半島有事1〜潜入コマンド蜂起 大石英司

 「対馬奪還戦争」につづいて勃発した朝鮮民主主義人民共和国と大韓民国の戦争をえがくシリーズ一冊目。昨日まで対馬で殺し合っていた自衛隊は韓国を救援するため釜山に向かうことになる。
 展開が急すぎて大半の一般市民は追いつけていないはず。昨日の敵は今日の友とは言っても共通の敵があらわれただけだ。本当に友になるためには、どれほどの出血が求められることか。そして、本当に友になるなんてことが国民レベルでありえるのだろうか。
 厳しいことを考えてしまう。

 北朝鮮軍は驚くほど巧みに韓国領に乗り込んでいて、一日にして通信がすべて途絶する物凄い事態になった。さすがにやりすぎではなかろうか……。
 「第一次」朝鮮戦争のことを考えれば、中には機転の利く将軍の一人くらいはいても良さそうなものだ。

 まぁ、一人は脱出して日本に来たし、他にも雌伏して再起の機会をうかがっている人物がいると思いたい。
 フルクラムとイーグルを見間違えるのは自分も漫画でやった覚えがあるので大使たちが間違えているのをみて、冷や汗が出た。なんであんなに似ているんだか。

大石英司作品感想記事一覧

半島有事1 潜入コマンド蜂起 (C★NOVELS)
半島有事1 潜入コマンド蜂起 (C★NOVELS)
カテゴリ:架空戦記小説 | 21:15 | comments(0) | trackbacks(0)

南十字星の輝く国 ニュージーランド 柳木昭伸

 1986年に発行されたニュージーランドの写真集。
 ニュージーランドの自然と牧畜にいきる人々の暮らしを写している。自然についても植生には大きく手が加えられていて、大量の動植物が持ち込まれた後の姿であることは注意したい。
 特にどこまでも続くような牧草地は自然からかけ離れた存在である。

 だがまぁ、ニュージーランドの主要産業である(あった?)牧畜に関する写真は、くわしい解説がついていたこともあって興味深かった。
 降水量などの自然環境に応じて肉用や乳用、毛用の牛や羊が分けて育てられている。少人数の家族経営でやっている農場が多いことも印象に残った。
 滅多に休みがとれず、大変そうだ。
 また、そんな牧畜業に携わっている人口が意外と少ないことも面白かった。その他の人々は町で暮らしているのだろうが、外貨を稼いでいない以上は国内向けの産業に従事していることになるのか。
 解説にあった地熱発電の話などと絡めて考えてみることもできる。

 ニュージーランドは日本と似ている面がよくあげられるけど、実際には似た要素があるために違っている部分がよく目立っていた。美しい氷河の存在などは、その最大のものと言える。
 夏の平均気温が低いことが氷河の維持を助けているそうだ。

ニュージーランド―南十字星の輝く国 (Newton Books)
カテゴリ:雑学 | 23:34 | comments(0) | trackbacks(0)

デタラメにひそむ確率法則〜地震発生確率87%の意味するもの 小林道正

 途中まではわかりやすい確率のお話。いちばん踏み込んだ真ん中あたりが難しいだけで、後半の地震の話もそんなに難しくはないかもしれない。
 地震の確率予測がある種の「デタラメ」であることが分かってしまう。単なる年周期の事実だけを伝えようとすると、東海地震の例はよくても、周期の長い直下型地震の例では警戒心の薄くなる人が増えてしまう危険性は予想できる。
 それでも狼少年化するよりは事実を懇切に伝えていった方が、最終的にはいいのかもしれない。研究予算の獲得なんかも絡んでいそうだが……。
 最後に批判していた原子力発電はますますそれが酷い。

 地震に関連して、長方形のサイコロについて目の出る確率の方程式が未だにできていないとの紹介にとても驚いた。構造がシンプルなものでも確率が絡むと難しい?
 人間に分かっている領域の狭さをあらためて思い知らされる。

 あと、執筆に使用された試行の結果を出してくれるソフト「Mathematica」のことが気になった。でも、紹介されている連続して一日中5が出ない結果を得られた興奮はリアルにサイコロを降っていないと味わえないだろうなぁ。

デタラメにひそむ確率法則――地震発生確率87%の意味するもの (岩波科学ライブラリー)
デタラメにひそむ確率法則――地震発生確率87%の意味するもの (岩波科学ライブラリー)
カテゴリ:科学全般 | 12:31 | comments(0) | trackbacks(0)

板碑と石塔の祈り 千々和到 日本史リブレット31

 日本の中世に宗教目的で作られた多くの板碑。その研究の一例が関東地方を中心に紹介されている。
 江戸時代からの長い研究の歴史があって、当時の文化人の日記などを丹念に読み解いていくことで判明する事実がある。板碑が作られた中世だけじゃなくて、その後の時代についても知っておく必要があるようだ。
 おもしろそうだが大変だ。

 石塔の種類や仏を表すことのできる梵字の機能についても簡単にまとめられていて勉強になった。
 身の回りのお寺にもいくらかはありそうだから、注意してみたい。

 板碑が建立当初の意味を離れて、作られた地域の信仰の対象に変化して行った点も興味深かった。
 大昔の物が長い年月を生き延びてくるためには、何らかの理由が必要なようだ。

関連書評
石造物が語る中世職能集団〜日本史リブレット29 山川均:こちらとの関連が非常に深い

板碑と石塔の祈り (日本史リブレット)
板碑と石塔の祈り (日本史リブレット)
カテゴリ:歴史 | 00:03 | comments(0) | trackbacks(0)

キッチンでできる草木染めレッスン帖 佐藤麻陽

「材料から染め上がりまで写真でわかる」と副題にあるように、写真で染色の様子がよくわかる草木染めのハウツー本。
 ただし、色は印刷の問題だけではなく、天然染料ゆえの微妙な違いで変化するようだ。そこが草木染めの面白さでもあるはず。

 木綿を染めるには媒染が必要になってくるが、サンプルの写真をみると、それでもほとんど染まっていない染料も多い。シルクの染まり易さが圧倒的で、入門用に向いていることが良く分かる。

 天然のものでも、身近で手に入る染料ではなく、販売されているような染料はさすがに染まり方が鮮やかだ。スオウの紅色の美しさには目を引かれた。
 鉄媒染によって紫色にもなる便利さもよい。でも、基本的にはみょうばん媒染が出す明るい色が感じよい。そう思って鉄媒染をスルーばかりしていると、いい色を見逃すのかなぁ。

 巻末の染料としてみた植物図鑑がお役立ち。

関連書評
つくってあそぼう18〜草木染の絵本 やまざきかずき・へん
そだててあそぼう18〜アイの絵本 くさかべのぶゆき・へん

草木染めレッスン帖 (レディブティックシリーズno.4401)
草木染めレッスン帖 (レディブティックシリーズno.4401)
カテゴリ:ハウツー | 17:55 | comments(0) | trackbacks(0)

にんじん・ごぼう〜おいしく食べる知恵 おくむらあやお・中川学

 おもしろふしぎ日本の伝統食材4。萩原一・写真。

 名脇役の根菜ふたつ。ごぼうはにんじんほど頻繁には登場せずに、出てくれば印象的な存在だけれど、ここでは一つにまとめられている。きんぴらごぼうを代表に同じ料理になることも多い。

「日本人が好きな香り」ときっぱり説明されてしまうと、日本人の嗜好をそこまで一般化してしまっていいのか、不安になる。
 ネットでの議論になれると隙が気になってしまうけれど、時には言い切りも大事なんだろうな。

 にんじんには東洋系と西洋系のにんじんがあって、カロチンのオレンジ色をもっているのは西洋系のにんじんだけ。東洋系のにんじんはトマトと同じリコピンの赤をもっている。
 全体的に優れた東洋系にんじんが、栽培の問題で、金時にんじんしか実用栽培されていないのは勿体ない。でも、すでにいろいろ挑戦して現状なんだろうな。

 ごぼうでは非常に太らされた大浦ごぼうや堀川ごぼう、葉を食べる葉ごぼうなど、知らなかったごぼうが出てきて新鮮だった。
 その料理に至っては、知っているごぼうの料理のはずなのに完全に未知の領域と感じた。

おもしろふしぎ日本の伝統食材〈4〉にんじん・ごぼう―おいしく食べる知恵
おもしろふしぎ日本の伝統食材〈4〉にんじん・ごぼう―おいしく食べる知恵
カテゴリ:ハウツー | 12:37 | comments(0) | trackbacks(0)

ワンダーワールド10ヨーロッパの昔のこと

 ヨーロッパの歴史について古代から近代までのQ&Aがリアルなイラストで載っている。子供向けらしくルビが多いのはいいのだが、漢字がひらがなにされている部分も多くて、かえって読みにくかった。不自然になるレベルならルビにしてほしいなぁ。

 中世農民のみじめな生活がイラストつきで説得力たっぷりに語られていて幻想を抱きようがない。裕福な領主なら食事は豪華だったみたいだが、家具のクオリティはあまり高くない。
 暖炉が生まれるのが意外と遅くて、それまでは火鉢で凌いでいたことを知った。農家でも城でも換気の問題は意識しておいた方がよさそうだ。部屋中のものが煤けてしまい、眼病になることもあったらしい。

 こういう時代を乗り越えて現代があるのだから人類もしぶとい動物だ。動物として考えはじめたら農業をできているだけでも中世はマシである。

WONDER WORLD Questions&Answers 10巻 ヨーロッパの昔のこと (WONDER WORLD Questions&Answers)
カテゴリ:歴史 | 22:39 | comments(0) | trackbacks(0)

いか〜おいしく食べる知恵 おくむらあやお・中川学・萩原一

 おもしろふしぎ日本の伝統食材シリーズ9巻。
 日本が世界で一番水揚げし、世界で一番食べているイカを使った料理を紹介する。頭足類の構造は魚とは異なっており、捌き方にもいろいろとコツがあるのだった。
 甲がイカにはあって、タコにはないことから、タコの方が進化した頭足類だと言われているんだろうな。巻末解説で気づいた。烏賊と書いてイカなのは、中国の死んだフリをして烏を狩るからという珍説よりも、単純に墨を吐いて水をカラスのように黒くしてしまうからだったんじゃなイカと妄想した。

 料理では「いかのぽっぽ焼き」が美味しそうで美味しそうで、見ているだけでお腹が空いてきた。垂涎とはこのことだ。
 しょうゆとみその合わせ技で味付けされた香ばしいぽっぽ焼き……ああ、食べたい。

 締めの創作料理は「いかの和風トマトソース煮」というもので、栄養バランスも抜群の挑戦的な作品だった。トマトソース煮なのに麺がパスタではなく、そばとは……想像がつきそうで全体の組み合わせによって予想外の味がしそうな料理だ。

おもしろふしぎ日本の伝統食材〈9〉いか―おいしく食べる知恵
おもしろふしぎ日本の伝統食材〈9〉いか―おいしく食べる知恵
カテゴリ:ハウツー | 22:06 | comments(0) | trackbacks(0)

賢くはたらく超分子 有賀克彦 岩波科学ライブラリー103

 なんらかの緩やかな力の作用で結びつき、形態次第で不思議な現象をおこすこともできる超分子。
 その非常に奥の深い世界に招待してくれる一冊。

 LB法など超分子膜をつくる原理は非常に単純なところがおもしろい。実験化学の腕がふるえる分野のようだ。しかし、原理を説明をしようとすれば途端に難しくなっていきそうな分野でもある。
 発想通りにいかないことも多そうだし――でも、発想通りの機能をもった超分子を作れたときの喜びは絶大だろうなぁ。

 九州大学の研究室による成果が紹介されることが多くて、超分子研究を九州大学がリードしていることが想像できた。
 興味がある高校生が進路を決める参考になるといいな。

 各章の最後に出てきた超分子とその簡単な説明がまとめられていて復習できた。化学の知識がない一般人向けに書いたと説明されているけれど、知識がある学生の入門用にも良さそうだ。

賢くはたらく超分子―シャボン玉から未来のナノマシンまで ([新装版] 岩波科学ライブラリー (103))
賢くはたらく超分子―シャボン玉から未来のナノマシンまで ([新装版] 岩波科学ライブラリー (103))
自分が読んだのは新装版ではないが、旧版を勧めるのも変なので新装版にリンクしておく。
カテゴリ:科学全般 | 20:59 | comments(0) | trackbacks(0)

新版 再現!巨大隕石衝突〜6500万年前の謎を解く 松井孝典

 6500万年前に恐竜を絶滅させた(断定)巨大隕石について、20世紀からカリブ海での研究をおこなっていた著者たちによる地質調査と津波シミュレーションがまとめられている。
 1999年に出版された旧版に、最新の情報をまとめた6章をくわえた2009年の新版になる。2019年に第3版を出してくれることを期待したい。

 多くの研究チームがカリブ海に注目する中で、著者たちのチームが目を付けたのは、アメリカ人が調査しにくい社会主義国のキューバだった。歴史研究において日本人がイランで活躍している感じである。
 手探りのまま現地に飛び込んで、共同研究を結実させた行動力がすばらしい。さすがは若い頃にユーラシア大陸を自動車旅行して、行ったことのない国はあまりないと豪語する著者である。
 そんなアドバンテージも、革命聖地近くの調査では、キューバ人と同じスペイン語をつかうスペイン人に負けている。恐竜戦争ほどではないが、生き馬の目を抜く研究競争がここでも展開されている。

 著者は地質屋ではないのだけれど、それだけに地質屋の仕事を新鮮に感じて、「若者のフィールド調査離れ」に危機感を覚えている。地質図の整備などもまさに「基礎研究」の一種であって大事なものなのだけど、本書がそれが理解される一助になってくれれば嬉しい。

 あと、グラフが全て手書きで味があった。

新版 再現!巨大隕石衝突―6500万年前の謎を解く (岩波科学ライブラリー)
新版 再現!巨大隕石衝突―6500万年前の謎を解く (岩波科学ライブラリー)
カテゴリ:地学 | 21:47 | comments(0) | trackbacks(0)
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