらしい、ティラノサウルス類専門の図鑑としては情報が非常に限定されている種までイラスト化されていて、なかなか役に立ちそうだ。

 進化の謎についてはアメリカ西部にあった大陸「ララミディア」でティラノサウルス類が大きくなったことを押さえることができれば十分だろう。
 アパラチア大陸の恐竜についてはほとんど分かっていないことが気になる。カナダでみつかっている恐竜も西部が中心なんだな。

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NHKスペシャル 完全解剖ティラノサウルス 最強恐竜 進化の謎 (教養・文化シリーズ)
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カテゴリ:地学 | 19:03 | comments(0) | trackbacks(0)

完全サバイバル術〜もしもの時の生存マニュアル ナショジオ

 完全を名乗るには取り上げている例の少なすぎる生存マニュアル。非常に幅の広い危険を取り扱っているのも確かで、万が一おなじ状況に陥ったら、何としてでも適用したいところではある。

 一番可能性が高いのは食べ物を喉につまらせた場合だろうな……それはこれをみる前から知識としては知っていた。
 暴走するエスカレーターの事故はビッグサイトでもあったことを思い出した。てすりに乗って降りる判断ができるならば、てすりを乗り越えることも出来ると、CGを動かされて気づく。ある程度の身軽さはどうしても必要になる。
 エスカレーター事故が積み重なりそうになる人の手を引っ張って助けている人が映像に映っていた。その咄嗟の判断力をたたえたい。

 崖から飛び降りるときにパラシュートが絡まった事故は足に500kgfの力が掛かって折れるけれど岩を蹴るのが正解という恐ろしさ。とてつもなくリスクの高いスポーツだ。それに見合った爽快感があることは想像できる。

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焚き火の達人〜火おこしの超基本から応用テクニックまで 伊澤直人・監修
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火星の人 アンディ・ウィアー 作/小野田和子 訳

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ナショナル ジオグラフィック 完全サバイバル術 もしもの時の生存マニュアル [DVD]
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カテゴリ:ナショナルジオグラフィックDVD | 22:22 | comments(0) | trackbacks(0)

ミーアキャット〜過酷な砂漠を生き抜く家族 ナショジオ

 家族自体も過酷なんだな……ボスの座をめぐる「メキ」と「クラリス」姉妹の骨肉のあらそいが展開されている。生きにくくても家族を離れたら出産や子育ては不可能に近いし、けっきょくは膝を屈して戻るしかないと……かなり世知辛い感じがした。
 ミーアキャットと呼ばれながら鳴き声が完全に犬である点もつらかった。ジャッカルの襲撃に穴の中で抱き合って怯えている様子は、彼らにも恐怖があることが感じられるし、かわいかった。

 ミーアキャットと違ってジャッカルはシングルマザーでやっていけることもありそうに描かれている。よほど運が良くないと最後まで子育てできない気はするものの、ミーアキャットよりは可能性がありそうだ。

 舞台となったナミブ砂漠が過酷でありながら生命にあふれた場所であることも伝わってきた。歴史的な砂漠は、砂漠化による砂漠とはまったく別物であることも分かる。

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鳥類の祖先ベロキラプトル ダイナソー・プラネット |

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DVD ミーアキャット 過酷な砂漠を生き抜く家族
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カテゴリ:ナショナルジオグラフィックDVD | 12:13 | comments(0) | trackbacks(0)

図解 最高の戦略教科書 孫子 守屋淳

 10万部売れたという「最高の戦略教科書 孫子」の図解簡略版。内容は薄くなっている分、読みやすさはアップしている。値段もお手頃だ。ビジネスへの利用を強調する度合いがあがっていて、イラストにもサラリーマンの姿が頻出していた。
 だが、現代において孫子を応用すればコンプライアンス違反になりかねないから注意が必要だ。日大アメフト部問題などは、反則を命令された選手を処刑される二人の美女に見立てた孫子の策を使っていたようにも見えるのだが、結果は大炎上である。
 すなわち現代においては「不敗」の体勢を確保できなくなっているわけで、そのあたりは孫子にしたがうつもりで、軌道修正しなければならない。
 が、そんなことを語っている孫子解説書はまだ読んだことがない。本書でも、残念ながらそのあたりへの意識は弱かった。相手企業が炎上すればチャンスとは書いているのだが……。

 あいかわらず孫子と比較できる古今の名言をあつめていて、そっちが孫子以上に興味深く感じられた。
 クラウゼヴィッツと孫子で正反対のことを言っている部分があるとの指摘など、柔軟に兵法書を読み解くためのヒントを与えてくれている。状況をきちんと把握せず、金科玉条にしてはダメなのだ。敵を知り己を知れば百戦殆うからず。

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最高の戦略教科書 孫子 守屋淳
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図解 最高の戦略教科書 孫子
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カテゴリ:ハウツー | 20:15 | comments(0) | trackbacks(0)

図説 室町幕府 丸山裕之

 足利尊氏にはじまって、足利義昭に終わる。
 室町幕府の姿をトピックスごとに整理した本。
 室町幕府の歴史もそれなりに長く、時代時代(というより将軍)によって、変化している部分もある。その横糸をつなげて見るためには多少難しいところもあるが、非常にわかりやすくまとまっている本だった。

 幕府側からみれば、ともかく鎌倉府の動きが厄介で、常に中央の権力から離れようとする遠心力が働いている。
 鎌倉に幕府を置けなかった反動ともいえるが、実際に鎌倉を本拠にしていたら、今度は畿内が落ち着かなかったかもしれない。江戸幕府は室町幕府のそういう反省をふまえて成立していると考えると、さらに興味深い。

 室町幕府の収入源は金融業者への課税が大きなボリュームを占めていたらしく、それを徳政令でつぶしてしまってからは、どんどん財政的な裏付けを失っていったようだ。でも、徳政令を出さなければ民衆から見限られて、もっと早くに命脈が断たれていたかもしれない。国家経営の道は厳しい。
 財政管理まで民間業者に任せていたところはヨーロッパの王家を連想させるものがあった。

 将軍についてはほとんど知らなかった将軍でも、新しいことを試みていることが分かった。足利義教が目立つが、他の将軍もおもしろい。
 合戦・政争のまとめでは、内乱がけっこう起きていて、室町幕府が順調な時代は、それを圧倒的な兵力で押しつぶすような戦いができていたことも分かった。
 半将軍、細川政元のクーデターがエグい。
 すっきりまとめられると問題児の足利義政が割とまともに見えてしまう点は注意が必要だろう――もともと著者はかなり義政に同情的な様子。

関連書評
破産者たちの中世〜日本史リブレット27 桜井英治
足利義政と日野富子 田端泰子

図説 室町幕府
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カテゴリ:日本史 | 23:14 | comments(0) | trackbacks(0)

まるごと探求!世界の作物 イネの大百科 堀江武

 日本や他のアジア諸国にとってとても大きな意味をもっている作物イネ。その歴史と生態、今後への展望がみえてくる。
 本書だけから情報をえると、日本の農業の未来は明るい感じがする。意欲的な取り組みを紹介しているのだが、その広がりは見えてこないから。この本も取り組みが広がる助けになればいいなぁ。
 アイガモ農法が中国では1000年以上前から行われていたらしいことには笑った。それこそ一部地域のやりかたで広がらなければもったいないことになる。広がらない合理的な理由もなにかしらあったりするけれど。

 稲と米みたいに言い分ける国は日本以外には朝鮮や中国、もちは日本以外では中国の一部しか食べていないらしい(代わりに日本は米の麺を食べていない)ことなど、国際的なトリビアも手に入った。
 水さえ確保できれば日射量が多いほど育成に有利なため、カリフォルニアやオーストラリアの灌漑でえられる米の田んぼ面積あたりの収穫量は日本を超えているらしい。
 しかし、不安定なオーストラリアの米収穫量グラフをみていると、あてにしちゃいけない気しかしない……一定量はかならず確保して、バイオエタノールにしているわけでもなし。

 アフリカイネとアジアのイネを交配させた品種がアフリカの救世主になる可能性に触れられていた。逆にアフリカイネの遺伝子資源がアジアのイネにとっても役に立つ場合はないのなぁ。
 あと、イネがコムギよりもタケに近縁だと知って驚いた。

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そだててあそぼう6〜イネの絵本 やまもとたかかず・へん
おいしい”つぶつぶ”穀物の知恵 盛口満 文・絵

イネの大百科 (まるごと探究!世界の作物)
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カテゴリ:雑学 | 22:06 | comments(0) | trackbacks(0)

核の脅威〜今この世界を生きているあなたのためのサイエンス

 ナショナルジオグラフィック
 さっすが、アメリカの会社。イスラエルの核兵器にはまったく言及しないーっ!!
 北朝鮮とイランの脅威は強調してもイスラエルにはとことん甘い。そういうところが核兵器を拡散させているのに……既成事実化してしまったが、インドとパキスタンも相当危ない。
 そして、どこよりもテロリスト以下の知性の持ち主が大統領になってしまったアメリカが……テロリストが核兵器を保有したければ、核兵器を持っている国の元首になれば良かったんだ!逆転の発想である。

 この映像によれば北朝鮮はプルトニウム爆弾、イランはウラン爆弾を目指しているらしい。技術協力をしようにも合わないところがありそうだ。もちろん、運搬手段であるミサイルの技術は共有が効く。
 とりあえずテロリストが核爆弾を保有することは難しいとの結論になった。ただし、原子力発電所の爆弾化は格納容器があるから不可能というのも、ダーティーボムがあまり効果的でないというのも、福島第一原子力発電所の事故が起きた後では明らかになっている。
 確かに放射性物質そのものによる死者は出ていないが……。

 放射性物質の検査は列強がアホみたいに繰り返した大気内核実験がなければもう少しやりやすかったはず。自業自得の部分があるのは否めない。

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戦争史大観 石原莞爾

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DVD 今この世界を生きているあなたのためのサイエンス 核の脅威
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カテゴリ:ナショナルジオグラフィックDVD | 21:31 | comments(0) | trackbacks(0)
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