クオッカ〜世界一幸せな動物 山と渓谷社

 カピバラの後釜を狙っているらしき哺乳動物クオッカの写真集。
 極端に情報量の少ない中、クオッカのセリフとしてカンガルーの仲間であることを知った(巻末にまとまった情報あり)。カピバラに似ていても系統はかなり違う。進化の収斂って奴を感じる。

 世界一幸せな動物と言われているのは孤島に住んでいる警戒心のない集団でオーストラリア本土では人間がもちこんだ動物によって、ほぼ絶滅状態になっているそうだ。
 世界一幸せな動物の呼び名が悪趣味な皮肉に聞こえてしまうのであった。

 まぁ、かわいいとは思う。

関連書評
カピバラ 渡辺克仁

クオッカ 世界一幸せな動物
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新漢詩紀行10〜李白の人生・杜甫の人生 石川忠久・監修

 詩仙と詩聖。漢詩の世界に巨大な足跡を残した二大詩人の作品をまとめた新漢詩紀行の最終巻。

 李白が「望廬山瀑布」でみせたスケールには圧倒される。天の川が落ちてくるみたいなんて表現は頭を逆さまに降っても飛び出すか自信がない。
 しかし、三千尺には苦笑いも禁じ得ない。これぞ狼少年李白の真骨頂である?

 杜甫の作品では「曲江」がアルコール中毒っぽくてショッキングだった。服を質にいれて飲む。借金がそこら中にある。そんな表現は高級官僚にして、詩聖とは思えない。酒は飲んでも飲まれるな。
「望岳」では杜甫のかなり野心的な面が表れていて、心配になるほどだった。

 監修者は李白と杜甫を比較すると、後から出たゆえに良いところを吸収できている杜甫に軍配があがると考えているらしい。確かに「望岳」は「望廬山瀑布」をうまく吸収して情景だけじゃなくて自分の志を歌えていると感じた。

新漢詩紀行 ~石川忠久監修~ 10巻BOX [DVD]
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新漢詩紀行5〜懐古1・懐古2 石川忠久・監修

 懐古と言っても「昔は良かった」の語りではなく、歴史の中に趣きをみつけた詩が集められている。
 春秋時代、呉越の戦いは後世の詩人の意識を強く刺激したようで、李白による詩が紹介されている。呉をうたった詩と越をうたった詩は対になっているように感じる。
 越中覧古の寂しい結末には「夏草や 兵達が 夢のあと」に通じるものがある。芭蕉が影響を受けていたとしても驚くには値しないかな。

 王昭君に関する白楽天の詩では、石川忠久先生の解説によって、新しい知識を得ることができた。
 賄賂をもらった画家たちはけっきょく、全員死刑になったらしい。バカな連中である。皇帝をだまそうとしたわけだから、冷静に考えればリスクが非常に高いよなぁ。
 王昭君の末路として匈奴の風習で自分の息子のものになりかけて自殺したとあったが、さすがに実の母は引継相手に含まれないし、和蕃公主の子供が指導者になることもなかったはず。以上から、北狄への偏見が生み出した俗説と思われる。

新漢詩紀行 ~石川忠久監修~ 10巻BOX [DVD]
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カテゴリ:映像資料 | 21:55 | comments(0) | trackbacks(0)

図説 日本の湖 森和紀・佐藤芳徳

 日本の代表的な湖の基礎的なデータと歴史がまとめられている。
 琵琶湖は圧巻の日本一位だったが、意外と名前の歴史があさく、測量によって琵琶に似た形状が認識された江戸時代中期以降とのことだった。また、集水面積が滋賀県の96%にも及ぶとのことだった――やはり滋賀県は琵琶湖県である。

 人間との関係によって大きな変化を余儀なくされている湖も多く、水を発電用にもっていかれたり、海とつなげられて海水が進入したり、生息する生物にとっては堪らないであろうイベントが起こっている。
 そもそも生きている魚がいない状態から放流が行われた例も紹介されている。
 オオグチバスやブルーギルの存在についても、つとめて平静に語っている点が印象的だった。

 個人的には油ヶ淵を紹介してほしかったのだけど、最後の表に名前が載っているだけに留まった。日本一汚い湖ランキングで一位をあらそった手賀沼は紹介されているのに――やはり関東か、関東だからか!

 仁科三湖のならびがレバントの死海とガリラヤ湖の並びを連想させて興味深い。三方五湖については湖底堆積物の研究で知っていたので、特に強い関心をもって読むことができた。

関連書評
時を刻む湖〜7万枚の地層に挑んだ科学者たち 中川毅

図説 日本の湖
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カテゴリ:地学 | 00:09 | comments(0) | trackbacks(0)

海・川・湖の奇想天外な生きもの図鑑 川崎悟司・武田正倫

 タイトルとは逆の順番で奇想天外な生き物たちが紹介される図鑑。湖の生き物は特殊化が進んでいて、あっと驚かされる生き物が特に目立った。
 特にタンガニーカ湖の生き物は発想が自由すぎる。

 托卵をする生き物も多くいるのだけど、托卵する相手が滅びたら自分たちも滅びる、托卵する相手よりも多くなることは難しいなど、リスクを抱えている。ただ乗りも楽ではない。
 タヌキモやムジナモなど、水中にも食虫(食べるのは虫とは限らないが)植物がいることにもビックリした。ウミユリとの区別がますます付けにくくなるなぁ。
 動物と植物でも進化の収斂が起こるわけだ。

 2012年に見つかったアマミホシゾラフグなど、近年になっても新発見が行われていて、水の世界にはまだ観ぬ不思議な動物がいるに違いないと感じた。発見がとても楽しみである。

関連書評
絶滅した奇妙な動物 川崎悟司

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カテゴリ:科学全般 | 15:02 | comments(0) | trackbacks(0)

ゾンビ・パラサイト〜ホストを操る寄生生物たち 小澤祥司

 下手なフィクションより遙かに恐ろしい。宿主の行動をコントロールする「パラサイト・マニュピレーション」をおこなう寄生生物についてかかれた岩波科学ライブラリーの256巻(2の8乗だ!)
 ネコの繁栄に棹をさすイヌ派の陰謀?でもあり、トキソプラズマの恐ろしさについて肝に銘じてしまった。妊婦の生肉食ダメ絶対――焼き肉フランチャイズ店でのユッケ提供とか、本当にどうかしていたなぁ。

 パラサイトが宿主を操ることのメリットやメソッドについての記述が興味深かった。
 常にメリットがデメリットを上回るわけではなく、パラサイト・マニュピレーションを行わない寄生生物もいる。できれば一つも行わないでもらいたいものだが、そこに選択肢があるおかげで生態系が豊かになっている事実は見逃せない。

 静岡大学の佐藤準教授によるガマドウマが操られて川に飛び込むことで、森から水中への栄養の移動がおこなわれている事実の発見などは、生態の複雑なつながりを感じさせてくれる。
 だが、潔癖性で利己的な人類は寄生生物を体内から追放して、この輪から外れる方向に進むのであろう。他の生物だって意識してできるなら、きっとそうする。

ゾンビ・パラサイト――ホストを操る寄生生物たち (岩波科学ライブラリー)
ゾンビ・パラサイト――ホストを操る寄生生物たち (岩波科学ライブラリー)
カテゴリ:科学全般 | 19:14 | comments(0) | trackbacks(0)

セトナ皇子(仮題) 中島敦

 すべてを知っているつもりだったセトナ皇子が、この世の根源的な存在理由を疑問に思ってしまい、深い悩みに囚われてしまう話。劇的な解決もないままに消えていってしまうところが中島敦流。

 この世に存在している理由はないけど、この世が存在しなければ、それを疑問に思うこともできない。だから、疑問に思うことができる「だけ」である。
 そんな答えじゃいけないのかな?

 すべてには何か理由が必要だという前提がセトナ皇子を苦しめている。進化のすべてが適者生存だと思いこむのと同じで、危険な兆候である。
 「意味のある情報」だけを頭の中にため込みすぎたあげくに、意味のない生き方をしてしまった。そう考えると、遠い人物に感じられていたセトナ皇子にも学ぶべき事がある。

 古代エジプトの舞台装置が「雰囲気」を出していた。文字禍といい、目を付ける時代と地域にセンスが満ちている。

青空文庫
中島敦 セトナ皇子(仮題)
カテゴリ:時代・歴史小説 | 16:57 | comments(0) | trackbacks(0)

フリードリヒ大王〜祖国と寛容 屋敷二郎

 世界史リブレット人055。
 名将の枠には決して収まらない偉大なる啓蒙君主フリードリヒ大王の事績がわかる。七年戦争では首都ベルリンを二回も落とされており、プロイセンが滅亡しなかったことが本当に不思議である。
 ホーエンツォレルン家の歴史についても簡潔にまとめられていて、ユグノーをはじめとした宗教難民を受け入れることで国力を強化してきた歴史が非常に興味深かった。
 メルケル首相のシリア難民受け入れ政策もホーエンツォレルン家の常套手段――成功体験の延長線上にあったものと解釈できそう。

 フリードリヒ大王を取り巻く人々も興味深く、ヴォルテールとの変な交流や軍人王と闘う同志でもあった姉のヴィルヘルミーネとの姉弟愛など見所が多い。
 姉への手紙で父親が死んで王位を受け継げなかったことを残念がるのはさすがに迂闊だと思うぞ。

 外向けの著作と太子向けの著作に矛盾がないなど、フリードリヒ大王は呆れるほど正直な人物であったらしい。せめて内向きに正直でなければ自らに重責を課す啓蒙君主でありつづけられなかったのかもしれない。
カテゴリ:歴史 | 23:32 | comments(0) | trackbacks(0)

屋根の知識 宮野秋彦・監修 日本屋根経済新聞社

 有史以前の家屋から話をはじめて、現代(1994年出版当時)における屋根の施工まで書いた一冊。基本的には家を新築する一般人向けに書かれているようだ。メンテナンスの話題もあるが、素人の手に負えるものではないので、信頼できる工事業者に一年に一度(梅雨前などに)観てもらってほしいとのこと。

 屋根の上に布団をほしていたことを何となく思い出した。子供の体重だったから乗っても大丈夫だったのかな。
 親が気を使っていたのも納得の脆さであった――瓦なら凹の部分に足をのせ、スレートなら重なっている部分に足を乗せると一応覚えておこう。

 著者は粘土瓦贔屓のようで、それほど大きな価格差はないのだからと、耐久性のある粘土瓦をしっかり施工することを勧めている(太陽光発電への言及は限定的)。屋根材の下をきちんと仕上げておくことの重要性も見逃せない。
 雨漏りと思いこんだものが結露だった例が非常に多い模様で、トラブル事例にも繰り返し結露の話が出てきた。他の業者の仕事なのに屋根業者が悪者にされると愚痴が出ていたけれど、それは本書が屋根の本だからで壁の本だったりしたら屋根業者が原因だった事例もあがっているかもしれない。
カテゴリ:工学 | 21:38 | comments(0) | trackbacks(0)

ロシア〜ナショナルジオグラフィック世界の国

 一国で「地域」と対抗できる面積をもつ世界最大のロシア。その歴史や自然、経済などがわかる。
 さすがに今の民主主義が根付きつつあると主張するのは無理があると思ったが……プーチンの強権によって逆の方向に進みつつある気がしてならない。
 あと住居問題もあって人口が減少傾向であることが、資源の豊かさを相殺していそう。国土は広いのに住居は狭いなんて皮肉な話だ。

 世界最大の虎、シベリアタイガーが1930年代には50頭まで減ったと聞いて、いまは500頭まで回復していても遺伝的な多様性にかなりの不安を覚えた。
 シベリアタイガーの頭数を法律で回復させたことは素晴らしい。

 少数民族についても言及があり、高等教育を受けるためにはロシア語を使用せざるをえない彼らの苦しい立場がわかる。初等教育なら民族の言葉で受けられる場合があるだけマシとも考えられるが、本人たちには厳しい現実である。

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カテゴリ:ナショナルジオグラフィックDVD | 22:17 | comments(0) | trackbacks(0)
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