レッド・アトラス〜恐るべきソ連の世界地図

 ジョン・デイビス/アレクサンダー・J・ケント著 藤井留美 訳

 ソ連が密かに整備していた世界中の地図。その詳細について実際にソ連の地図をカラーで例示しながら語る。
 共産主義の恐ろしさというか、巨大な官僚組織によって手段が目的化した結果が、この膨大な地図なのではないか。著者は西側陣営との戦争に備えて、あるいは統治に備えてのものかもしれないと推測しているが、最初の動機がそれらであっても、ある時期を通過したら肥大化しすぎた官僚組織によって事業が自己目的化したんだと思う。
 日本人としては、そんな想像を巡らせた。

 建物の配置まで書き込まれ、橋の荷重や川の水深・流速にも詳しいソ連の地図は魅力的だった。アメリカの同じ場所の地図と見比べてもソ連の方が好みだ。字は読めないが……。
 もちろん仮想敵国の地図に間違いがまったくないわけではなく、通りの名前など細かいミスが本書で紹介されている。とくに高速道路の接続は偵察衛星でも分かりにくい鬼門なのかもしれない。
 実際戦争で利用されることになっていたら、この間違いで混乱が起きたのではないかと、なぜかソ連軍将校視点になって戦慄してしまった。
 さすがに日本語版巻末付録の東京の地図についてはソ連側の視点ではみれない。ちょっと田舎っぽく感じるのは地図表現よりも制作された年代の関係かなぁ。

レッド・アトラス 恐るべきソ連の世界地図
レッド・アトラス 恐るべきソ連の世界地図
カテゴリ:雑学 | 20:56 | comments(0) | -

暗闇に息づく神秘を訪ねて−−ニッポンの洞窟

 穴があったら入りたい。
 日本各地の洞窟を案内するムック。東京都や大阪府にも紹介される洞窟があって、全体では平地じゃないことが分かる。
 溶岩洞窟の説明について、ガスが抜けたあとだと間違った説明を繰り返していて困ったものだ。記事によっては、表面が固まった後も中の溶岩が溶けたままで流れ出したあとだと、ちゃんと解説しているものもあった。
 筆者による違いかな?

 けっこう観光のために整備された洞窟が多くあって、各地の必死な思いを感じてしまった。
 信仰が絡んでいる洞窟では、非常に高い確率で弘法大師ゆかりと名前があがっていて、弘法大師が歩けば洞窟に当たる状態……!

 地学的に話題の多い玄武洞には一度いってみたいなぁ。

ニッポンの洞窟 (イカロス・ムック)
ニッポンの洞窟 (イカロス・ムック)
カテゴリ:雑学 | 23:12 | comments(0) | -

言論・出版の自由(アレオパジティカ)他一篇 ミルトン・原田純

言論・出版の自由
 考えてみれば当たり前だが、この問題の前線が宗教にあったことを理解した。イスラム圏やアメリカでは今でも宗教にあるのだろう。ゆえにミルトンは聖書の内容を逆手にとって言論・出版の自由を訴えることができた。
 人間の可能性を信じることが根っこにあることも見えた。
 古代ギリシア・ローマのキリスト以前の例もたくさん出してくるところはルネサンス以後の時代らしい。

自由共和国建設論
 解説を読んで長老派の動きに引いてしまった。確実に歴史に悪名を残す動きをしている。
 緊急事態の必死な主張であったようで、その背景を踏まえて読まなければいけない内容らしい。王の悪行が過去のものとは思えないというか、いちおう民主主義の現代でも似たようなことがなされている……。
 それでも終身制議員の発想は気軽には受け取れないが、当時の平均寿命なども判断に関係しているのだろうか。

言論・出版の自由―アレオパジティカ 他一篇 (岩波文庫)
言論・出版の自由―アレオパジティカ 他一篇 (岩波文庫)
カテゴリ:雑学 | 19:27 | comments(0) | -

みんなが知りたい!ものの一生がわかる本

 あまり脈絡がなく、いろいろなものの一生が解説されている本。子供の好奇心を伸ばす効果はありそうだ。個人的には毛の一生を読みながら、はたらく細胞のことを連想していた。

 しかし、彗星は惑星ではない。なんでそんな間違いをしてしまったのか、わからないが、目立つ部分に書かれているだけにチェック不足に感じた。

 イセエビが育つために必要な時間を知ってしまうと、乱獲で絶滅しないか余計に心配になるのだった。サンゴも心配だな……。

カテゴリ:雑学 | 22:34 | comments(0) | trackbacks(0)

聖書人物おもしろ図鑑 旧約編 大島力

 旧約聖書に出てくるたくさんの登場人物を、金斗鉉氏のイラストでわかりやすく表現した人物図鑑。
 装備品の項目がRPGのようで子供にも親しみがもてそうだ。

 神や預言者が起こしたことを「事実」として扱っている点は歴史関係の本を読むつもりでいると違和感が強い。あくまでも聖書の派生本である。
 しかし、預言者と偽預言者の関係は、たまたま事実を言い当てた人間が預言者になれただけなのではないか?民衆のニーズ(願望)をつかむことも大事なようだが。
 ついつい、そんな気がしてしまう。さすがに大物預言者は信念や先見性でも優れた素質をもっていたと思われるが。

 ユダヤ人の王国に輿入れしてきた異国の王女が、宗教まで持ち込んだことで悪役になってしまうのも、気の毒に思った。宗教も外交手段であったとすれば、本人の嗜好だけの問題でもあるまい。だから余計に反発されるのも分かる。
 あと、女性の活躍が多く、ちゃんと評価されている点は聖書の長所だと感じた。

聖書人物おもしろ図鑑 旧約編
聖書人物おもしろ図鑑 旧約編
カテゴリ:雑学 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0)

幻島図鑑 清水浩史

 アトランティスみたいな寓話や地図上の幻の島をあつかった本ではない。大半は実在するか、実在したとされる日本の島をあつかった本だった。

 エサンベ鼻北小島の「消滅」はネットのニュースでみた覚えがあったのだが、まさか著者が発見して新聞記者に連絡したとは驚いた。
 名前をつける際に海岸からの調査もしていないとは、おそまつなお役所仕事をみせられた。

 有人島が過疎化して無人島になっていく流れは、どこの島でも似通っている。教育と医療――もっと昔の事例にさかのぼれば電気――の格差が与える影響は計り知れない。陸続きの場所であったとしても、学ぶべき問題が含まれていると思った。

 それぞれの島の趣深い写真や地図が前半についていて、そこだけでも十分に楽しめるし、強い興味を感じたら後半の紀行文もあわせて読めば幻島の魅力がさらに伝わってくる。
 編集者もやっている著者がつくっただけに、構成にも工夫の感じられる一冊だ。

幻島図鑑: 不思議な島の物語
幻島図鑑: 不思議な島の物語
カテゴリ:雑学 | 22:54 | comments(0) | trackbacks(0)

懐かしの北恵那鉄道 吉村毅 岐阜新聞社

 中津川市を走っていたローカル鉄道、北恵那鉄道の写真集。ずいぶん昔に廃線になってしまった鉄道だけれど、会社はバス会社として現在まで存続している模様。
 電車や駅舎は2002年に最後のものが解体されてしまったようだ。もったいない。

 基礎部分の説明文や路線図がないのでわかりにくかったが、元々は木材を運ぶために造られた鉄道らしい。中津川市のあたりは花崗岩に恵まれていて、それを運んでいると説明のある写真もあったので、石材輸送を重視しているものと勘違いした。
 そういえば木材の名産地である木曽も近い。

 著者が語る北恵那鉄道のエピソードで、ある運転手だけが踏切が廃止になった後も、同じ場所で警笛を鳴らし続けており、著者にはそれが分かった話がローカル鉄道らしく、濃厚な人間関係を感じさせた。
 現在だと後から引っ越してきた人から騒音だって苦情が入りそう……。

懐かしの北恵那鉄道
懐かしの北恵那鉄道
カテゴリ:雑学 | 21:41 | comments(0) | trackbacks(0)

AI(人工知能) 城塚音也 日経文庫ビジュアル

 AIについて、とてもわかりやすく説明した文庫。
 左ページ説明、右ページイラストで、読みやすい。「ディープラーニングでなければAIではない」わけではないことを早めに説明していて笑った。
 「旧世代」のAIであっても、目的によってはディープラーニングしたAIよりも向いている場合があり、さらには複数の手法を組み合わせることが行われていることも知った。

 シミュレーションを教材にすることがあるのは別の本ですでに知っていたが。

 AIプログラマが非常に不足しているため、AIコンサルタントを活用するべしと書いてあったけれど、この状況ではAIコンサルタントも不足していそうだと思ってしまった。
 それでも、綺麗な流れを作れるならば効率がアップして、人材不足への対策にはなるのかな。導入の失敗パターンも紹介されていて、猫も杓子もAI導入と考えていそうな経営者への警鐘をならしている。

ビジュアル AI(人工知能)
ビジュアル AI(人工知能)
カテゴリ:雑学 | 21:04 | comments(0) | trackbacks(0)

やっぱりいらない東京オリンピック 小笠原博毅・山本敦久

 ひさしぶりに岩波ブックレットを読んだ。No.993である。
 東京オリンピック――ひいては現代のオリンピックがもつ問題について、鋭く切り込む一冊。復興オリンピックの欺瞞については、特に繰り返し批判を続けていかねばなるまい。
 そうしなければオリンピックの熱狂に温度差を感じた被災者の人々に疎外感を与えてしまう。オリンピックに熱狂している人にとっては「水を差すな」と言いたいことなのかもしれないが、復興に水を差したのはオリンピックの方なのである。
 こうして社会の分断が進んでいく?

 オリンピックが大量の浪費をともなっている現状については、かつての植民地が国家の金を一部の利権者のふところに入れるための迂回路だったことを連想させた。
 国威発揚だのその時代の美辞麗句を使って反論を封じながら、やっていることの醜さは変わっていない。早急に引導を渡さなければ、社会の方が滅びてしまいかねない。

やっぱりいらない東京オリンピック (岩波ブックレット)
やっぱりいらない東京オリンピック (岩波ブックレット)
カテゴリ:雑学 | 19:21 | comments(0) | trackbacks(0)

読みたくなる「地図」国土編 平岡昭利・編

・日本の国土はどう変わったか

 ということで、いつか見た本に近い内容。それもそのはず縮尺を大きくした続編版であることが最初に説明されていた。
 やはり干拓と塩田は大人気だ。海岸線の形は山の稜線よりも遙かに変化させられやすい。東京・大阪から過去にタイムスリップしたら海にボチャンが普通かもしれない。
 名古屋は三大河川が西側を割と埋め立て続けているのか?二大都市ほどは埋め立てを取り上げられないイメージがある。

 また、島の変化はわかりやすく面白い。
 半島になった桜島、建物の分布が変化している南大東島など、全体が見て取れるだけに、そこを知った気持ちになれる。本当はやはり現地に行ってみないと分からないのだろうけど、一方的に親しみが湧くのであった。

読みたくなる「地図」 国土編 ― 日本の国土は どう変わったか
読みたくなる「地図」 国土編 ― 日本の国土は どう変わったか
カテゴリ:雑学 | 20:21 | comments(0) | trackbacks(0)
<< | 2/20PAGES | >>