耐火物 2020年2号

耐火物との出会い
 上司の一言が著者の仕事観を変えた。耐火物誌の寄稿も減少傾向で将来が不安視されるようだが、やはり耐火物の必要性が完全になくなることもないだろうな。

負の熱膨張率を有する材料の最近の話題
 熱応力をコントロールできそうで興味深い。3Dプリンタを使うことで普通に熱膨張する材質でも構造として負の熱膨張をさせられる物は特にプラスマイナスを打ち消し合わせることができそうだ。同じ手法をつかえば熱膨張を本来より大きくすることもできる?

MgO-CれんがとSpinel-Cれんがの各種スラグに対する耐食性およびMgO-C反応性の調査
 スピネルの緻密な層が表面に生じて防御してくれる場合がある薄片写真で証拠がしっかり表れていて面白い。

フェルト状のアルカリアースシリケートウールの特性改善
RCFペーパーが一番よい圧縮復元率を示しているそうで、AESウールはやはり弱点が多い。石綿が使えなくなった時代の衝撃ほどではないと想像するが、困ったものだ。

自然から学ぶ技術
サメの肌や蜂の巣のハニカムなどはよく聞く話題だが、ロータス効果とそれがヨーグルトの蓋に使われていることは知らなかった。あれを舐めたい人には恨まれそうな技術だ。カタツムリの殻が汚れの落ちやすい構造になっていることも初めて知った。勉強になる。
カテゴリ:工学 | 18:45 | comments(0) | -

ダムの科学 改訂版 一般社会法人ダム工学会

 ダムが社会で果たしている役割、ダムの造り方、ダムの今後についてまとめられた新書。ダムブームと切っても切り離せない関係にある「ダムカード」の付録付き。
 トレーティングカードとしてダムカードをみると、通し番号がつけられない点が惜しいとは思った。同じ体裁が流行していて、自分は堰カードと城カードも持っている。

 ダムの建造技術では日本が開発した技術が従来方法と同じ強度を基準にしているのに対して、海外の同種の技術は強度低下を許容している点が考え方の違いを表しているようで興味深い。
 どちらにもメリットデメリットはあるのだろうが、日本の方法は海外展開よりも国内需要を睨んでいる印象を受ける。

 ダムがもたらす負の側面、重大な事故についても言及があった。ただ、三峡ダムと揚子江カワイルカの関係には触れていなかった。どちらかと言えば、やはりプラス面が強調されていたことは否めない。
 たまった土砂を浚渫して寿命を延ばす技術が興味深かった。

ダムの科学[改訂版] 知られざる超巨大建造物の秘密に迫る (サイエンス・アイ新書)
ダムの科学[改訂版] 知られざる超巨大建造物の秘密に迫る (サイエンス・アイ新書)
カテゴリ:工学 | 00:05 | comments(0) | -

ルーツを追って〜恐竜時代前に天下をとったほ乳類の祖先たち 長尾衣里子

 世界各地で古生代・中生代のほ乳類の祖先を発掘に参加した著者の手記。
 南アフリカではリストロサウルスの頭骨がいくらでも発掘できるのか。たしかに犬歯だけを取るために頭骨を破壊する研究手法はもったいない気がしたが、産出量は素直に羨ましい。
 まぁ、発掘場所にたどり着くためには車で一日以上かかるような僻地だから産地が守られているところもあるのだろうな。

 ほ乳類の歯が1度しか生え替わらなくなったのは(人によっては一部の歯が乳歯のまま生え替わらない人すらいる)ネオテニーによる影響という話が興味深かった。
 それが起こるまではデンタルバッテリーを持っていたわけで、そんな経緯がなければゾウは面倒くさい進化をしなくても良かったんだな……いまから正規のデンタルバッテリーを取り戻すことは到底できないようで悲しいことである。
 かつて持っていた「第三の目」が松果体になっている件も改めて記憶に刻んでおきたい。

ルーツを追って: 恐竜時代前に天下をとったほ乳類の祖先たち
ルーツを追って: 恐竜時代前に天下をとったほ乳類の祖先たち
カテゴリ:古生物学 | 19:05 | comments(0) | -

インカ〜古代の空中都市 カレン・ワイズ

 開かれた封印 古代世界の謎10

 わずか100年の栄光ながら、古代ローマを超える版図を文字や車輪なしに支配したインカ帝国の記録。スペイン人によって多くが失われたそれらを拾い集めた本。
 やはりマチュ・ピチュがインカ帝国の顔として、たくさんの写真で紹介されている。
 クスコの方がマチュ・ピチュより高い場所に存在し、サブタイトルにもあっているのだが、破壊を受けて上に植民都市を建てられてしまったので、しようがない。石組みについてはスケッチなどで紹介がある。

 キープを分析・記録するキプカマヨックや飛脚であるチャスキなどインカ帝国を支えた役人たちの名前があげられている。
 単純に官僚機構が巨大化しただけでは効率的に国家を運営するには足らず、情報伝達において優れた工夫があったと想像されるのだが、文字がない以上は属人的きわまる智慧のため謎のままになりそうだ。
 なお、インカ帝国滅亡の謎については少ない字数でそれなりに説明していた。

 ピントの合っていない一部の写真に時代を感じてしまった。簡単には接近できないマチュ・ピチュの高地らしい雰囲気をよく表していたとはいえる。

インカ―古代の空中都市 (開かれた封印 古代世界の謎)
インカ―古代の空中都市 (開かれた封印 古代世界の謎)
カテゴリ:歴史 | 21:15 | comments(0) | -

司馬遼太郎と城を歩く3〜松山城・宇和島城・首里城・姫路城

 松山城ではめずらしく地味な加藤に光が当たっている。藤堂高虎が秀吉子飼いとして、清正たちと同じカテゴリに入れられていることには違和感があった。秀長の家臣なのだが……。
 石落としを鉄砲で撃つ設備だと説明しているところがナイスだった。

 宇和島城をおさめていた伊達家の成立経緯がおもしろい。めずらしい東から西への流れがあって、そんな彼らが日本人だけで初めて蒸気船を造っている。
 東西の住民の気質の違いではなく、住んでいる場所によって外来技術への反応に差が出てしまったことが予想できる逸話だった。

 首里城の章はあまり首里城に集中できず沖縄内の他のグスクもけっこう紹介されている。司馬遼太郎氏による文章が不足していたのかもしれない。
 首里城を通して覚える第二次世界大戦での司馬氏の罪悪感は、もはやあまり共感してもらえない時代になってしまった可能性があり、寂しい。

 姫路城は「播磨灘物語」での黒田官兵衛の経験をメインにしていて、現在の江戸時代以降に成立した姫路城とはミスマッチなところがあった。
 城側はまだまだ名城がいくらでもあるけれど、現代の城の映像にぴったりの司馬作品のストックが苦しくなっている?

司馬遼太郎と城を歩く 第3巻 [DVD]
司馬遼太郎と城を歩く 第3巻 [DVD]
カテゴリ:映像資料 | 23:52 | comments(0) | -

暗闇に息づく神秘を訪ねて−−ニッポンの洞窟

 穴があったら入りたい。
 日本各地の洞窟を案内するムック。東京都や大阪府にも紹介される洞窟があって、全体では平地じゃないことが分かる。
 溶岩洞窟の説明について、ガスが抜けたあとだと間違った説明を繰り返していて困ったものだ。記事によっては、表面が固まった後も中の溶岩が溶けたままで流れ出したあとだと、ちゃんと解説しているものもあった。
 筆者による違いかな?

 けっこう観光のために整備された洞窟が多くあって、各地の必死な思いを感じてしまった。
 信仰が絡んでいる洞窟では、非常に高い確率で弘法大師ゆかりと名前があがっていて、弘法大師が歩けば洞窟に当たる状態……!

 地学的に話題の多い玄武洞には一度いってみたいなぁ。

ニッポンの洞窟 (イカロス・ムック)
ニッポンの洞窟 (イカロス・ムック)
カテゴリ:雑学 | 23:12 | comments(0) | -

古代日本の超技術 改訂新版 志村史夫

 現代でも、あるいは現代だからこそ再現のむずかしい古代の技術について半導体の開発に携わってきた著者が独自の視点から解説をくわえたもの。
 古代技術の結晶である寺院に関連する技術が多い。そもそも後世で評価できる技術が、ほとんど寺の形でしか残っていないのかもしれない。
 宗教心は大事。

 呼吸する瓦の説明について、真空土練機から脱却して空隙の多い瓦を焼くことはメーカーにもメリットがあると感じた。原材料を減らせるわけで。
 空隙が多いと失敗せずには焼くのが難しいとはいっても、そっちもセットで技術開発をして解決していくことは出来ないものか。
 もはや投資に回せるだけの余裕がないのだろうな……。

 その点、製鉄業は採算度外視で古代の純粋な鉄を再現することができている。微量のチタンが含まれると分析があげられていたが、西日本の花崗岩は磁鉄鉱があるかわりにチタン鉄鉱を含まないタイプの花崗岩だった記憶が……?別の鉱物から進入してきたものなのか、非常に気になる。
 あと、「鉄鉱石」と「砂鉄」を対応する単語として使われることに違和感を覚えた。文脈から褐鉄鉱と磁鉄鉱を指しているのだが、磁鉄鉱も鉄鉱石に含まれるわけで。
 古代の鉄が錆びないと言われるのは、複数回の修理工事で低質なものがすでに弾かれた生存バイアス的な効果も働いていそう。
 正宗の刀に心鉄がない説については、他の本で旧日本陸軍が室町か鎌倉の古い名刀を切断して調査したところ、もっと複雑に鉄が織り込まれていて、その通りだったという話を読んだことがある。

 著者がインタビューした職人の発言もあわせて興味深く読ませてもらった。
 江戸時代の大工が荒いとダメ出しされているのは、古代の比較対象が宮大工だったからでは?とも思ったが、宮大工の棟梁が言っている以上は江戸時代の宮大工の仕事をみての評価かなぁ。

古代日本の超技術 改訂新版 (ブルーバックス)
古代日本の超技術 改訂新版 (ブルーバックス)
 五重塔や大仏を新造している青森県の青龍寺が何か凄かった。
カテゴリ:工学 | 22:02 | comments(0) | -

絶景!さくら鉄道

 桜の花と鉄道をテーマにした写真集。北海道から沖縄まで品種はちがえど、桜をレンズにおさめて写真を撮っている。
 いくら咲く時期がズレると言っても、これだけ多くの写真を撮るのは大変だったに違いない。最初は一人で撮影したと思いこんでいたが、さすがに複数人での撮影だった。
 それでも地域的には偏りがみられるので、短期間で撮れたものではないだろう。一枚一枚のロケーションへの苦労を想像する。それが一番楽しかった可能性もある。

 直射日光を必要とする桜は川岸に植えられていることが多く、川岸で撮影するなら舟も一緒に写したいというわけで、立体交差の瞬間を撮った写真が何枚かあった。
 1日中はりついていたんだろうな……。

 巻末解説で1928年製造のデハ101形という古豪が群馬県でまだ走っていることを知った。100年も射程圏内だ!

絶景! さくら鉄道
絶景! さくら鉄道
カテゴリ:写真・イラスト集 | 23:31 | comments(0) | -

ゾウの時間ネズミの時間〜サイズの生物学 本川達雄

 歴史的名著!実はジャンプに掲載されていた読み切り漫画でタイトルを知った。それから実際に本書を読むまでに20年以上掛かってしまったのではないか?

 さすがに現代でも揺るがない価値のある内容になっていて、生物に対する新しい目を拓いてくれる。
 数学や物理学を駆使することで生物全体の一般的法則を追求する研究を紹介しつつ、人間の視覚に頼ったものの見方に見直しを求めている反転が面白い。

 ウシの効率の悪さが説明されているところをみて、変温動物で草食の家畜を研究すれば肉の生産効率がよくなるのにと思った。
 現実には肉食のワニでやられているくらいか?草食のイグアナは味か何かに問題があるのか。
 まぁ、現代の研究はもっと効率的な昆虫食やミドリムシまで来ているので、いまさら爬虫類の家畜化にエネルギーを割く価値はあまり認められないのだろうなぁ。
 大型でエネルギー消費の多い動物ほど縄張りが重なりやすい関係で群れのシステムが発達する指摘もあった。その性質をもつことも家畜化の利点につながるわけで……。

 最後に出てくる棘皮動物の特殊性も面白かった。必要なときはロックができる装甲の構造は技術的に模倣する価値が高そうだ。

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)
ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)
カテゴリ:生物 | 23:35 | comments(0) | -

千年の王国ビザンチン〜砂漠の十字架に秘められた謎〜

 シナイ半島に今も残る正教会の聖エカテリニ修道院の活動からイスラム社会と共存してきたビザンチン的なるものを浮き彫りにするドキュメンタリー。
 聖エカテリニ修道院の人が十字軍にたいして明確に否定的な意見を述べていたことに驚いた。そこまで言っていいんかい。
 まぁ、第四次十字軍への不満もあるかもしれない。ビザンチン帝国滅亡の責任はイスラムよりもカトリックにあると言わんばかりの描き方だった。
 正確にはイスラム相手で手一杯のところに、カトリックが後ろから殴りかかってきたせいだと思うけど。

 イスラム勢力が来る前に修道院内にモスクを造っておいて、出迎えたエピソードは涙ぐましくも逞しい。外見の要塞っぷりもすさまじい。力で攻め落とすには只ではすまない雰囲気も漂わせている。
 周辺のベドウィンと共存関係を今に至るまで続けられているのも、歴代修道士の不断の活動があってこそ。ISで物騒になっている地域だが、今後も活動が引き継がれてほしいものだ。
カテゴリ:映像資料 | 21:11 | comments(0) | -
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