もうひとつのシルクロード Vol.4オアシス点描編

 NHKエンタープライズ。
 変化する前の中国の姿がここにはある(世の中は常に変化しているものだけど)。かなり素朴なつくりの鉄道紀行作品のデジタルリマスター版。中国西部の人々の顔立ちから、あの国が他民族国家であることが良くわかった。

 灌漑農地の拡大による農業生産の増大をたたえるシーンがいくつもあったけど、現状はどうなっていることか。
 アラル海の悲劇が脳裏にあるため、社会主義国による大規模な農業開発に疑いの目を向けてしまう。目前のノルマ達成にとらわれず、持続可能な形になっているか、常にチェックを続ける必要がある。
 さもなくば長く続いてきたオアシス都市の伝統が絶えてしまうおそれすら感じた。

 緯度は近くても日本とはまったく異なる気候風土がエキゾティックでおもしろかった。中国とソ連の国境地帯が緊張していた様子も非常に興味深い。

もうひとつのシルクロード Vol.4 オアシス点描 [DVD]
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役職・作法から暮らしまで「武士」の仕事 歴史REAL編集部

 内容は江戸時代の武士に関するもの。
 軍事的な役割のなくなった武士たちの暮らしを大都市江戸を中心に描いている。参勤交代についてきて、江戸で単身赴任をすることになった武士たちの生活が非常に暇なもので、うらやましいような恐ろしいような……あの状態でも堕落せずに克己心を持ち続けられる人間だけが武士になれるわけなかったのは史実であった。
 絵巻物の「帰れる予定だったのに殿に新しい役目が追加されて帰れなくなったときの自棄の酒宴」風景がすばらしい。
 江戸っ子が参勤交代でやってきた武士を見下していた様子など、なかなか辛いものを感じた。北海道での出来事だが、無礼打ちをした相手の町人が酒に酔っぱらって武士に言いがかりをつけ家まで連れ込んで酒を強要していたとか、そこまで我慢したのかと変に感心してしまった。やっぱり殺人はダメだけど。

 いろいろな武士の家計や家の再現CGなどデータも豊富で、武士の生活が輪郭だけでもイメージできる本だった。あと、図が多くて薄めで読みやすい。

関連書評
十三世紀のハローワーク グレゴリウス山田:こちらにも公人朝夕人の解説が出てくる。「武士」の仕事で出てきた御様御用と同じくヨーロッパでも処刑実行人に役得があることも分かる。

歴史REALブックス「武士」の仕事
歴史REALブックス「武士」の仕事
カテゴリ:歴史 | 21:14 | comments(0) | trackbacks(0)

フューチャー・イズ・ワイルド 2億年後 超巨大大陸の出現

 パンゲア大陸以来の超大陸が地球上に出現し、世界はひとつの陸地とひとつの海洋に分けられる。
 そんな2億年後の世界でいきる生物の姿は、非常に奇妙なものになっている。その原因は大規模な火山噴火による大量絶滅だというが、ニッチが空いたにしても自由すぎると感じた。

 空飛ぶ魚フリッシュや陸を歩く体重8トンのイカ、メガスクイードなど軽くやりすぎである。ブレーキを掛けるどころか煽るスタッフしかいなかったのかもしれない。
 とりあえずイカや魚が空気中で呼吸している方法が知りたいところだ。あと、産卵にも苦労していそうだなぁ。もしかして、海のフリッシュ以外は胎生のイメージか?

 すごくふしぎな生物があふれる中で、シロアリが堅実に進化したテラバイトの堅実な生態にはホッとするものを覚えた。
 戦車トランスポーターみたいな分化したアリがいることなど、驚くに値しない。

フューチャーイズワイルド 2億年後 超巨大大陸の出現 [DVD]
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輪中と治水 岐阜県博物館友の会

 木曽・長良・揖斐の三河川が流れる地域に分布する輪中の歴史を描いた企画展のブックレット。
 輪中が堤防で囲まれた地域にとどまらず、ひとつの政治単位であったことを強く主張している。確かに輪中のありかたが、まるで同じ船に乗り合わせたように運命共同体意識を強めたことが想像できる。
 が、輪中の中でも対立があったりして、治水に功績のあった人物が調停に奔走したエピソードなども紹介されていた。

 輪中地域の水害には人災的な面もあって、尾張藩側の堤防が極端に強化されたために、美濃側に水害が頻発するようになったようだ(表に出てきた治水協会の登録者1位が岐阜県人なのに対して、愛知県人は5位までに入ってきていない)。さらに条件が悪い土地にまで開発が進んだこと、上流での山林の伐採などの複合的な要因によって水害が増えている。
 最後の山林の問題は、人工林の管理ができなくなってきている現状を考えると、新しい水害の原因になるかもしれない。そのときにデレーケらの水害対策が見直されるのではないか。

 有名な薩摩藩のお手伝普請が揖斐川流域の住民には利益があったものの、長良川流域の住民には被害の増大につながったことは、薩摩藩士の犠牲を知っているだけにショックだった。収録されたグラフは治水工事完工後も水害の発生数は横ばいである。
 自然を制御しようと実績を作った一点だけでも無意味ではないけれど、やはり自然は手強いということだな。

関連書評
風雲児たち ワイド版1−6巻 みなもと太郎:4巻に宝暦治水を描いた話がある漫画
カテゴリ:歴史 | 22:45 | comments(0) | trackbacks(0)

フューチャー・イズ・ワイルド 1億年後 しゃく熱の世界

 1億年後火山活動の活発化により地球温暖化が進み、海底も盛り上がって水位が上昇。地球の9割を海が覆うようになったと仮定された世界で生きる動物たちの姿を想像する。
 さすがに陸地が沈みすぎに感じたが、計算根拠がないとも思えないので、自分の直感が間違っているのかな。

 南極大陸が赤道直下まで移動してきたため、氷床も全部溶けてしまっている。いまも南極に住んでいるミズナキドリがそのまま進化して「南極森林地」に生きる鳥類になっているのは逞しい。

 しかし、ほ乳類の扱いは非常に悪くて、絶滅寸前であり、巨大でアリのような社会性をもつクモ「シルバースパイダー」に飼育される立場にされてしまっている。
 さすがにほ乳類に向いたニッチが皆無になるとは思えず、類レベルで絶滅寸前との説明には納得がいかなかった。今の立場にあぐらをかいているとこうなるぞ、と教訓を与えようとしているなら厳密な科学を優先させてほしいな。
 それこそ穿ちすぎか。

 湿地とはいえ地上に生きるタコのスワンパスが植物の中心にできるプールを利用する様子にヤドクガエルの一種を連想した。しかし、現生のネタ元説明にでてきたのはサワガニの仲間で意外といろいろな種がやる手口らしかった。

フューチャーイズワイルド 1億年後 しゃく熱の世界 [DVD]
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フューチャー・イズ・ワイルド〜500万年後 氷の世界

 もし人類が滅亡すれば、どんな生物が進化によって誕生するのか。
 現生生物を未来の予想される気候に適応させることで築かれた空想の世界をえがくCG作品。それぞれの土地について3種類ずつの空想生物が紹介されている(げっ歯類の「ラトルバック」だけは派生の「デザートラトルバック」で種類を稼いでいる)。
 奇想天外でありながら、現在の生物につながっていて、あまり無理が感じられないラインを巧みに攻めている。

 単純に次の氷河期なら高山の生き物が平地まで降りてくることを想像すればいいけれど、500万年後になると各地に独自の生物が現れてくる。また絶滅する生物もたくさん出てくる。
 進化しているのは母集団が大きい生物か、未来の気候に適応する要素をもった生物だ。

 「北アメリカ砂漠」に棲息するモグラ型のウズラ「スピンク」の存在で、あの鳥が強い特長をもっていることを知った。
 各生物を提案した研究者たちのどこか胡散臭い説明もおもしろかった。楽しんで創っているなぁ。

関連レビュー
Life(ライフ)1 BBC ACTIVE
ウォーキングWITHダイナソーVol.1 BBCワールドワイド
フューチャーイズワイルド 500万年後 氷の世界 [DVD]
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コンニャクと生きる〜信州と上州の山里をつなぐ 柏企画

 コンニャク生産の長い歴史をもつ長野県と群馬県。近年のコンニャク生産は9割が群馬県に集中しているのだが、長野県の人々を中心にコンニャクにまつわる歴史的な体験談を集めた本。
 コンニャクの文字が物凄い頻度で出てくるのでゲシュタルト崩壊を起こしかけた。コンニャクがコニャックに見えてきて酔っぱらった。

 生産地は関東の奥地なのに、消費地として有名なのは山形県であるところも面白い。芋煮会による大量消費が背後にあるとのこと。意外な効用である。

 コンニャクの作り方や料理の方法では、同じものでも人によって結構レシピが違っていることが印象的であった。
 どれも低カロリーで健康に良さそうだ。出来立ての手作りコンニャクを冷ましかけのタイミングで食べるのを一度体験してみたい。

関連書評
つくってあそぼう24〜こんにゃくの絵本 たかはたひろゆき・へん
そだててあそぼう23〜コンニャクの絵本 うちだしゅうじ・へん

コンニャクと生きる―信州と上州の山里をつなぐ
コンニャクと生きる―信州と上州の山里をつなぐ
カテゴリ:雑学 | 23:26 | comments(0) | trackbacks(0)

日本の海はなぜ豊かなのか 北里洋 岩波科学ライブラリー180

 容積にして全海洋の0.9%しかない日本の排他的経済水域に、記載されている海洋生物の14%が住んでいる。著者が海洋生物のセンサスCoMLに参加して知った事実をとっかかりに、日本の海洋生態系の特色が紹介されている。
 もっとも上記の数字には(天皇を含む)日本の研究者が熱心に生物を探してきたおかげで、見かけ上の記載種が多い影響もある。地質的には似ていそうなニュージーランド周辺の生物種多様性が、地図の上ではそこまで高くなかった点が興味深い。
 日本周辺の海の歴史に絡んで説明される海流の関係もあると思われるが。

 海底の地形を示した図を、鳥瞰図ならぬ鯨瞰図と言うことを知った。妙にロマンあふれる表現である。音波を使って地形データを得ていることも、鯨に例えている理由のひとつかもしれない。
 富山や静岡などの鯨瞰図をカラーでみることができた。大陸配置に関連した海流の図などもあって、地学と生物に二股をかける著者の広範な知識が活かされた本である。

 タイトルが過去形にならないよう自分でできる限りのことを気をつけたい。マグロやウナギなどは食欲で絶滅させられそうだし……そこにつながる生物にも何があるか分からない。

関連書評
日本の農林水産業 水産業 社会法人大日本水産会・監修

日本の海はなぜ豊かなのか (岩波科学ライブラリー)
日本の海はなぜ豊かなのか (岩波科学ライブラリー)
カテゴリ:科学全般 | 14:42 | comments(0) | trackbacks(0)

科学者の卵たちに贈る言葉 笠井献一 岩波科学ライブラリー210

 副題に「江上不二夫が伝えたかったこと」とあるように、著者の師である生物学者、江上不二夫が自分の弟子たちに伝えた言葉が紹介されている。
 まるで宗教書のようであるが、厳しい研究生活を続けていくためには、無神論者にも心に灯火が必要なのかもしれない。

 ともかく実験結果をポジティブにとらえて、それは大発見だと励まし続けた江上氏の言動が生き生きと感じられた。すでに亡くなった人だとは信じられないくらいだった。

 江上語録の後には、彼の言葉を裏付けるような生物化学上の発見が紹介されていて、その研究史を知るためにも役に立つ。固有名詞がとても多いので、読んでいる最中は分かった気になっても、すぐに忘れてしまっているのだが……。

 著者が自分は江上師に比べたら凡人だと繰り返し書いていたが、巻末の著者紹介によれば、イタリア語とドイツ語とフランス語で話すことが趣味のひとつらしい。当然英語もできるのである……ぼんじんのていぎがみだれる!

科学者の卵たちに贈る言葉――江上不二夫が伝えたかったこと (岩波科学ライブラリー)
科学者の卵たちに贈る言葉――江上不二夫が伝えたかったこと (岩波科学ライブラリー)
カテゴリ:架空戦記小説 | 12:52 | comments(0) | trackbacks(0)

南アフリカ〜ナショナルジオグラフィック世界の国 ヴァージニア・メイス

 ケイト・ラウントリー/ヴィキレ・クマロ監修。
 政治的困難に見舞われ続けてきた南アフリカ。オランダ系のボーア人がいたことでややこしくなった歴史を紐解く一冊。あまりにも民族が多いので、いつものあいさつコーナーが各民族の「こんにちわ」を紹介する形になっている。
 ズールー族の王家が残っていることを知って驚いた。白人が名目的な国に黒人を閉じこめた政策の関係だったりする?ソト人はレソト王国を残しているし(コラムでの紹介のされかたから単独の一冊になりそうもなくて悲しい)、スワジランドもある。
 哀れなのがコーサ人で巻末年表によれば1856年の女予言者による「祖先からの指令」で自分たちの牛をすべて殺したことで経済が崩壊したらしい……白人の送り込んだスパイだったんじゃあるまいか。ジンバウェはコーサ人の逸話に学ぶべきだったのになぁ。

 ネルソン・マンデラ大統領が有名だけど、彼より前のデ・クラーク大統領も英断をしたと思う。また、デズモンド・ツツ大主教による真実和解委員会の仕事も非常に大きいと言える。
 よくぞ復讐に走らず、手を取り合って未来に向かえたものだ。

ナショナルジオグラフィック世界の国シリーズ感想記事一覧

南アフリカ (ナショナルジオグラフィック世界の国)
南アフリカ (ナショナルジオグラフィック世界の国)
カテゴリ:ナショナルジオグラフィックDVD | 12:35 | comments(0) | trackbacks(0)
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