日本語の歴史1〜古代から平安時代 倉島節尚・こどもくらぶ

 琉球語の抹殺ぶりが怖い。アイヌ語は孤立語として取り上げていながら、日本語には他にまったく類例がない言語だとしている……どうして、そういう書き方になった?
 琉球独自の漢字受容があったことが想像できるだけに実際のところが気になった。

 紹介されている昔の文章で、竹取物語の方が源氏物語より原文が読みやすい感じで、ちょっと不思議。宮中の狭い連中がつかう言葉に偏っているせいなのかもしれない。
 日本語は話し言葉としては学びやすいが、読み書きは難しいという位置づけも面白かった。たしかに漢字の読みは難しい。呉音に漢音、唐音と音読みだけでも三種類が存在し得るとか……。
 あと、大テンの心がおちんちんの絵に見えてしまって……ある意味で覚えやすかった。

見て読んでよくわかる!  日本語の歴史1: 古代から平安時代 書きのこされた古代の日本語 (単行本)
見て読んでよくわかる! 日本語の歴史1: 古代から平安時代 書きのこされた古代の日本語 (単行本)
カテゴリ:歴史 | 20:45 | comments(0) | trackbacks(0)

[最新]熱処理のしくみと技術 仁平宣弘

 2017年7月の発行で最新の熱処理技術を教えてくれる本。
 鉄の基本から、今後の発展が期待される技術まで充実した内容だった(難しかったが)。
 左ページに文章を、右ページに豊富な写真やグラフを表示する形式で、比較的読み進めやすかった。

 個人的には破損とその調査法のところが一番関心を持った。応力腐食割れにはSUS304からSUS316Lに変更した方がいいとのアドバイスを受けたことがあったけれど、SUS304Lに変えるだけでも効果があるんだな。
 破損の予防にエッジの排除が大切なことは、コストダウンの流れで無視されそうなので気をつけたい。

 それにしても著者の知識が広範なことには驚いた。これが、ちゃんと積み上げてきた人なんだ……。

関連書評
トコトンやさしい 薄膜の本 麻蒔立男

最新 熱処理のしくみと技術
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カテゴリ:工学 | 10:25 | comments(0) | trackbacks(0)

ライブ・フロム・スペース 若田船長ISSから生中継 ナショジオ

 宇宙飛行士若田光一氏が地上からのインタビューに答えている。もう一人のNASAの宇宙飛行士リック氏の方がたくさん喋っていた気はした。通信のタイムラグが若田宇宙飛行士のときの方が気にならないのは、母国語が違うから考える時間が必要なのだと無意識に思っているからかな。
 しかし、冷静にタイムラグを考えてみると、若田氏の回答はかなり早い。一瞬の遅れが命に関わる宇宙飛行士をやっていられる英語力があるのだから当然だが。
 奥さんはおそらくアメリカ人で、息子もいてヒューストンに暮らしていることも紹介されていた。

 宇宙服内で水漏れが発生したアクシデントについては、緊急用のシュノーケルが出てくるようにすれば窒息は防げるのではないか。吸水素材をいれる一時的な対策も有効そうではあった。
 けっこうバタバタしているな。

 最後に火星探査とISSの関係が触れられている。ISSでの経験が役立つとは言うものの地上からの支援が大きいこともISSの紹介をみていると分かる。
 トラブル時はかなり大変そうだと感じた。

 先輩宇宙飛行士の「宇宙から地球を観ると天国にいる心地がするが、地球こそが天国なのだ」って最後の発言もよかった。

関連書評
宇宙飛行士が撮った母なる地球 野口聡一

ナショナルジオグラフィックDVDレビュー記事一覧

DVD ライブ・フロム・スペース 若田船長 ISSから生中継
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カテゴリ:ナショナルジオグラフィックDVD | 22:54 | comments(0) | trackbacks(0)

世界で一番美しいペンギン図鑑 水口博也・長野敦

 南半球に特有の飛ぶことをやめ、泳ぐことに特化した鳥たちペンギン。
 その姿を南極をはじめとする秘境でおいかけた写真集。どうやって接近したのやら行っただけでも驚異に思える絶海の孤島の貴重な写真がたくさん撮られていた。南極半島はむしろ行きやすい方なのではないか。

 最初から多数のペンギンが特殊な島で紹介されていて、ペース配分を疑問に感じた。しかし、最後はきっちりコウテイペンギンが決めてくれた。まさに最後に現れる主人公。
 でも、育雛期間はオウサマペンギンの方が長くて、そのせいで3年に2回の子育てという特殊なリズムになっている。

 ペンギンは2個の卵を生む種類が多いけれど、けっきょく片方しか育てないもの、運が良ければ両方育つもの、片方だけの場合も先に生まれた方と後に生まれた方のどちらを育てるかなどの違いがあって興味深かった。
 地球温暖化の影響を受けたアデリーペンギンとジェンツーペンギンの勢力変化も非常に面白い。水蒸気がふえる温暖化のせいで雪が増えて、産卵時期の早いアデリーペンギンが劣勢になるとは意外だった。
 ちゃんと保護できれば、これからも環境の変化を反映した変遷をみせてくれることだろう。

関連書評
ペンギンのしらべかた 上田一生 岩波科学ライブラリー182
コウテイペンギン〜氷の世界のスーパーアイドル

世界で一番美しい ペンギン図鑑: 絶景・秘境に息づく (ネイチャー・ミュージアム)
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カテゴリ:生物 | 23:32 | comments(0) | trackbacks(0)

ギリシャ・ローマの戦争 ハリー・サイドボトム

 吉村忠典・澤田典子 訳
 欧米で話題になっている「戦争の西洋的流儀」なる学説に対して、著者が独自の視点から検討をくわえた本。ハリソン氏の「戦争の西洋的流儀」については最後に訳者が解説してくれている。
 キーガン氏の「一般兵士の立場からみた戦場」の研究なども取り入れて、古代人の心性と世界観に迫っている、らしい。

 それぞれの章で興味深い議論が展開されていたが、慎重ゆえに強い印象には残らない。「戦争の西洋的流儀」ドグマほど乱暴でないための弱点かもしれない。
 まぁ、完全に対立する意見ではなくて、実体よりもイデオロギーとして、「戦争の西洋的流儀」はあったというのが著者の意見であるらしい。

 エブロネース族とローマ軍の戦いは、経過説明でありながら生き生きとしていて、アドレナリンを分泌させるものだった。
 カエサルによる指揮官の資質の考え方が詳細に分析されていて興味深かった。将軍に求められる役割は時代によっても地域によっても変化して、単純ではない。
 文句のない結果を出し続ければ価値観そのものを変化させることも可能であるから、なおさらだ。


 「戦争の西洋的流儀」のハリソン氏については、後から現代の政治についての余計な意見を述べたことで自分の成果すら台無しにしている感じがしないでもなかった。
 彼がブドウ農家をやっているカリフォルニアは、古代ギリシャ・ローマと同じ地中海性気候でもあるのだな。

関連書評
古代ギリシア重装歩兵の戦術 長田龍太
会戦事典 古代ギリシア人の戦争 市川定春
戦闘技術の歴史1〜古代編3000BC-AD500

ギリシャ・ローマの戦争 (〈1冊でわかる〉シリーズ)
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カテゴリ:歴史 | 00:05 | comments(0) | trackbacks(0)

野生のゴリラ ナショナルジオグラフィックDVD

 オリジナルは1981年のずいぶんと古い映像。作中では今世紀中に野生のゴリラが絶滅してしまうかもしれないと心配されていたので、出演者たちの努力が功をそうしてゴリラたちが命脈を保ったことが感じられる。
 同時にゴリラが絶滅の危機から脱出できたわけでもなく、引き続き危機的な状況が続いている。
 シルバーバックの頭を飾り、手を灰皿にすると恐ろしい話が語られていた。野蛮人(ゴリラの手を買う人間のこと)が手を灰皿にするのは、他でも聞いたことがあったなぁ。フォトアークかな?

 動物園のゴリラは野生のゴリラから「文化」を受け継いでおらず、別の存在に近いとの意見も興味深かった。高等な動物ほど難しい部分もある。逆にコミュニケーションが取れることで研究が進歩する希望も紹介されていた。
 手話をするゴリラのココは最近亡くなったはず。その子供時代の映像をみることができて、感慨深かった。
 イギリスの貴族的な「動物園」がやっていることも印象に残った。気候的に動物が身体をあわせるのは大変そうなのに良くやっている。

関連書評
都会に生きるゴリラ ナショナルジオグラフィックDVD
雪男伝説を追え! ナショナルジオグラフィックDVD

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野生のゴリラ [DVD]
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カテゴリ:ナショナルジオグラフィックDVD | 23:22 | comments(0) | trackbacks(0)

突変 森岡浩之 徳間文庫


 人類の暮らす表地球とまったく別の生態系が構築されている裏地球の土地が住民ごと交換される現象が世界各国で頻発。危険な生物「チェンジリング」が表地球上にばらまかれる一方で、裏地球には人類を含めた表地球の人々が送り込まれる。
 そして、日本で三度目の事例が酒河市の一部地域を襲う。この異変に巻き込まれた一般市民の様相を描く群像劇。スーパーヒーローとまで言える人物は登場せず、最終的には銃火器をもった人類が裏地球も征服しそうだが、まだその段階にない状態で送り込まれた人々には慰めにならない。

 異世界転移も、ここまでやってくれれば本格SF小説である。
 転移した人々の法的な問題や、裏地球生物の進化史まで、興味深い情報が盛りだくさんで楽しめる。
 ただし、転移が起こるまでの描写は文章に優れた著者をしても、やや退屈に感じられるので、乗り切る必要がある。

 陰謀論全開の女性市議会議員が強烈であったが、最終的にはちょっとだけ真相に迫っている気がしないでもなかった。
 転移が最近になって起き出した理由はいったい何なのか。そのあたりの謎は解決されていない。
 最終的には表地球と裏地球の土地がすべて交換されて終わるのかなぁ。第二第三の裏地球が?

 最初は救援の当てがない久米島や大阪周辺の話を読みたい気もしていたのだが、終わってみれば先行者がいることの魅力を強く感じさせてくれるストーリーになっていた。
 リセットされた日本の資源開発は興味深い。東北にすごい鉄鉱床があったはず。日本国内の石油や石炭の資源が同じ場所にあるなら、(地質学スケール的に)つい最近まで同じ道筋で生物が進化していたと考えないとおかしいのだが、有笛動物は魅力的だ。あまりのリアリティに実在する動物を発展させまくったと勘違いしてしまった。気嚢のシステムは鳥類に似ている。
 あと関西人が転移したために関西弁が強い。後半に出てきた双子兄妹の掛け合いが癖になる。

 都市がまるごと転移する話としては、伊東市が第二次世界大戦に転移した橋本純の「波動大戦」を連想した。

森岡浩之作品感想記事一覧

突変 (徳間文庫)
突変 (徳間文庫)
カテゴリ:SF | 21:33 | comments(0) | trackbacks(0)

日本懐かしカード大全 堤哲哉 辰巳出版

 駄菓子屋でお菓子と抱き合わせで売られた仮面ライダーのカードから始まった子供向けカードコレクションのディープな世界を垣間見せてくれる本。
 昭和らしいカオス感がたまらない。
 同じ番号なのに違いがあったり、特定の地域だけで発売されたカードがあったり。

 カードに通し番号をつけたことでコレクション性があがったのに、普及が進むとそれを悪用して番号を水増しし、たくさんのカードがあるように見せかけるなど大人の汚さもあらわれている。日清製菓なんて現代では大手になっているところが、やらかしているから恐ろしい。
 中でもパチモンカードコレクションには笑いながらも、同時代のなけなしのおこづかいを握りしめた子供のをことを考えて、悲しくなってしまった。

 値段や種類数すら不明のカードも普通に出現してくる。現代まで存続している会社でも分からないことがたくさんある。カードではなく、原作の方であるが、マスターテープが上書きされた「突撃!ヒューマン!!」の悲劇には言葉を失った。

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ニッポン貝人列伝〜時代をつくった貝コレクション 石本君代・奥谷喬司

日本懐かしカード大全 (タツミムック)
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カテゴリ:雑学 | 23:22 | comments(0) | trackbacks(0)

類人猿に学べ〜恋愛のオキテ ナショナルジオグラフィックDVD

 そんなにボノボがいいなら、もう直接ボノボと結婚すればいいんじゃないかな。なんて雑な挑発に引っかかったコメントをしてみる。
 人間を類人猿にたとえていろいろと語る、現代ではデンジャーに思えてしまう映像作品。人間の反応を動物学者に分類されるのは、なかなかしんどい。
 しかけられた人たちもよく起こらなかったものだし、自分の姿を放送することをよく許したものだ。背後には怒った人や放送を許さなかった人もたくさんいるのかもしれない。
 訴訟にまではなったいない?

 チンパンジーの行動が受けていないことで、視聴者からチンパンジーへの侮蔑的な感情を強めてしまわないかも気になった。
 まぁ、もっと肩に力を入れず、楽しく視聴するべきなのだろう。人間に近い動物ほどそれが難しくなるとしたら……。

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新しいチンパンジー ナショナルジオグラフィックDVD

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ナショナル ジオグラフィック 類人猿に学べ恋愛のオキテ [DVD]
ナショナル ジオグラフィック 類人猿に学べ恋愛のオキテ [DVD]
カテゴリ:ナショナルジオグラフィックDVD | 05:47 | comments(0) | trackbacks(0)

秘密のフィレンツェ ナショナルジオグラフィック

 メディチ家が支配したフィレンツェには多くの謎が残されていた。主にイタリアの研究者たちが科学的手法でフィレンツェに隠された謎を解き明かしていく。
 宮殿から宮殿までジョルジョ・バザーリの設計によるメディチ家専用の通路がおよそ1kmにわたって用意されているのは面白い。面白いが何かの病気を疑ってしまうレベルの執念深さでもある。
 血統に長い由緒がないからこそ、君主としての演出はしっかりやらなければいけなかったのかもしれない。

 ブルネレスキによって採用されたと想像される、巨大なドームをもつ「ドゥオモ」の建設方法が興味深かった。内側から小さいドームを作って、だんだん大きなドームにしていくことで木材を節約するわけではなかった――それをやろうとしたらレンガの回収が危険すぎるか。
 矢筈(やはず)積みという特殊なレンガの積み方などもしかけられていて、ブルネレスキが幾重にも用意した技術的な革新に感心させられた。
 フラングバットレスもなく、すっきりした外観にしあげたのは本当にすごい。

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大聖堂・製鉄・水車 J・ギース/F・ギース 栗原泉 訳
世界遺産1 イタリア1 アートウェアコミュニケーションズ

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ナショナル ジオグラフィック 秘密のフィレンツェ [DVD]
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カテゴリ:ナショナルジオグラフィックDVD | 23:05 | comments(0) | trackbacks(0)
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